理論・視点

技術的不連続とドミナント・デザインTechnological Discontinuities and Dominant Design

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

技術は、飛躍的な変化(技術的不連続)が起きて複数の設計が競い合う混乱期を経て、一つの標準的な設計(ドミナント・デザイン)に落ち着き、その後は小さな改良が続く、という周期で進むとする理論。

目次
説明したい問い技術はどのような周期で変化し、その変化は業界の企業にどんな影響を与えるのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

技術は毎年少しずつ良くなるだけではなく、ときに一気に入れ替わる。そうした大きな変化は、業界の中の誰に有利に働き、誰に不利に働くのか。

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主張とメカニズム

Tushman & Anderson (1986) は、価格や性能を大きく変える技術的不連続を二種類に分けた。能力強化型は、既存企業がすでに持つ技能や知識を生かせる変化である。能力破壊型は、それまでの技能や知識を役に立たなくする変化である。能力強化型では既存企業が有利になり、能力破壊型では新規参入者が有利になりやすいとした。

この周期の骨格は Tushman & Anderson (1986) ですでに述べられており、その後 Anderson & Tushman (1990) が、これを周期的なモデルとして発展させた。不連続が起こると、複数の設計が並び立つ「混乱の時期」が始まる。やがて一つの設計、あるいはごく近い範囲の設計が市場で広く受け入れられ、これがドミナント・デザインとなる。その後は、その設計を前提にした小さな改良が積み重なる時期が続き、次の不連続で再び周期が始まる。Tushman & Anderson (1986) がすでに述べ、Teece (2006) も指摘するように、ドミナント・デザインは技術的に最も優れたものとは限らない。ネットワーク外部性があると、先に広まったものが優位を保ち続けるため、初期の小さな偶然によって、ある基準では劣った設計が標準になることがある。これは David (1985) や Arthur (1989) が示した、技術の経路依存的な進化の議論である。

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身近な例

初期の自動車には、蒸気、電気、ガソリンなど、さまざまな動力が並んでいた。やがてガソリンエンジンの設計が標準となり、各社はその枠の中で改良を競うようになった。近年の電気自動車の広がりは、新たな不連続として論じられることが多い。

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主要概念

技術的不連続(technological discontinuity)
製品や工程の性能や費用を大きく変える、飛躍的な技術の変化。
能力破壊型(competence-destroying)
既存企業の技能や知識を時代遅れにする技術変化。
能力強化型(competence-enhancing)
既存企業の技能や知識を土台に生かしながら、価格性能を桁違いに高める技術的不連続。
ドミナント・デザイン(dominant design)
競合する設計の中から市場に広く受け入れられ、その製品分野の基本的な構成(アーキテクチャ)を決めるようになった設計。技術的な仕様としての「標準」とは区別されることがある。
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代表的な展開研究

  • Anderson, P., & Tushman, M. L. (1990). Technological discontinuities and dominant designs: A cyclical model of technological change. Administrative Science Quarterly. DOI ↗不連続、混乱の時期、ドミナント・デザイン、漸進的な変化の時期という技術変化の周期モデルを示した。
  • Suárez, F. F., & Utterback, J. M. (1995). Dominant designs and the survival of firms. Strategic Management Journal. DOI ↗米国のタイプライター、自動車、テレビ、ブラウン管、トランジスタ、電卓の6産業で企業の生存を分析し、ドミナント・デザインが定まる前に参入した企業のほうが、後に参入した企業より失敗しにくいことを示した。ただし、定まった後に遅く参入するほど失敗しやすいという予測をはっきり支持したのは1産業だけだった。
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批判と境界条件

Murmann & Frenken (2006, p. 933) は、ドミナント・デザインの実証研究を見直し、研究者の間で定義や分析の単位がそろっていないことを示した。ドミナント・デザインは製品全体について論じられることもあれば、自動車のエンジンのような部品の水準で論じられることもある(pp. 933–934)。また、二つの設計を同じとみるか違うとみるかは、製品をどれだけ細かく見るかと、どれだけの時間間隔で観察するかに左右される。これまでの研究は、この問題を十分に認識してこなかったという(p. 934)。

ドミナント・デザインが競争の変化の原因なのか結果なのかについても、見解は分かれている(Murmann & Frenken, 2006, p. 932)。技術のさまざまな機能の間で最もよい妥協点だから広まるとする説明では原因とされ、規模の経済やネットワーク外部性、企業の戦略的な駆け引きによる説明では、むしろ結果とされる(p. 935)。また、Murmann & Frenken (2006, p. 933) の整理によれば、Anderson & Tushman (1990) はドミナント・デザインは後からしか分からないとしたが、この点で Utterback & Suárez (1993) とは立場が異なる。

これに対して Murmann & Frenken (2006, p. 925) は、製品を、部品とサブシステムが入れ子になった複雑なシステムとして捉え直すことを提案した。そして、製品の多くの性能に影響する中核の部品について、大半の設計が同じ技術を使っている状態をドミナント・デザインとし、それを有無ではなく程度の問題として扱うよう勧めた(pp. 940, 944)。

Srinivasan, Lilien & Rangaswamy (2006, p. 2) は、これまでの研究が、ドミナント・デザインはいずれ必ず現れると暗黙のうちに仮定してきたと指摘した。彼らが事務用品と耐久消費財の63の製品分野を調べると、ドミナント・デザインが現れていたのは30分野で、残る33分野では2003年の時点でまだ現れていなかった(pp. 2, 8)。ただし著者ら自身も、限界を認めている(p. 13)。扱ったのは最初に現れるドミナント・デザインだけで、パソコンの OS や表計算ソフトのように、それが後の設計に置き換えられた分野もある。また一部の変数は、評価者による後からの評価で測っており、後知恵による偏りを免れない。

研究上の位置づけ

原典Tushman, M. L., & Anderson, P. (1986)
Technological discontinuities and organizational environments
分類モデル・枠組み
分析単位コミュニティ · 組織
理論系譜進化論
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。