断続均衡モデルPunctuated Equilibrium
原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)
一言で言うと組織は、基本的な活動パターンが安定した長い期間(均衡期)と、それを根本から崩す短い変化の期間(革命期)を交互に経験する、とするモデル。Romanelli & Tushman (1994) は米国のミニコンピュータ企業25社の歴史を調べ、根本的な変革の大半が短期間に戦略・構造・権力配分でまとめて起こっていたことを示した。
目次
この理論で考えられる身近な疑問
中核的な問い
組織が根本から変わるとき、その変化はどのように進むのか。Gersick (1991) によれば、変化についての研究は、小さな変化がゆっくり積み重なって新しい形が生まれるというダーウィン的な漸進主義の前提に強く影響されてきた。この前提では、十分に小さければどんな変化もいつでも受け入れられ、大きな変化は小さな変化の積み重ねから生じる。断続均衡の考え方はこれに異を唱える。システムの歴史の大部分には、変化が単に起こらないのではなく、積極的に妨げられる限界があるとみるのである。
Romanelli & Tushman (1994) は、このモデルが組織変革の有力な枠組みになりつつある一方で、その基本的な主張が直接には検証されていないことを問題にした。組織の根本的な変革は、本当に短期間に、多くの領域で同時に起こるのか。それとも、小さな変化が積み重なって起こるのか。
主張とメカニズム
Romanelli & Tushman (1994) によれば、断続均衡モデルは、組織が基本的な活動パターンの安定した比較的長い期間(均衡期)と、根本的な変化が短く噴き出す期間(革命期)を交互に経験すると描く。革命期は、確立した活動パターンを大きく崩し、次の均衡期の土台を据える。Gersick (1991) は、個人の発達、集団の発達、組織の進化、科学史、生物の進化、自己組織化するシステムという六つの領域で、同じ型のモデルが現れていることを示した。
この交替を説明する鍵が「深層構造」である。Gersick は深層構造を、システムがどんな部分に組織され、どんな活動パターンで存続するかについての、根本的で互いに依存し合う「選択」のまとまりと説明する。深層構造が安定しているのは、第一に、決定の木のように、早い段階の選択が多くの選択肢を締め出すからである。第二に、活動パターンが互いにフィードバックし合い、全体を強化するからである。組織については、Tushman & Romanelli (1985) が、中核的な信念と価値、戦略、権力の配分、構造、統制システムを挙げている(Gersick と Romanelli & Tushman の整理による)。
均衡期には、システムは深層構造の選択を保ったまま、小さな調整を重ねる。表面上は混乱して見えることもあるが、深層構造は変わらない。Gersick は、大きな変化を妨げる障壁として、認知(枠に合わないものは見えない)、動機(埋没費用や統制を失う恐れ)、義務(内外の利害関係者との約束)を挙げる。Romanelli & Tushman も、部分どうしの相互依存が変化への抵抗を生み、小さな変化が根づくのを妨げると論じた。そのため根本的な変化には、まず深層構造をいったん解体する必要がある。Gersick はこれを、バスケットボールのゴールを高くする変化と、ゴールを取り去る変化の違いにたとえている。
何が均衡を破るのか。Romanelli & Tushman は、深刻な業績悪化、環境の大きな変化、最高経営責任者(CEO)の交代を候補に挙げた。新しいCEOは前任者の戦略に縛られておらず、変化を期待される空気の中で仕事を始めるからである。Gersick はさらに、危機に引き寄せられる新参者と、期限の中間点のような時間の節目を挙げる。ただし内外の変化は、それだけで革命を起こすのではなく、革命の必要を生むにすぎないという。
Romanelli & Tushman は、1967〜69年に創業した米国のミニコンピュータ企業25社の歴史を、戦略、構造、権力配分の三つの領域について年ごとに調べた。三領域すべてで大きな変化が2年以内に起これば、革命的変革とみなした。その結果、革命的変革は非革命的変革を少なくとも6対1で上回った。小さな変化の累積は、1年で30%以上の変化が起こる前に18%を超えたことが一度もなかった。環境の大きな変化とCEOの交代は革命的変革を起こりやすくしたが、業績危機の効果は確認されなかった。
身近な例
たとえば、3か月後の締め切りに向けて、新しいサービスの企画をまとめるチームがあるとしよう。前半のチームは、最初の会議で決めた進め方のもとで細かな修正を重ねるだけで、方針そのものは変えない。うまくいっていない兆しがあっても、進め方の問題とは受け止められない。ところが期間の半分が過ぎたところで、メンバーは「このままでは間に合わない」と感じる。そこで外部の意見を取り入れ、それまでの作業を見直し、新しい方針に切り替える。後半は、この新しい方針のもとで作業が進む。
会社についても考えてみよう。たとえば、市場が大きく変わった年に、外部から新しい社長が来た会社があるとしよう。その後1〜2年のうちに、事業の中身、組織の形、経営陣の顔ぶれがそろって入れ替わる。断続均衡モデルは、部分ごとの小さな改善の積み重ねよりも、このようなまとまった変化こそが、根本的な変革の典型的な姿だとみる。
主要概念
- 深層構造(deep structure)
- システムの単位がどんな基本的な形に組織され、どんな活動でその形と環境との資源のやりとりを保つかについての、根本的で互いに依存し合う「選択」のネットワーク。人間のシステムでは大部分が暗黙のうちにある(Gersick, 1991)。
- 均衡期(equilibrium period)
- システムが深層構造の選択を保ち、実行する期間。内外の揺らぎから深層構造を守る調整や、深層構造に組み込まれた道筋に沿った小さな前進が行われる。表面上は混乱して見えることもある(Gersick, 1991)。
- 革命期(revolutionary period)
- 深層構造がばらばらになり、新しい深層構造の核となる選択がなされるまで、システムが混乱状態に置かれる比較的短い期間。その結果は予測できず、システムを良くするとも限らない(Gersick, 1991)。
- 革命的変革(revolutionary transformation)
- Romanelli & Tushman (1994) の測定では、戦略、構造、権力配分の三領域すべてで大きな変化が2年以内に起こること。2年を超えて三領域が変わる場合は、非革命的変革とされた。
代表的な展開研究
- Gersick, C. J. G. (1991). Revolutionary change theories: A multilevel exploration of the punctuated equilibrium paradigm. Academy of Management Review. DOI ↗個人の発達、集団の発達、組織の進化、科学史、生物の進化、自己組織化するシステムという六つの領域のモデルを並べ、深層構造・均衡期・革命期という共通の構成要素を取り出した。そのうえで、革命期が何をきっかけに始まり、その間にシステムがどう働き、どう終わるかについて研究課題を示した。
批判と境界条件
Romanelli & Tushman (1994) 自身が、いくつかの限界を認めている。第一に、対象は技術と競争の変動が激しい時期のミニコンピュータ業界であり、その激しさが変革を速く劇的にした可能性がある。より安定した環境でも同じパターンが見られるかは、今後の課題とされた。第二に、アーカイブ資料を用いたため、小さな変化が累積しないことは示せても、変化への抵抗(深層構造)というメカニズムそのものは直接示せていない。第三に、2年を超える変化を非革命的変革とする分類では、互いに無関係な変化をひとまとめにしている可能性がある。第四に、業績危機の仮説が支持されなかったのは、業績を市場シェアの変化で測ったためかもしれないと述べている。また、何を「大きな変化」とみなすかには客観的な基準がなく、30〜60%の複数の基準で結果を確かめている。
Gersick (1991) は、このパラダイムを使う際の注意を二つ挙げる。一つは、これがシステムの唯一の変わり方だと考えないことである。断続的なパターンは、深層構造が窮屈なシステムで最もはっきり現れ、非常に柔軟なシステムでは現れにくい。内部の相互依存が低い、Weick (1976) のいう緩やかに結合したシステムは、最も当てはまりにくいかもしれないという(Gersick の整理による)。もう一つは、ある領域のモデルを別の領域にそのまま持ち込まないことである。さらに Gersick は、実現した変化によって変革を定義する Tushman らの方法では、変化を実現できずに終わった移行期が研究者から見えなくなると指摘している。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Romanelli, E., & Tushman, M. L. (1994). Organizational transformation as punctuated equilibrium: An empirical test. Academy of Management Journal. DOI ↗
- Gersick (1991), Academy of Management Review ↗
本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。