理論・視点

スモールワールドと創造性Small Worlds and Creativity

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

協働のネットワークが、密なまとまりどうしを短い経路で結ぶ「スモールワールド」の性質を強めるほど、創造的な成果は高まるが、強くなりすぎると逆に下がる、とする理論。

目次
説明したい問い創造的な仕事をする人々のつながり方は、生み出される作品の成功にどう影響するのか。
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中核的な問い

新しい作品や発明は、異なる考えの組み合わせから生まれることが多い。そのためには、異なるグループの間でアイデアが行き来する必要がある。一方で、思い切った試みをするには、互いをよく知る仲間どうしの信頼も要る。この二つを両立させるつながり方はあるのか。

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主張とメカニズム

Uzzi & Spiro (2005) は、スモールワールドを「局所的には密に結びついたまとまり(クラスター)が多くありながら、まとまりどうしが少数のつながりで結ばれ、全体として短い経路でたどり着けるネットワーク」ととらえた。この型は Watts & Strogatz (1998) が数理モデルとして示したものである。Uzzi & Spiro は、Watts (1999) のモデルにならって、この性質の強さを、同じ規模の無作為なネットワークと比べたときの「まとまりの密さの比」を「経路の長さの比」で割った値(スモールワールド指標 Q)で測った。

彼らの主張によれば、Q が高まると、まとまりの間のつながりが増え、異なるまとまりで生まれた創造的な素材が行き来しやすくなる。同時に、以前に一緒に仕事をした人や、その知り合いと組む機会が増え、信頼にもとづく思い切った協働がしやすくなる。こうして創造的な成果は高まる。

しかし、Q が高くなりすぎると、どのまとまりも同じ素材や考え方を共有するようになり、アイデアが均質になる。また、以前の協働者や共通の知り合いとのつながりが増えすぎると、ありふれた情報ばかりがやりとりされ、慣習的な考えや様式から抜け出しにくくなる。新しい人も加わりにくくなる。そのため、スモールワールドの強さと成果の関係は、途中までは上がり、ある点を超えると下がる逆U字型になる。Uzzi & Spiro は、ブロードウェイ・ミュージカルの制作に携わった人々(作曲家、作詞家、演出家、プロデューサーなど)の長期にわたる協働ネットワークを用いて、この関係を、作品の興行的な成功と批評家の評価の両面から検討した。

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身近な例

たとえば、ある地域で活動する複数の劇団を考えよう。劇団の間で役者やスタッフがまったく行き来しなければ、それぞれの劇団の工夫はほかに伝わらない。ときどき客演や合同公演があれば、別の劇団の演出法を取り入れ、なじみの仲間と安心して新しい試みができる。しかし、誰もがあらゆる劇団に出入りするようになると、どの劇団の舞台も似た作りになり、かえって個性が薄れてしまうかもしれない。

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主要概念

スモールワールド・ネットワーク(small world network)
局所的には密なまとまりをもちながら、まとまりどうしが少数のつながりで結ばれ、全体として短い経路でつながっているネットワーク。
クラスタリング係数(clustering coefficient)
ある人の知り合いどうしも互いに知り合いである割合。まとまりの密さを表す。
平均経路長(path length)
ネットワーク上の二人を結ぶのに必要な、つながりの数の平均。
スモールワールド指標(small world Q)
無作為なネットワークと比べたクラスタリング係数の比を、平均経路長の比で割った値。
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代表的な展開研究

  • Schilling, M. A., & Phelps, C. C. (2007). Interfirm collaboration networks: The impact of large-scale network structure on firm innovation. Management Science. DOI ↗企業間の提携ネットワークを調べ、まとまりの密さと、多くの企業に短い経路で届く広がりの両方をもつネットワークに属する企業ほど、イノベーションの成果が大きいことを示した。
  • Fleming, L., King, C., & Juda, A. I. (2007). Small worlds and regional innovation. Organization Science. DOI ↗特許の共同発明者のネットワークを地域ごとに調べ、経路の短さや連結したネットワークの大きさは発明の増加と関連したが、スモールワールド構造そのものが地域の発明の生産性を高めるという証拠は得られなかったと報告した。
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批判と境界条件

原典の分析は、1945年から1989年までにブロードウェイで制作された新作ミュージカル474作品と、それに携わった2,092人の創作者という、一つの創造的な産業を対象にしている (Uzzi & Spiro, 2005, p. 465)。著者ら自身、ほかの文脈へ広げるにはさらに研究が必要だと述べ、オフ・ブロードウェイや実験的な演劇でも同じ型が見られるかを今後の問いとして挙げている (p. 494)。また、彼らの理論は、チームで作品をつくるときに生じる二部グラフ(所属関係)のネットワークに特有のものとして組み立てられており、そうでないネットワークでどう変わるかは検討していない (p. 493)。

逆U字の右側のデータは少ない。成功が最も高くなる点より右にある観測は、芸術的な成功のモデルで約20%、興行的な成功のモデルで約15%である (p. 491)。著者らは、この割合は無視できるほど小さくないと応じ、Q を直線の項だけで入れると有意にならず、右側を除けば「スモールワールドは強いほどよい」と誤って結論しかねないと述べる (p. 491)。さらに、Q が高かった1919〜1930年には失敗作の割合が高かったことを示したが、これは状況証拠にとどまると認めている (pp. 491–492)。

Fleming, King & Juda (2007) は、1975年から2002年までの米国特許の共同発明者のネットワークを、米国の337の都市圏ごとに調べた (p. 943)。クラスタリングと経路の短さの交互作用(スモールワールド構造)は、翌年の特許数に対して、どのモデルでも有意な効果を示さなかった (p. 949)。彼らは、スモールワールド構造が地域の発明の生産性を高めるという証拠は見いだせなかったと報告している (p. 938)。一方、経路が短いことと、つながった最大のまとまりが大きいことは、特許の増加と関連していた (p. 938)。ただし経路の短さの効果は小さく、特許数の代わりに重みづけた被引用数で測ると有意でなくなった (p. 949)。著者ら自身、効果がないという結果から強い主張をすることにはためらいを示し、結果は主に記述的なものとみなすべきだとしている (pp. 949, 951)。

Fleming らは、ブロードウェイ作品への同時代の評価と、翌年以降の特許数とは異なる領域の成果であり、結果を直接比べるのは難しいと述べる (p. 949)。スモールワールドの効果がどの領域や分析の単位で現れるかについて、Uzzi & Spiro (2005, p. 494) はほかの文脈での研究を、Fleming ら (2007, p. 949) は個人と地域の両方の水準で同時に進める研究を、今後の課題として挙げている。

研究上の位置づけ

原典Uzzi, B., & Spiro, J. (2005)
Collaboration and creativity: The small world problem
分類理論
地図の区画ネットワーク
分析単位チーム · コミュニティ
理論系譜ネットワーク · 社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。