理論・視点

二面市場・プラットフォームTwo-Sided Markets and Platforms

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

異なる二つの利用者グループを仲介するプラットフォームでは、一方の参加者が増えるほど他方にとっての価値が高まる。そのため価格や戦略は、両側のバランスを見て決めなければならない、とする理論。

目次
説明したい問いプラットフォーム企業は、なぜ一方の利用者を無料にしたり、補助したりするのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

クレジットカード、ゲーム機、検索エンジン、フリマアプリなどは、二つの異なる利用者を結びつけて利益を得ている。こうした事業では、ふつうの市場の価格の考え方を、そのままでは当てはめられない。どちらの側に、いくら負担させるべきか。

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主張とメカニズム

McIntyre & Srinivasan (2017) の整理によれば、Rochet & Tirole (2003) をはじめとする経済学の研究は、二つの利用者グループがプラットフォームを介して取引し、一方の参加が他方の価値を高める市場を分析した。この効果を間接ネットワーク効果という。Gawer (2014) が引く Hagiu & Wright (2011) の定義では、一方の側の便益が他方の側の参加者の数に左右される効果を交差ネットワーク効果と呼び、それが両方向に働くときを間接ネットワーク効果と呼んで区別している。

Rochet & Tirole (2006) は、プラットフォームが両側に課す価格の総額(価格水準)だけでなく、その両側への配分(価格構造)によって取引量が変わる市場を、二面市場と定義した。そのため、相手側に大きな便益をもたらす側や、価格に敏感な側を無料や安い価格にし、他方から収益を得ることが合理的になりうる(Rochet & Tirole, 2006)。これは、片側だけを見れば原価割れの価格でも、プラットフォーム全体としては理にかなう、ということである。また、両側がそろわないと価値が生まれないため、立ち上げ期に「鶏と卵」の問題が生じる。Gawer (2014) の整理によれば、Parker & Van Alstyne (2005) や Rochet & Tirole (2003, 2006) など、この分野の多くの研究は、一方の側を補助して他方を呼び込む価格設定が、この調整の問題を解くとした。

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身近な例

ゲーム機のメーカーは、本体を利益の出にくい価格で売り、ソフト会社からのライセンス料で稼ぐことがある。本体の利用者が増えるほどソフト会社が集まり、ソフトが増えるほど本体が売れるからである。検索エンジンが利用者には無料で、広告主から収益を得るのも同じ構造である。

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主要概念

二面市場(two-sided market)
プラットフォームが二つの異なる利用者グループを仲介し、両者の参加が互いの価値に影響する市場。
間接ネットワーク効果(indirect network effect)
二つの側の利用者が、互いに相手側の参加者の多さから便益を得る効果。相手側の参加者の数に便益が左右される効果が一方向にでも働けば交差ネットワーク効果と呼び、両方向に働くものだけを間接ネットワーク効果と呼んで区別することがある。
価格構造(price structure)
プラットフォームが両側の利用者に課す価格の配分の仕方。
鶏と卵問題(chicken-and-egg problem)
両側がそろわないと価値が生まれないため、どちらも先に参加しにくいという立ち上げ期の問題。
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代表的な展開研究

  • Parker, G. G., & Van Alstyne, M. W. (2005). Two-sided network effects: A theory of information product design. Management Science. DOI ↗一方の市場で無料の製品を提供し、他方の市場で利益を得る戦略が合理的になる条件を示した。McIntyre & Srinivasan (2017) は、この研究を引いて、1990年代の RealNetworks が利用者に再生ソフトを無料で配り、コンテンツ提供者にはサーバー用ソフトを有料で売った例を挙げている。
  • Armstrong, M. (2006). Competition in two-sided markets. RAND Journal of Economics. DOI ↗利用者が一つのプラットフォームだけを使うか、複数を併用するかによって、競争と価格がどう変わるかを分析した。Rochet & Tirole (2006) は、プラットフォーム間の競争と併用(マルチホーミング)が需要の弾力性に与える影響について、詳しくはこの研究を参照するよう挙げている。
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批判と境界条件

McIntyre & Srinivasan (2017, p. 148) の整理によれば、経済学(産業組織論)のプラットフォーム研究には、いくつかのあいまいさが残っている。第一に、正のフィードバックや勝者総取りになりやすさを、産業ごとに外から与えられた一定の条件とみなし、企業がネットワーク効果を戦略的に操作する試みを軽く扱ってきた。第二に、ネットワーク効果をあるかないかの二択で扱い、利用者の総数のような粗い指標に頼ってきた。第三に、補完製品の提供者との関係を「ブラックボックス」として扱い、補完製品の数だけに注目してきた。そのため、企業がプラットフォームをどう設計すれば成功するかについては、限られた示唆しか与えない(p. 148)。

Gawer (2014, p. 1241) も、二面市場の経済モデルは強い暗黙の仮定に立っていると指摘する。多くのモデルはプラットフォームを外から与えられた固定したものとみなすため、プラットフォームがなぜ、どう進化するかを説明しない。また、補完製品の開発者を、供給者やイノベーターとしてではなく、単なる消費者として扱う。その結果、プラットフォーム所有者と補完製品の開発者との競争や、プラットフォームの設計が開発者のイノベーションの意欲に与える影響は扱われない(p. 1241)。Gawer は、プラットフォームを進化する組織(メタ組織)ととらえ直し、二面市場の見方を、参加者の関係が純粋に取引的で、価格が主な調整の手段となる特殊なケースと位置づけた(p. 1245)。この見方では、補完製品の提供者を束ねるエコシステムの統治が重要になる(p. 1245)。ただし Gawer 自身、この枠組みは理論構築の試みであり、今後の体系的な実証による検証が必要だと認めている(pp. 1247–1248)。

McIntyre & Srinivasan (2017, p. 144) の整理によれば、勝者総取りは一部のプラットフォーム市場で起こりうる結果であり、Hagiu (2009) によれば、とくに起こりやすいのは、複数のプラットフォームを併用する(マルチホーミングの)費用が高く、差別化された機能への需要が小さいときである。Cennamo & Santalo (2013, p. 1332) の整理でも、局所的なネットワーク効果、併用の費用の低さ、消費者の好みの違いによって、複数のプラットフォームが共存しうることが示されてきた。Cennamo & Santalo (2013) は、1995〜2008年の米国のビデオゲーム産業を分析した(pp. 1331, 1333)。ソフトの数と種類を増やす戦略と、独占タイトルを確保する戦略を、同時に同じ強さで進めると、それぞれの効果が弱まり、かえって成果が下がった(p. 1331)。また、ソフトの品ぞろえを競合と変える独自の位置取りと成果の関係はU字型で、違いがある水準を超えて大きい範囲では違いを出すほど市場シェアが高まったが、それより小さい範囲では違いを出すほど市場シェアが低かった(pp. 1331, 1343–1344)。

ただし Cennamo & Santalo (2013, p. 1347) は、この結果がビデオゲーム産業に固有かもしれないこと、ソフトの品質を直接測れていないこと、トレードオフを和らげる統治の工夫を検討していないことを、限界として挙げている。また、Windows や Google のように競争の弱い環境では、このトレードオフは目立たないか、存在しないかもしれないと述べている(p. 1347)。

研究上の位置づけ

原典Rochet, J.-C., & Tirole, J. (2003)
Platform competition in two-sided markets
分類理論
地図の区画戦略
分析単位組織 · コミュニティ
理論系譜経済学 · ネットワーク
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。