組織論
研究分野「組織論」(Organization Theory)に分類される項目です(理論 26・概念 1・論文 1)。ひとつの理論が複数の分野に属することがあります。
理論・視点 26
理論・視点企業の行動理論
Behavioral Theory of the Firm
企業は一枚岩の利益最大化マシンではなく、利害の異なる人々の連合体である。目標と実績の差を見ながら、限られた探索とルールに頼って意思決定する、と説明する理論。
問い企業は、現実にはどのように目標を立て、意思決定し、行動を変えるのか。
限定合理性
Bounded Rationality
人は合理的であろうとするが、情報も計算能力も時間も限られている。そのため最適解を探すのではなく、「これで十分」と思える案で満足して決める、とする考え方。
問い能力や情報に限りのある人間は、どのように意思決定しているのか。
実践共同体
Communities of Practice
学習は、頭の中に知識を取り込むことではなく、ある実践を共有する人々の集まりに加わり、周辺から次第に中心へと参加を深めていく過程だとする視点。
問い人は仕事や技能を、教室や研修の外で、どのように身につけていくのか。
コンティンジェンシー理論(条件適合理論)
Contingency Theory
「どんな場合にも最善の組織」は存在しない。環境や技術などの条件に組織の形が合っているとき、成果が高まる、とする理論。
問い組織の最適な構造は、どのような条件によって変わるのか。
埋め込み
Embeddedness
経済的な行為は、孤立した個人の損得計算だけで決まるのではなく、具体的で継続的な人間関係のネットワークの中で行われ、その関係が信頼や不正のあり方を左右するという視点。
問い市場や企業の中の経済的な行為は、人と人との関係からどのような影響を受けるのか。
進化経済学(組織ルーティン)
Evolutionary Theory of the Firm (Routines)
企業の行動は、合理的な計算よりも、習慣化した「ルーティン」によって行われる。ルーティンは遺伝子のように受け継がれ、探索によって変わり、市場で選択される、とする理論。
問い企業の能力や行動パターンは、どのように保たれ、どのように変わっていくのか。
離脱・発言・忠誠
Exit, Voice, and Loyalty
企業や組織、国家の質が落ちたとき、顧客やメンバーは「離脱」するか「発言」するかで反応し、その反応が組織に立て直しを促す。忠誠は離脱を思いとどまらせ、発言を引き出す、とする理論。
問い組織の質が低下したとき、人々はどう反応し、その反応は組織の回復にどう役立つのか。
ゴミ箱モデル
Garbage Can Model
組織の意思決定は、問題・解決策・参加者・選択機会が別々に流れ込み、たまたま同じ「ゴミ箱」に居合わせたときに起こる。合理的な手順より、タイミングで決まることが多いとするモデル。
問い目標も手段も曖昧な組織では、意思決定はどのように行われるのか。
制度的同型化
Institutional Isomorphism
同じ業界の組織は、効率のためというより、周囲から正統だと認められるために、互いに似た形になっていく。その力には強制・模倣・規範の三つがある、とする理論。
問いなぜ同じ分野の組織は、互いに似通っていくのか。
制度ロジック
Institutional Logics
市場、専門職、家族、国家、宗教など、社会には複数の「当たり前」の考え方(ロジック)がある。どのロジックが優勢かによって、組織や人が何を重視し、どう行動するかが変わる、とする視点。
問い社会にある複数の価値観や規範は、組織や個人の行動をどう方向づけ、どうぶつかり合うのか。
制度化された組織(神話と儀式)
Institutionalized Organizations (Myth and Ceremony)
組織の公式な構造は、仕事の効率のためではなく、社会で「合理的」とされる考え方(神話)を儀式的に取り入れた結果であることが多い。実際の業務とは切り離されていることもある、とする理論。
問い組織の公式な構造は、なぜ実際の仕事のやり方と一致しないことがあるのか。
知識ベース・ビュー
Knowledge-Based View of the Firm
企業にとって最も重要な資源は知識である。企業は、個人がばらばらに持つ専門知識を統合し、製品やサービスに変えるための仕組みだ、とする視点。
問い知識を持つのは個人なのに、なぜ企業という組織がそれを活かす場として存在するのか。
ルース・カップリング(緩やかな結合)
Loose Coupling
組織の部分同士は、互いに反応しあいながらも、それぞれの独自性を保ち、ゆるくしかつながっていない。この「ゆるさ」が、欠点であると同時に適応の強みにもなる、とする見方。
問い組織の各部分がきっちり連動していないことは、何を意味し、どんな働きを持つのか。
両利きの経営(組織の両利き)
Organizational Ambidexterity
既存事業を磨く力と、新しい事業を切り開く力を、一つの組織の中で同時に持つこと。そのために、異なる文化を持つ部門を分けつつ、トップが統合する、といった仕組みが必要だとする理論。
問い組織は、既存事業の効率化と新事業の開拓を、どうすれば両立できるのか。
組織文化
Organizational Culture
組織文化とは、集団が問題を解決する中で身につけ、「当たり前」として新しいメンバーに伝えていく前提の体系である。目に見える人工物、表明された価値観、無意識の基本的前提の三層からなる、とする理論。
問い組織の「らしさ」はどのように形成され、人々の行動をどう方向づけるのか。
組織アイデンティティ
Organizational Identity
「私たちは何者か」という問いへの、組織メンバーの答え。中心的で、独自で、時間を超えて続くと考えられている組織の特徴であり、戦略や変化への反応を方向づける。
問い組織メンバーは「自分たちは何者か」をどう理解し、それが行動にどう影響するのか。
パラドックス理論
Paradox Theory
組織には、短期と長期、効率と創造、統制と自由のように、矛盾しながらも両方必要な要素がつきまとう。どちらかを選ぶのではなく、両方を抱え続けることが長期的な成果につながる、とする理論。
問い組織は、互いに矛盾するが両方とも欠かせない要求に、どう向き合えばよいのか。
個体群生態学
Population Ecology
個々の組織は大きく変わることが難しい。組織の世界の変化は、主に新しい組織の誕生と古い組織の消滅によって起こる、と生物の進化になぞらえて説明する理論。
問い組織の多様性はなぜ生まれ、環境の変化に応じてどう入れ替わっていくのか。
断続均衡モデル
Punctuated Equilibrium
組織は、長い安定期の中で少しずつしか変わらず、ときおり短期間に根本からまとめて変わる。変化は連続的ではなく、「安定」と「革命」の繰り返しとして起こる、とするモデル。
問い組織の大きな変化は、少しずつ積み重なって起こるのか、それとも一気に起こるのか。
資源依存理論
Resource Dependence Theory
組織は必要な資源を外部に頼っており、頼る相手に行動を縛られる。だから組織は、合併・提携・役員派遣などで依存をコントロールしようとする、とする理論。
問い組織は、外部の他者への依存をどのように管理しようとするのか。
資源ベース・ビュー
Resource-Based View
企業ごとの業績の差は、その企業が持つ資源の違いから生まれる。価値があり、希少で、真似しにくく、代わりがきかない資源を持つ企業が、持続的な競争優位を得るとする理論。
問い同じ業界にいながら、なぜ一部の企業だけが長く高い業績を上げ続けられるのか。
意味形成(センスメイキング)
Sensemaking
人は、予想外の出来事に出会うと、手がかりを拾い、もっともらしい筋書きをつくり、それに基づいて動く。組織とは、この意味づけと行動が絶えず繰り返される過程だとする視点。
問い人々は、曖昧で予想外の状況にどのように意味を与え、行動につなげるのか。
シングル・ループ学習とダブル・ループ学習
Single- and Double-Loop Learning
組織の学習には、決められた目標や前提の範囲で行動を修正するシングル・ループ学習と、その目標や前提自体を問い直すダブル・ループ学習の二つがある、とする理論。
問い組織は、なぜ誤りを直せても、誤りを生む前提そのものは変えにくいのか。
社会的アイデンティティ理論
Social Identity Theory
人は自分を、所属する集団のメンバーとして定義する。組織への同一化とは、組織と自分が一体である、あるいは組織に属しているという知覚であり、それが組織を支える行動や集団間の関係を左右する、とする理論。
問い人はなぜ所属する組織を「自分たち」と感じ、その感覚は組織での行動にどう影響するのか。
技術の二重性
The Duality of Technology
技術は、人がつくり、使い方を変えていく産物であると同時に、人の行動を方向づける枠組みでもある。技術と組織は一方的に影響するのではなく、人の使い方を通じて互いにつくり合う、という視点。
問い技術は組織を変えるのか、それとも人や組織が技術の意味を決めるのか。
取引費用理論
Transaction Cost Economics
取引には、相手を探し、交渉し、約束を守らせるためのコストがかかる。そのコストが大きい取引ほど、市場ではなく組織の内部(階層)で行われる、とする理論。
問いある活動は、なぜ市場で外部から買うのではなく、組織の内部で行われるのか。
概念・現象 1
概念・現象組織学習
Organizational Learning
組織が経験から推論を引き出し、それをルーティンや知識として蓄え、将来の行動を変えていく現象。個人の学習の総和ではなく、組織としての記憶や手順に残る点が特徴である。
問い組織は、経験から何をどのように学び、それはどこに蓄えられるのか。
論文・書籍 1
論文・書籍Sensemaking in Organizations
組織における意味形成Weick 1995 · SAGE Publications
人々が曖昧で不確かな状況に意味を与え、その意味にもとづいて行動する過程(センスメイキング)を体系的に論じた書籍。センスメイキングの7つの特性を示した。
問い人々は、何が起きているのか分からない状況に、どのように意味を与えていくのか。