イノベーション
研究分野「イノベーション」(Innovation)に分類される項目です(理論 20・概念 1・論点 1)。ひとつの理論が複数の分野に属することがあります。
理論・視点 20
理論・視点吸収能力
Absorptive Capacity
外部の新しい知識の価値に気づき、それを取り込み、自社の商業的な成果に結びつける能力は、それまでに蓄積してきた関連知識の量に左右される、とする理論。
問い外部の同じ知識に触れても、それを生かせる企業と生かせない企業があるのはなぜか。
アーキテクチュラル・イノベーション
Architectural Innovation
製品の部品そのものはほとんど変えず、部品どうしのつなぎ方(アーキテクチャ)を組み替える革新は、既存企業の知識や組織の仕組みを役に立たなくするため、見かけ以上に既存企業を苦しめる、とする理論。
問い小さな技術変化にすぎないように見える革新が、なぜ既存企業を失敗させるのか。
境界物(バウンダリー・オブジェクト)
Boundary Objects
立場や専門の異なる集団が、完全な合意なしに協働できるのは、それぞれが自分なりに解釈しながらも共通に使える「モノ」があるからだ、とする考え方。
問い異なる世界に住む人々は、意味の食い違いを抱えたまま、どのように協働するのか。
創造性の構成要素モデル
Componential Model of Creativity
創造的な成果は、領域に関する技能、創造性に関する技能、課題への動機づけの三つがそろったときに生まれ、とくに内発的な動機づけが創造性を高め、外からの制約はそれを損ないうる、とする理論。
問い創造的な成果は、どのような個人の要素と社会的な条件から生まれるのか。
コア・コンピタンス
Core Competence
企業の競争力の根っこは、個々の製品や事業ではなく、複数の事業にまたがって生かせる技術やスキルの束にある。企業はそれを軸に事業を組み立てるべきだ、とする理論。
問い多角化した企業の競争力は、どこから生まれるのか。
イノベーションの普及
Diffusion of Innovations
新しいアイデアや製品は、人々のあいだのコミュニケーションを通じて時間をかけて広がり、その速さはイノベーションの性質や採用する人の特徴によって決まる、とする理論。
問い新しいアイデアや製品は、どのようにして社会に広がっていくのか。
破壊的イノベーション
Disruptive Innovation
優良な大企業は、主要顧客の声に応えて製品を改良し続けるからこそ、最初は性能が劣り安価な新技術を軽視し、やがてその技術を持つ新興企業に市場を奪われる、とする理論。
問いよく経営されている業界のリーダー企業が、なぜ新しい技術の登場で地位を失うのか。
ダイナミック・ケイパビリティ
Dynamic Capabilities
環境が速く変わる中で競争優位を保つには、今ある資源を持つだけでは足りない。社内外の資源を組み合わせ直し、作り変える能力が重要だ、とする理論。
問い変化の激しい環境で、企業はどのようにして競争優位を保ち続けるのか。
ブリコラージュ
Entrepreneurial Bricolage
資源の乏しい起業家は、手元にあり、他の人が価値がないと見なすような資源を組み合わせて使い回すことで、新しい問題や機会に取り組み、「何もないところから何かをつくり出す」ことがある、とする理論。
問い資源が限られた環境で、なぜ一部の起業家は事業を生み出し、成長させることができるのか。
進化経済学(組織ルーティン)
Evolutionary Theory of the Firm (Routines)
企業の行動は、合理的な計算よりも、習慣化した「ルーティン」によって行われる。ルーティンは遺伝子のように受け継がれ、探索によって変わり、市場で選択される、とする理論。
問い企業の能力や行動パターンは、どのように保たれ、どのように変わっていくのか。
探索と活用(知の探索・知の深化)
Exploration and Exploitation
組織の学習には、新しい可能性を試す「探索」と、既にあるものを磨く「活用」がある。活用は確実で早く成果が出るため優先されやすいが、探索を怠ると長期的な適応力を失う、とする枠組み。
問い組織は、新しいことへの挑戦と、今の強みを磨くことの間で、資源をどう配分すべきか。
オープン・イノベーション
Open Innovation
企業は研究開発を自社内だけで完結させるのではなく、外部の知識を取り込み、自社で使わない技術を外部に出すことで、より多くの価値を生み出せる、という視点。
問い企業は、自社の外にある知識や技術を、どのように使って新しい価値を生み出すのか。
両利きの経営(組織の両利き)
Organizational Ambidexterity
既存事業を磨く力と、新しい事業を切り開く力を、一つの組織の中で同時に持つこと。そのために、異なる文化を持つ部門を分けつつ、トップが統合する、といった仕組みが必要だとする理論。
問い組織は、既存事業の効率化と新事業の開拓を、どうすれば両立できるのか。
知識創造理論(SECIモデル)
Organizational Knowledge Creation (SECI Model)
組織の新しい知識は、言葉にしにくい暗黙知と、言葉や数字で表せる形式知が、共同化・表出化・連結化・内面化の四つの過程を通じて変換され、個人から組織へと螺旋状に広がることで生まれる、とする理論。
問い組織は、どのようにして新しい知識を生み出すのか。
イノベーションからの利益獲得
Profiting from Innovation
新しい技術を最初に生み出した企業が、必ずしもその利益を得られるとは限らない。誰が利益を手にするかは、模倣のしやすさ、支配的な設計が定まっているか、製造や販売などの補完的資産を誰が持つかで決まる、とする理論。
問いなぜイノベーションを最初に生み出した企業が負け、後から来た模倣者や補完的資産の持ち主が利益を得ることがあるのか。
スモールワールドと創造性
Small Worlds and Creativity
協働のネットワークが、密なまとまりどうしを短い経路で結ぶ「スモールワールド」の性質を強めるほど、創造的な成果は高まるが、強くなりすぎると逆に下がる、とする理論。
問い創造的な仕事をする人々のつながり方は、生み出される作品の成功にどう影響するのか。
構造的空隙
Structural Holes
互いにつながっていない人々の間に位置する仲介者と、その位置から生じうる利点を考える。
問い異なる集団をつなぐ位置は、アイデアや成果にどう関わるのか。
技術的不連続とドミナント・デザイン
Technological Discontinuities and Dominant Design
技術は、飛躍的な変化(技術的不連続)が起きて複数の設計が競い合う混乱期を経て、一つの標準的な設計(ドミナント・デザイン)に落ち着き、その後は小さな改良が続く、という周期で進むとする理論。
問い技術はどのような周期で変化し、その変化は業界の企業にどんな影響を与えるのか。
テルティウス・イウンゲンス
Tertius Iungens
つながっていない人どうしを引き合わせたり、すでにつながっている人どうしの新しい協力を促したりする「結びつける第三者」の志向が、組織のイノベーションへの関与につながるとする理論。
問い組織の中で、新しいアイデアを実際のイノベーションとして実現させるのは、どのようなネットワークと行動なのか。
ユーザー・イノベーション
User Innovation
新しい製品やサービスの多くは、メーカーではなく、それを使う人(ユーザー)が自分の必要から生み出している。とくに市場の先端にいる「リードユーザー」は、将来の需要を先取りした発想の源になる、とする理論。
問いなぜメーカーではなく、製品を使うユーザーが新しいものを生み出すことがあるのか。
概念・現象 1
概念・現象仲介
Brokerage
互いに直接つながっていない人や集団の間に立ち、両者を結びつける位置や行為。情報や資源の流れを左右するため、ネットワーク研究の中心的な概念の一つになっている。
問い集団と集団の間に立つ人は、何を得て、何をしているのか。
論点 1
論点強い紐帯と弱い紐帯
Strong ties / Weak ties
弱いつながりと強いつながりのどちらが役に立つのか、という論点。答えは、求めるものが新しい情報か、複雑な知識か、信頼や支援か、によって変わることが分かってきている。
問いどのような情報や活動に、どのようなつながりが役立つのか。