理論・視点

ファイブ・フォースFive Forces

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

業界の収益性は、既存企業どうしの競争、新規参入の脅威、代替品の脅威、買い手の交渉力、売り手の交渉力という五つの力で決まる。企業はこれらの力が弱い位置を選ぶべきだ、とする枠組み。

目次
説明したい問いなぜ業界によって、儲かりやすさがこれほど違うのか。
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中核的な問い

タイヤや鉄鋼のように、どの企業も目立った利益を上げられない業界もあれば、清涼飲料やトイレタリーのように、かなり高い利益を上げる余地のある業界もある。この違いは、個々の企業の努力だけでは説明しにくい。業界そのもののどんな特徴が、収益性を左右しているのか。

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主張とメカニズム

Hawawini et al. (2003) の整理によれば、Porter (1980) は、経済学の産業組織論をもとに、業界の構造的な特徴が業績を主に決めるという立場から、業界の構造を分析する枠組みを示した。同じ著者の論文 Porter (1979) によれば、業界の利益は、五つの競争の力によって削られる。既存企業どうしの競争、新しく参入してくる企業の脅威、代わりになる製品やサービスの脅威、買い手(顧客)の交渉力、売り手(供給業者)の交渉力である。

これらの力が強いほど、業界の利益は小さくなる。例えば、新規参入の脅威の大きさは、参入障壁(新規参入を難しくする要因)の高さと、既存企業からどんな反撃が予想されるかで決まる。そのため Porter (1979) は、それぞれの力の源泉を分析し、その力から身を守れる位置、あるいは力を自社に有利に動かせる位置を、業界の中に見つけることが戦略の目標だとした。

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身近な例

ある地域にコンビニが一つしかなければ、価格を多少高めにしても客は来る。しかし周りに次々と新しい店ができ、ネット通販という代わりの手段も広がると、値下げや品揃え競争を強いられる。同じ商売でも、周囲の力の強さで利益は大きく変わる。

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主要概念

参入障壁(barriers to entry)
規模の経済や必要な投資額など、新しい企業の参入を難しくする要因。
代替品(substitutes)
業界の製品の代わりになる製品やサービス。業界が付けられる価格に上限を設け、業界の利益の可能性を抑える。
交渉力(bargaining power)
取引相手に対して、価格や条件を自分に有利に決められる力。
業界構造(industry structure)
業界の競争の力を生み出す、業界の基本的な経済的・技術的な特徴。
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代表的な展開研究

  • Rumelt, R. P. (1991). How much does industry matter?. Strategic Management Journal. DOI ↗企業の業績のばらつきを分解し、業界よりも個々の事業単位による差の方が大きいと論じた。
  • McGahan, A. M., & Porter, M. E. (1997). How much does industry matter, really?. Strategic Management Journal. DOI ↗Compustat のデータで14年分を分析した。Hawawini et al. (2003) の整理によれば、サービス業も含めて業界と企業の効果を測った研究の一つで、Rumelt (1991) と同じく企業に固有の効果の方が大きいことを確かめている。
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批判と境界条件

Hawawini, Subramanian & Verdin (2003, p. 2) の整理によれば、1970年代末から、戦略研究が業績の決まり方を考える主な理論的基礎は産業組織論であり、業界の構造的な特徴が業績を主に決めると考えられてきた (Porter, 1980)。しかし1980年代には、分析の単位が業界から企業そのものへと移った。主な理由は、産業組織論の伝統が、同じ業界の中での業績の違いをきちんと説明できなかったことにある (p. 2)。それを説明しようとした重要な試みの一つが、企業に固有の資源に注目する資源ベース理論である (p. 3)。

では、業界と企業のどちらが業績の違いをよく説明するのか。Hawawini et al. (2003, p. 3) の整理によれば、Rumelt (1991) は、事業単位の利益率のばらつきのうち業界が説明するのは約9%で、事業単位の効果は44%を超えると報告した。McGahan & Porter (1997) などその後の研究も、企業に固有の効果の方が大きいことを確かめている (p. 4)。Hawawini et al. (2003, p. 14) 自身も、平均すると業界の要因は業績にあまり影響しないという結果を確かめた。しかし、各業界の上位2社と下位2社を除いて分析し直すと、業界の効果が企業の効果を上回った (pp. 12–13)。企業の要因が業界の要因より重要なのはごく少数の突出した企業だけで、大多数の企業には業界の効果の方が重要だという (pp. 13–14)。ただし、業界の区分に使った SIC 分類は戦略的に意味のある業界をうまく捉えないことがあり、結論は慎重に解釈すべきだとも述べている (pp. 14–15)。

Brandenburger & Stuart (1996, p. 5) は、Porter (1980) にならって、供給業者から企業、買い手へと続く縦の連鎖を考えた。そのうえで、価値は連鎖の参加者全体で生み出されると定義し、その価値の分け方は参加者どうしの交渉で決まるとした (pp. 5, 10)。この見方では、自社と取引する供給業者のコストを下げるなどして、供給業者の機会費用を下げることも、企業が価値を得る道の一つになる (p. 17)。これは、供給業者との関係を重視する議論や、供給業者と「価値管理型のパートナーシップ」を結ぶべきだという処方と深く結びつくという (p. 17)。

Teece (2006, p. 1144) は、イノベーションの観点からこの枠組みの限界を論じている。ファイブ・フォースでは、持続的な利益は参入障壁の陰に隠れることから生まれ、市場構造が重要な要因になる。これに対し、イノベーションから利益を得るうえで重要な、補完的資産の所有、専有可能性、ビジネスモデル、ドミナント・デザインや業界標準に対する投資のタイミングといった論点の多くは、この枠組みにうまく収まらない。また、補完的資産を持つ企業や規制当局などのエコシステムの要素も、ファイブ・フォースには含まれていないとした。

研究上の位置づけ

原典Porter, M. E. (1980)
Competitive strategy: Techniques for analyzing industries and competitors
分類モデル・枠組み
研究分野経営戦略
地図の区画戦略
分析単位組織 · コミュニティ
理論系譜経済学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。