Management
Theory Atlas
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FIELD / STRATEGY

経営戦略

研究分野「経営戦略」(Strategy)に分類される項目です(理論 42・概念 1・論文 1・研究法 9)。ひとつの理論が複数の分野に属することがあります。

理論・視点 42

エージェンシー理論Agency Theory仕事を任せる人(プリンシパル)と任される人(エージェント)の利害は一致するとは限らず、情報も偏っている。その結果生じるズレとコストを、監視や報酬の設計で抑えようとする理論。アテンション・ベースト・ビューAttention-Based View of the Firm企業が何をするかは、意思決定者がどの問題と解決策に注意を向けるかで決まる。その注意の向け先は、会議・報告・審査といった具体的な場と、ゲームのルール、プレイヤー、構造上のポジション、資源という組織の仕組みによって配分される、という視点。Ocasio (1997) が提唱した。企業の行動理論Behavioral Theory of the Firm企業を、利益を最大化する一枚岩の主体としてではなく、限られた合理性しか持たない人々が、目標に照らした満足化、身近な探索、決まったルールによって意思決定する連合体として描く理論である。Cyert & March (1963) が示し、Gavetti et al. (2012) がその前提とその後の展開を整理している。コンティンジェンシー理論(条件適合理論)Contingency Theory「どんな場合にも最善の組織」は存在しない。環境や技術などの条件に組織の形が合っているとき、成果が高まる、とする理論。コア・コンピタンスCore Competence企業の競争力の根っこは、個々の製品や事業ではなく、複数の事業にまたがって生かせる技術やスキルの束にある。企業はそれを軸に事業を組み立てるべきだ、とする理論。意図的戦略と創発的戦略Deliberate and Emergent Strategy実際に実現する戦略は、事前に計画された意図的戦略だけでなく、日々の行動の積み重ねから結果として形づくられる創発的戦略が混ざり合ったものだ、という視点。破壊的イノベーションDisruptive Innovation優良な大企業は、主要顧客の声に応えて製品を改良し続けるからこそ、最初は性能が劣り安価な新技術を軽視し、やがてその技術を持つ新興企業に市場を奪われる、とする理論。ダイナミック・ケイパビリティDynamic Capabilities環境が速く変わる中で競争優位を保つには、今ある資源を持つだけでは足りない。社内外の資源を組み合わせ直し、作り変える能力が重要だ、とする理論。折衷パラダイム(OLIパラダイム)Eclectic Paradigm (OLI Framework)企業が海外直接投資によって国外で生産を行うかどうか、どこで、どの形で行うかは、企業が持つ所有の優位(O)、国の立地の優位(L)、取引を市場に任せず社内で行う内部化の優位(I)の組み合わせで決まる、とする理論。企業家的機会Entrepreneurial Opportunity企業家精神の研究を、新しい財やサービスを生み出す機会が、誰によって、どのように発見・評価・活用され、どのような結果をもたらすのかを調べる分野として定義し直した枠組み。コミットメントのエスカレーションEscalation of Commitment自分で選んだ行動方針が悪い結果を生んでいるとき、人はその選択を正当化しようとして、かえってその方針にさらに資源を投じてしまう、とする理論。進化経済学(組織ルーティン)Evolutionary Theory of the Firm (Routines)企業は最適化の計算ではなく、過去に用いてきた「ルーティン」に従って行動するとみなし、その行動の連続性と市場での選択から、競争、技術変化、経済成長を動的な過程として説明しようとする理論である。Nelson & Winter (2002) が、1982年の著書以来の展開を整理している。探索と活用(知の探索・知の深化)Exploration and Exploitation組織の学習には、新しい可能性を試す「探索」と、既にあるものを磨く「活用」がある。活用は確実で早く成果が出るため優先されやすいが、探索を怠ると長期的な適応力を失う、とする枠組み。ファイブ・フォースFive Forces業界の収益性は、既存企業どうしの競争、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力という五つの力で決まる。企業はこれらの力が弱い位置を選ぶべきだ、とする枠組み。基本戦略とバリューチェーンGeneric Strategies and the Value Chain競争優位は、コストを他社より低くするか、他社と違う価値を提供するかのどちらかから生まれる。その源泉は、企業が行う一連の活動(バリューチェーン)の中にある、とする枠組み。ヒューリスティクスとバイアスHeuristics and Biases人は不確実なもとで確率や数値を判断するとき、少数の簡便な判断の方法(ヒューリスティクス)に頼る。それはふだん役に立つが、ときに系統的で予測可能な誤り(バイアス)を生む、という視点。高業績作業システムHigh-Performance Work Systems採用・選抜、訓練、成果に連動した報酬、従業員の参加といった人事施策を組み合わせて用いると、従業員の能力と意欲が高まり、離職の低下や生産性・財務業績の向上につながるとする視点。人的資本理論Human Capital Theory教育、職業訓練、健康などへの支出を、人に体化された資源を増やして将来の所得を高める「投資」としてとらえ、個人や企業がどれだけ投資するかを費用と収益の比較で説明する理論。知識ベース理論Knowledge-Based View of the Firm企業にとって最も重要な資源は知識である。企業は、個人がばらばらに持つ専門知識を統合し、製品やサービスに変えるための仕組みだ、とする視点。外国企業の不利益(外国性の負債)Liability of Foreignness外国企業は、現地企業なら負わずにすむ追加の費用を負うため競争上不利になりやすいとする概念である。Zaheer (1995) は、組織の能力が強みの源泉となる業界では、本国に経験のない現地企業のやり方をまねるより、本国から持ち込んだやり方を守るほうが、この不利を乗り越えるのに役立つ可能性を示した。市場志向Market Orientation「顧客を大切にする」というマーケティングの考え方を、組織の具体的な活動として捉え直し、市場の情報を集め、部門間で共有し、それに組織全体で対応する度合いとして捉えるべきだ、とする理論。オープン・イノベーションOpen Innovation企業は研究開発を自社内だけで完結させるのではなく、外部の知識を取り込み、自社で使わない技術を外部に出すことで、より多くの価値を生み出せる、という視点。両利きの経営(組織の両利き)Organizational Ambidexterity既存事業を磨く力と、新しい事業を切り開く力を、一つの組織の中で同時に持つこと。そのために、異なる文化を持つ部門を分けつつ、トップが統合する、といった仕組みが必要だとする理論。組織アイデンティティOrganizational Identity「私たちは組織として何者か」という問いへの答えとして、組織を他の組織から区別する中心的で持続的な特徴を捉える概念。その特徴が本当に「持続的」なのか、それとも外部のイメージとの相互作用で変わっていくのかをめぐって議論がある。組織の正統性Organizational Legitimacy組織の存在や行動が、社会の規範や価値観に照らして「適切だ」と受け入れられている状態。正統性があると資源や支持を得やすく、組織は正統性を獲得・維持・回復しようとする。パラドックス理論Paradox Theory組織には、短期と長期、効率と創造、統制と自由のように、矛盾しながらも両方必要な要素がつきまとう。どちらかを選ぶのではなく、両方を抱え続けることが長期的な成果につながる、とする理論。業績フィードバック理論Performance Feedback Theory企業は業績を、自社の過去の業績や同業他社の業績から作る希求水準と比べて成功か失敗かを判断し、下回ると探索や変化に向かう、という考え方。ただし業績不振は硬直や生存への注意の移行も生むため、どんな条件で変化が起きるのかが中心的な論点になっている。イノベーションからの利益獲得Profiting from Innovation新しい技術を最初に生み出した企業が、必ずしもその利益を得られるとは限らない。誰が利益を手にするかは、模倣のしやすさ、支配的な設計が定まっているか、製造や販売などの補完的資産を誰が持つかで決まる、とする理論。プロスペクト理論Prospect Theory人はリスクのある選択をするとき、最終的な財産の大きさではなく、基準点からの利得と損失で結果を評価し、確率もそのままではなく歪めて重みづけする、とする理論。断続均衡モデルPunctuated Equilibrium組織は、基本的な活動パターンが安定した長い期間(均衡期)と、それを根本から崩す短い変化の期間(革命期)を交互に経験する、とするモデル。Romanelli & Tushman (1994) は米国のミニコンピュータ企業25社の歴史を調べ、根本的な変革の大半が短期間に戦略・構造・権力配分でまとめて起こっていたことを示した。リレーショナル・ビューRelational View競争優位の源泉は、企業の内部だけでなく、企業と企業の関係の中にもある。関係に特化した投資や知識の共有によって、単独では得られない利益(関係レント)が生まれる、という視点。資源依存理論Resource Dependence Theory組織は必要な資源を外部に頼っており、その資源を握る相手にパワーを持たれ、行動を制約される。そのため組織は、合併、提携、取締役の選任、政治活動、経営者の交代などを通じて依存を管理しようとする、とする理論。資源オーケストレーションResource Orchestration資源を持つだけでは競争優位は生まれず、経営者が資源ポートフォリオを構造化し、資源を束ねてケイパビリティを築き、それを市場で活用し、しかもそれらを同期させて初めて価値が生まれる、という枠組み。Sirmon, Hitt & Ireland (2007) の資源マネジメントと、ダイナミック・ケイパビリティ研究の資産オーケストレーションを、Sirmon et al. (2011) が統合し、企業の範囲、成熟段階、管理階層による違いへ広げた。資源ベース理論Resource-Based View企業ごとの業績の差は、その企業が持つ資源の違いから生まれる。価値があり、希少で、真似しにくく、代わりがきかない資源が、持続的な競争優位の源泉になりうるとする理論。サービス・ドミナント・ロジックService-Dominant Logic経済的な交換の根本にあるのはモノではなく、知識やスキルを相手のために用いる「サービス」であり、モノはサービスを届けるための手段にすぎない、という視点。ソーシャル・キャピタルSocial Capital人や集団がもつ関係のネットワークと、そこから得られる資源を「ソーシャル・キャピタル」ととらえ、それが知識の結合と交換を促し、新しい知識を生み出すことで組織の優位につながるとする理論。ステークホルダー理論Stakeholder Theory企業は株主だけのものではない。従業員、顧客、取引先、地域社会など、企業に影響を与え、影響を受けるすべての人々(ステークホルダー)の利害を考えて経営すべきだ、とする理論。構造的空隙Structural Holes互いにつながっていない集団の間の隙間(構造的空隙)をまたぐ位置にいる人は、多様な情報にいち早く触れ、それを集団の間で翻訳できるため、成果や良いアイデアにつながる優位を得るという理論。Burt が1992年の著書で体系化した。技術的不連続とドミナント・デザインTechnological Discontinuities and Dominant Design技術は、飛躍的な変化(技術的不連続)が起きて複数の設計が競い合う混乱期を経て、一つの標準的な設計(ドミナント・デザイン)に落ち着き、その後は小さな改良が続く、という周期で進むとする理論。取引費用理論Transaction Cost Economics取引には、計画を立て、状況の変化に合わせて調整し、約束どおりに実行されるかを見届けるためのコストがかかる。取引の性質に合わせて、このコストを節約できる統治の仕組み(市場か組織の内部か)を選ぶことで効率が実現する、とする理論。二面市場・プラットフォームTwo-Sided Markets and Platforms異なる二つの利用者グループを仲介するプラットフォームでは、一方の参加者が増えるほど他方にとっての価値が高まる。そのため価格や戦略は、両側のバランスを見て決めなければならない、とする理論。アッパーエシュロン理論(経営上層部理論)Upper Echelons Theory組織の戦略や業績は、そのトップ経営者たちの価値観と認知の基盤を映し出している、とする理論である。Hambrick & Mason (1984) は、年齢や職歴、学歴といった観察できる経歴から、組織の成果を部分的に予測できると提案した。

概念・現象 1

組織学習Organizational Learning組織が経験から推論を引き出し、それをルーティンや知識として蓄え、将来の行動を変えていく現象。個人の学習の総和ではなく、組織としての記憶や手順に残る点が特徴である。

論文・書籍 1

Exploration and Exploitation in Organizational Learning組織学習における探索と活用新しい可能性の探索と、既存の確実性の活用の関係を組織学習の文脈で論じ、両者の間で資源を配分することの難しさを分析した論文。二つのシミュレーション・モデルで、活用に偏る学習が長期的には組織を弱めうることを示した。

研究法 9

質的研究のアプローチ(流派)Approaches to Qualitative Research経営学の質的研究には、Eisenhardt 法、Gioia 法、グラウンデッド・セオリー、エスノグラフィー、プロセス研究などの流派がある。めざす理論、現実と知識の前提、データと分析の仕方で見分けられるが、境界は論者によって違う。事例研究からの理論構築(Eisenhardt 法)Building Theories from Case Study Research (Eisenhardt Method)いくつかの事例を理論上の理由で選び、一つずつ分析したうえで事例どうしを比べ、再現された関係から検証できる命題や理論を作る方法。Eisenhardt (1989) が8段階の手順として示し、2021年に本人がその核心を説明し直した。相関と因果(内生性)Correlation, Causation, and Endogeneity二つのことが一緒に起きていても、一方が他方の原因だとは限らない。共通の原因、逆向きの影響、自分で選んだことによる偏りがあると、関連の大きさだけでなく向きまで誤ることがある。「関連している」と書くだけでは足りず、因果と言うには何が足りないのかを示す必要がある。推論の型(演繹・帰納・アブダクション)Deduction, Induction, and Abduction研究で使う推論には、一般から個別を導く演繹、個別から一般を推す帰納、驚くべき観察からそれを説明する仮説を推すアブダクションがある。どれも確かさを保証せず、どの研究の型も三つを組み合わせて使う。論文は考えた順ではなく、再構成された順で書かれている。Gioia 法Gioia Methodology質的データから帰納的に新しい概念を見つけるための方法論。インフォーマントの言葉による1次の分析と研究者の理論の言葉による2次の分析を並べてデータ構造の図にまとめ、そこからデータに根ざしたモデルを組み立てる。科学哲学の立場Philosophical Positions in Management Research研究の手前には、対象は研究者と独立に存在するか、それをどう知りうるかという前提がある。実証主義、解釈的アプローチ、批判的実在論、構成主義の考え方を、それぞれを論じた論文にもとづいて紹介し、構成主義と批判的実在論のあいだの論争と、二つのアプローチを統合する試みを示す。プロセス研究Process Research物事がどのように、なぜ、時間とともに生まれ、発展し、終わるのかを問う研究である。変数の関係を問う分散研究と対になり、質的にも量的にも行われるが、時間を追う縦断的なデータが共通の条件になる。理論化と問いの立て方Theorizing and Research Questions理論はどう生まれるのか。科学哲学は長く、理論を考え出す「発見の文脈」より、理論を検証する「正当化の文脈」を重視してきた。理論化の手順、先行研究の隙間を埋める問いと前提を疑う問いの違い、文献そのものから理論をつくる方法を紹介し、理論化を重んじすぎることへの指摘も併せて示す。理論とは何かWhat Is Theory?「理論」という言葉は、変数の関係の命題、現象の説明、解釈、ものの見方など、いくつもの意味で使われている。何が理論でないかについては比較的合意があるが、理論化には説明・解釈・批判など複数の形がある。経営学は理論を求めすぎているという批判と、理論の価値を擁護する議論もある。
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