集団発達の断続均衡モデル(中間点の移行)Punctuated Equilibrium Model of Group Development
一言で言うと期限のある課題に取り組むチームは、決まった段階を順にたどるのではなく、最初の会合で固まったやり方を期間の前半まで続け、期限までのちょうど中間点で大きく方針を転換し、その新しい方針で後半を進める、とするモデル。Gersick (1988) が8つのチームの観察から提案した。
中核的な問い
Gersick (1988) によれば、集団の発達についての従来の研究は、どの集団も同じ段階を決まった順序で進むという見方に立ってきた。たとえば Tuckman (1965) は、集団の発達を形成期、混乱期、統一期、機能期という一つの順序としてまとめた。しかし、こうしたモデルは、変化が何をきっかけに、どのような仕組みで起こるのか、ある段階にどれだけとどまるのかをほとんど説明しない。また、集団を環境から閉じたものとして扱ってきた。組織の中のチームは、課題も資源も外から与えられるので、この点は大きな限界になる。
Gersick は、別の目的で観察していたプロジェクト・チームが、従来のモデルの予測どおりに段階を進んでいないことに気づいた。チームは実際には、いつ、どのように変わるのか。
主張とメカニズム
Gersick (1988) は、8つの実在のチームについて、すべての会合を最初から最後まで観察した。対象は、経営大学院生による事例分析のチーム3つ、募金団体の委員会、銀行の新商品開発チーム、1日の管理職合宿を企画する病院の管理職チーム、治療施設の再編チーム、大学の新しい研究所の設計チームである。期間は7日から6か月までさまざまだった。分析には、データから仮説を立て、元のデータで確かめることを繰り返すグラウンデッド・セオリーの方法を用いた。
チームが仕事に使った行動は多様だったが、やり方を固め、保ち、変えるタイミングはよく一致していた。どのチームも、最初の会合の時点ですでに独自の取り組み方を示し、その方法を期間の前半まで持ち続けた(局面1)。その後、どのチームも大きな移行を経験した。短い期間に集中して、それまでのパターンを捨て、外部の上司と改めて連絡をとり、仕事への新しい見方を採り入れ、大きく前進した。
移行で固まった計画は、後半の局面2を通じて実行され、最後の会合で作業は一気に仕上げられた。とりわけ注目されたのは、与えられた期間が大きく異なっていたにもかかわらず、どのチームも最初の会合と期限のちょうど中間点で移行を迎えたことだった。
Gersick は、これを新しい名前の段階論とは考えなかった。段階は、どの集団でも同じ行動からなり、順に積み上がるものを指す。これに対して観察されたのは、中身はチームごとに違うが、時間で区切られた期間だった。Gersick はこの違いを、アメリカンフットボールの試合を、ハーフタイムをはさむクォーターの構造として見るか、決まった順序で現れるプレースタイルの連続として見るかの違いにたとえた。そして、長い安定期が短い革命的な変化で区切られるという、自然史の断続均衡の考え方を、初めて集団に当てはめた。
なぜ中間点で移行が起こるのか。Gersick は、人は問題があると思わなければ新しい案を探さないという「問題に促された探索」の考え方と、限られた時間を配分して期限に間に合わせるペース配分の考え方を組み合わせて説明した。中間点は、使った時間と残りの時間が等しくなる自然な節目であり、目覚まし時計のように働いて、時間が限られていることを意識させ、今の進み具合と必要な進み具合を比べさせる。ただし Gersick は、移行は前進の機会であって保証ではなく、中間点そのものより、チームが時間の節目を使ってペースを配分していることが重要だと述べた。
Gersick はまた、チームが外からの影響を特に受け入れやすい時期が二つあると考えた。一つは最初の会合で、そこでのやりとりが前半のやり方を長く方向づける。もう一つは移行の時期で、チームは仕事の中身を理解できるだけの経験を積み、先に進まなければと感じるほど時間を使い、それでもなお大きく変えられるだけの時間が残っている。反対に、局面1と局面2の期間中は、自分たちのやり方に合わない外からの情報は届きにくかった。
身近な例
3か月の期限で新商品の企画をまとめるタスクフォースがあるとしよう。初回の会議で「まず市場調査を徹底的にやろう」という方向が決まり、最初の1か月半はひたすらデータ集めが続く。進んでいるのかどうか、メンバーにもよく分からない。
ちょうど折り返しの時期になって、誰かが「あと半分しかない」と言い出す。チームは部長に中間報告をして意見をもらい、調べたデータを捨てる覚悟で、商品のコンセプトを一から組み直す。後半は、そのとき決めた案をひたすら形にしていく。最初の会議と期間の中間点が、チームのやり方を決める節目になっている例である。
主要概念
- 局面1(phase 1)
- 期間の前半。最初の会合で方向が決まった取り組み方が、大きく変わらずに続く慣性の期間。
- 移行(transition)
- 期限までの中間点で起こる、取り組み方の大きな転換。古いパターンを捨て、外部と改めて連絡をとり、新しい方針を固める。
- 局面2(phase 2)
- 移行で固まった計画を実行していく、二度目の慣性の期間。
- 慣性(inertia)
- 止まっていれば止まり続け、動いていれば同じ方向に動き続けようとする傾向。Gersick は辞書どおりの意味で用いた。
- ペース配分(pacing)
- 期限に間に合うように、限られた時間の使い方を調整すること。中間点のような時間の節目がそのきっかけになる。
批判と境界条件
Gersick (1988) 自身が、この研究は仮説を生み出すためのものであり、仮説を検証したものではなく、モデルは明確に暫定的なものだと述べている。分析は一人で行った。また、結果が当てはまるのは、仕事の進め方を変える余地があり、期限に合わせて動く必要のある集団に限られるとした。外部の関係者への聞き取りや、会合の外での外部関係者の観察を行っていないため、局面ごとの外からの働きかけの効果については、さらに研究が必要だとしている。なお、8チームのうち3チームは同じ大学の大学院生のチームだった。
Gersick は、何が中間点で「目覚まし時計」を鳴らすのか、それが集団の中で正確にどう働くのかは、この研究では答えられないとも述べた。移行は前進の機会にすぎず、移行の時期に先へ進まなければと感じても進めないチームや、進み具合に満足して目に見える変化がないまま進むチームもありうる。また、チームによっては、中間点以外の時期が強く意識される予定で仕事をしている可能性もあると述べた。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Gersick, C. J. G. (1988). Time and transition in work teams: Toward a new model of group development. Academy of Management Journal. DOI ↗
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