FIELD / ORGANIZATION THEORY
組織論
研究分野「組織論」(Organization Theory)に分類される項目です(理論 34・概念 1・論文 1・研究法 11)。ひとつの理論が複数の分野に属することがあります。
理論・視点 34
アテンション・ベースト・ビューAttention-Based View of the Firm企業が何をするかは、意思決定者がどの問題と解決策に注意を向けるかで決まる。その注意の向け先は、会議・報告・審査といった具体的な場と、ゲームのルール、プレイヤー、構造上のポジション、資源という組織の仕組みによって配分される、という視点。Ocasio (1997) が提唱した。企業の行動理論Behavioral Theory of the Firm企業を、利益を最大化する一枚岩の主体としてではなく、限られた合理性しか持たない人々が、目標に照らした満足化、身近な探索、決まったルールによって意思決定する連合体として描く理論である。Cyert & March (1963) が示し、Gavetti et al. (2012) がその前提とその後の展開を整理している。限定合理性Bounded Rationality人は合理的であろうとするが、情報も計算能力も時間も限られている。そのため最適解を探すのではなく、「これで十分」と思える案で満足して決める、とする考え方。官僚制とその逆機能Bureaucracy and Its Dysfunctions職務の分担、権限の階層、一般的な規則によって仕事を組み立てる官僚制について、その技術的な効率と、規則の遵守がそれ自体目的になるといった負の側面(逆機能)を論じる議論。Adler & Borys (1996) は、規則が働く人を支えるか縛るかは形式化の種類によると論じた。実践共同体Communities of Practice学習は、頭の中に知識を取り込むことだけではなく、ある実践を共有する人々の集まりに加わり、周辺から次第に中心へと参加を深めていく過程だとする視点。コンティンジェンシー理論(条件適合理論)Contingency Theory「どんな場合にも最善の組織」は存在しない。環境や技術などの条件に組織の形が合っているとき、成果が高まる、とする理論。デカップリングDecoupling組織が正統性を得るために取り入れた公式の方針や構造と、実際の仕事とのあいだに隔たりをつくり、それを保つこと。Meyer & Rowan (1977) は、この隔たりが、検査や評価を避け、関係者が互いの誠意を前提にふるまうことで保たれると論じた。Bromley & Powell (2012) は、方針が実行されない「方針と実践」の隔たりと、実行されていても目的とのつながりが不透明な「手段と目的」の隔たりを区別した。埋め込みEmbeddedness経済的な行為は、孤立した個人の損得計算だけで決まるのではなく、具体的で継続的な人間関係のネットワークの中で行われ、その関係が信頼や不正のあり方を左右するという視点。進化経済学(組織ルーティン)Evolutionary Theory of the Firm (Routines)企業は最適化の計算ではなく、過去に用いてきた「ルーティン」に従って行動するとみなし、その行動の連続性と市場での選択から、競争、技術変化、経済成長を動的な過程として説明しようとする理論である。Nelson & Winter (2002) が、1982年の著書以来の展開を整理している。離脱・発言・忠誠Exit, Voice, and Loyalty企業や組織、国家の質が落ちたとき、顧客やメンバーは「離脱」するか「発言」するかで反応し、その反応が組織に立て直しを促す。忠誠は離脱を思いとどまらせ、発言を引き出す、とする理論。ゴミ箱モデルGarbage Can Model目標や技術が曖昧な組織では、問題・解決策・参加者が、「ゴミ箱」にたとえられる選択機会(決定の場)に別々に流れ込み、その組み合わせがたまたま行動を可能にしたときに決定が起こる。決定は合理的な手順どおりには進まず、中身だけでなくタイミングにも大きく左右されるとするモデル。制度的複雑性Institutional Complexity組織が複数の制度ロジックから両立しない指示を受ける状況と、それへの組織の対応を扱う視点。Greenwood et al. (2011) は、フィールドの構造と組織の属性が複雑性の経験と対応を左右するという枠組みを示した。Pache & Santos は、対立が目的をめぐるか手段をめぐるか、組織内でどちらの側が代表されているかによって対応が変わると論じ、Besharov & Smith (2014) は、ロジックの両立性と中心性によって組織内の対立の大きさが変わると整理した。制度的同型化Institutional Isomorphism同じ分野の組織は、市場での競争や効率の追求によってだけでなく、国家や専門職を通じた圧力によって、互いに似た形になっていく。DiMaggio & Powell (1983) はこれを制度的同型化と呼び、強制・模倣・規範という三つのメカニズムを示した。制度ロジックInstitutional Logics社会や業界で共有された前提・価値・ルールのパターン(制度ロジック)が、組織で何が正当とされ、何に注意が向き、どんな解決策が適切とされるかを方向づけるという視点。Thornton & Ocasio (1999) は、米国の高等教育出版業界で編集ロジックから市場ロジックへの移行が起こり、それに伴って経営者の交代を左右する要因が入れ替わったことを示した。制度的仕事Institutional Work制度の創造、維持、攪乱を目指す、個人や組織の目的をもった行為に注目する視点。業界や社会の大きな変化だけを見るのではなく、制度の中で暮らし働く人々が、その制度を支え、手直しし、揺るがす日々の努力を分析の中心に置く。成功した改革者だけでなく、失敗した働きかけや、制度を守る地味な仕事も対象にする。制度化された組織(神話と儀式)Institutionalized Organizations (Myth and Ceremony)組織の公式な構造の多くは、仕事の必要からではなく、社会で合理的だとされる制度化されたルール(神話)を取り入れた結果として生まれる。Meyer & Rowan (1977) は、神話に沿った組織は正統性と資源を得る一方で、公式構造を実際の活動から切り離す(脱連結)と論じた。知識ベース理論Knowledge-Based View of the Firm企業にとって最も重要な資源は知識である。企業は、個人がばらばらに持つ専門知識を統合し、製品やサービスに変えるための仕組みだ、とする視点。ルース・カップリング(緩やかな結合)Loose Coupling組織の部分どうしは、互いに反応しあいながらも、それぞれの独自性と分離を保ったまま、ゆるく結びついていることが多い。Weick (1976) が学校組織を例に示したこの見方は、合理的な設計図では説明しきれない組織の姿をとらえ、そのゆるさの利点と欠点の両方を問う。両利きの経営(組織の両利き)Organizational Ambidexterity既存事業を磨く力と、新しい事業を切り開く力を、一つの組織の中で同時に持つこと。そのために、異なる文化を持つ部門を分けつつ、トップが統合する、といった仕組みが必要だとする理論。組織文化Organizational Culture組織文化とは、集団が問題に対処する中で身につけ、妥当と認められて、正しい見方・考え方として新しいメンバーに教えられていく基本的前提の型である。目に見える人工物、表明された価値観、無意識の基本的前提の三層からなる、とする理論。組織アイデンティティOrganizational Identity「私たちは組織として何者か」という問いへの答えとして、組織を他の組織から区別する中心的で持続的な特徴を捉える概念。その特徴が本当に「持続的」なのか、それとも外部のイメージとの相互作用で変わっていくのかをめぐって議論がある。組織的刻印Organizational Imprinting組織や個人は、創業期や入社直後のような環境の影響を受けやすい短い時期に、その時の環境を映す特徴を身につけ、環境が大きく変わった後もそれを持ち続ける。刻印の議論は、どの時期のどんな条件が、どのレベルに、どんな特徴を残したのかを問う。パラドックス理論Paradox Theory組織には、短期と長期、効率と創造、統制と自由のように、矛盾しながらも両方必要な要素がつきまとう。どちらかを選ぶのではなく、両方を抱え続けることが長期的な成果につながる、とする理論。個体群生態学Population Ecology個々の組織は大きく変わることが難しい。組織の世界の変化は、主に新しい組織の誕生と古い組織の消滅によって起こる、と生物の進化になぞらえて説明する理論。断続均衡モデルPunctuated Equilibrium組織は、基本的な活動パターンが安定した長い期間(均衡期)と、それを根本から崩す短い変化の期間(革命期)を交互に経験する、とするモデル。Romanelli & Tushman (1994) は米国のミニコンピュータ企業25社の歴史を調べ、根本的な変革の大半が短期間に戦略・構造・権力配分でまとめて起こっていたことを示した。集団発達の断続均衡モデル(中間点の移行)Punctuated Equilibrium Model of Group Development期限のある課題に取り組むチームは、決まった段階を順にたどるのではなく、最初の会合で固まったやり方を期間の前半まで続け、期限までのちょうど中間点で大きく方針を転換し、その新しい方針で後半を進める、とするモデル。Gersick (1988) が8つのチームの観察から提案した。資源依存理論Resource Dependence Theory組織は必要な資源を外部に頼っており、その資源を握る相手にパワーを持たれ、行動を制約される。そのため組織は、合併、提携、取締役の選任、政治活動、経営者の交代などを通じて依存を管理しようとする、とする理論。資源ベース理論Resource-Based View企業ごとの業績の差は、その企業が持つ資源の違いから生まれる。価値があり、希少で、真似しにくく、代わりがきかない資源が、持続的な競争優位の源泉になりうるとする理論。ルーティン・ダイナミクスRoutine Dynamics組織のルーティンを、決まった手順が機械的に繰り返されるものではなく、抽象的な「型」の側面と、特定の人がその場で行う「実行」の側面が互いを作り合う行為のパターンとして捉える見方。Feldman & Pentland (2003) は、実行のなかで生まれた変異が型に選択的に保持されることで、ルーティンが安定だけでなく内側からの変化も生むと論じた。意味形成(センスメイキング)Sensemaking人は、予想外の出来事に出会うと、手がかりを拾い、もっともらしい筋書きをつくり、それに基づいて動く。組織とは、この意味づけと行動が絶えず繰り返される過程だとする視点。シングル・ループ学習とダブル・ループ学習Single- and Double-Loop Learning組織の学習には、決められた目標や前提の範囲で行動を修正するシングル・ループ学習と、その目標や前提自体を問い直すダブル・ループ学習の二つがある、とする理論。社会的アイデンティティ理論Social Identity Theory人は自分を、部分的には、所属する集団のメンバーであることによって定義する。組織への同一化とは、組織と自分が一体である、あるいは組織に属しているという知覚であり、それが組織を支える行動や集団間の関係を左右する、とする理論。技術の二重性The Duality of Technology技術は、人がつくり、使い方を変えていく産物であると同時に、人の行動を方向づける枠組みでもある。技術と組織は一方的に影響するのではなく、人の使い方を通じて互いにつくり合う、という視点。取引費用理論Transaction Cost Economics取引には、計画を立て、状況の変化に合わせて調整し、約束どおりに実行されるかを見届けるためのコストがかかる。取引の性質に合わせて、このコストを節約できる統治の仕組み(市場か組織の内部か)を選ぶことで効率が実現する、とする理論。概念・現象 1
組織学習Organizational Learning組織が経験から推論を引き出し、それをルーティンや知識として蓄え、将来の行動を変えていく現象。個人の学習の総和ではなく、組織としての記憶や手順に残る点が特徴である。論文・書籍 1
Sensemaking in Organizations組織における意味形成人々が曖昧で不確かな状況に意味を与え、その意味にもとづいて行動する過程(センスメイキング)を体系的に論じた書籍。センスメイキングの7つの特性を示した。研究法 11
質的研究のアプローチ(流派)Approaches to Qualitative Research経営学の質的研究には、Eisenhardt 法、Gioia 法、グラウンデッド・セオリー、エスノグラフィー、プロセス研究などの流派がある。めざす理論、現実と知識の前提、データと分析の仕方で見分けられるが、境界は論者によって違う。事例研究からの理論構築(Eisenhardt 法)Building Theories from Case Study Research (Eisenhardt Method)いくつかの事例を理論上の理由で選び、一つずつ分析したうえで事例どうしを比べ、再現された関係から検証できる命題や理論を作る方法。Eisenhardt (1989) が8段階の手順として示し、2021年に本人がその核心を説明し直した。推論の型(演繹・帰納・アブダクション)Deduction, Induction, and Abduction研究で使う推論には、一般から個別を導く演繹、個別から一般を推す帰納、驚くべき観察からそれを説明する仮説を推すアブダクションがある。どれも確かさを保証せず、どの研究の型も三つを組み合わせて使う。論文は考えた順ではなく、再構成された順で書かれている。Gioia 法Gioia Methodology質的データから帰納的に新しい概念を見つけるための方法論。インフォーマントの言葉による1次の分析と研究者の理論の言葉による2次の分析を並べてデータ構造の図にまとめ、そこからデータに根ざしたモデルを組み立てる。グラウンデッド・セオリーGrounded Theoryデータの収集と分析を同時に進め、次に集めるデータをつくりつつある理論で選びながら、データから概念と理論を組み立てる方法。名乗る研究は多いが、何を指すかは論文ごとに違い、中核の手続きを守っているかの確認が要る。分析のレベル(生態学的誤謬)Levels of Analysis同じ二つの変数でも、個人ごとに見るか、地域や組織の平均で見るかで、関係の強さも向きも変わることがある。集団のデータから個人を語る誤りと、個人のデータだけで集団の影響を見落とす誤りの両方がある。理論が何についての主張か、データをどの単位で集め、分析したかを合わせる必要がある。組織エスノグラフィーOrganizational Ethnography研究者が組織の現場に長く身を置き、人々の言動とその意味づけを観察して書き上げる研究の進め方。現場の人が語る「体裁」と実際の行動をどう見分けるか、一つの現場から何が言えるかについて、方法の側が自ら限界を認めつつ答えている。科学哲学の立場Philosophical Positions in Management Research研究の手前には、対象は研究者と独立に存在するか、それをどう知りうるかという前提がある。実証主義、解釈的アプローチ、批判的実在論、構成主義の考え方を、それぞれを論じた論文にもとづいて紹介し、構成主義と批判的実在論のあいだの論争と、二つのアプローチを統合する試みを示す。プロセス研究Process Research物事がどのように、なぜ、時間とともに生まれ、発展し、終わるのかを問う研究である。変数の関係を問う分散研究と対になり、質的にも量的にも行われるが、時間を追う縦断的なデータが共通の条件になる。理論化と問いの立て方Theorizing and Research Questions理論はどう生まれるのか。科学哲学は長く、理論を考え出す「発見の文脈」より、理論を検証する「正当化の文脈」を重視してきた。理論化の手順、先行研究の隙間を埋める問いと前提を疑う問いの違い、文献そのものから理論をつくる方法を紹介し、理論化を重んじすぎることへの指摘も併せて示す。理論とは何かWhat Is Theory?「理論」という言葉は、変数の関係の命題、現象の説明、解釈、ものの見方など、いくつもの意味で使われている。何が理論でないかについては比較的合意があるが、理論化には説明・解釈・批判など複数の形がある。経営学は理論を求めすぎているという批判と、理論の価値を擁護する議論もある。OTHER FIELDS
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