Architectural Innovationアーキテクチュラル・イノベーション
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一言で言うと製品の部品そのものはほとんど変えず、部品どうしのつなぎ方(アーキテクチャ)を組み替える革新は、既存企業の知識や組織の仕組みを役に立たなくするため、見かけ以上に既存企業を苦しめる、とする理論。
Architectural innovation: The reconfiguration of existing product technologies and the failure of established firms
中核的な問い
イノベーションは、よく「漸進的(小さな改良)」か「急進的(まったく新しい技術)」かで分けられてきた。しかし、既存企業は小さな変化に見える革新でつまずくことがある。この二分法では何が見落とされているのか。
主張とメカニズム
Henderson & Clark (1990) は、製品を作るのに必要な知識を二つに分けた。部品知識は、個々の部品(コア・コンセプト)についての知識である。アーキテクチャ知識は、部品をどう組み合わせ、どうつなぐかについての知識である。この二つの軸で、イノベーションを漸進的、モジュラー(部品だけが変わる)、アーキテクチュラル(つなぎ方だけが変わる)、急進的の四つに整理した。
アーキテクチャ知識は、部署の分け方、情報の流れ、技術者の問題の見方といった組織の仕組みの中に、目に見えない形で埋め込まれている。そのため、つなぎ方が変わっても既存企業はその変化に気づきにくく、気づいても組織を作り直すのに時間がかかる。部品の技術は分かっているので「知っている技術だ」と過小評価しやすいことも、失敗の原因になる。
身近な例
同じ部品を使っていても、据え置き型の機器を持ち運べる小型機器に作り替えると、部品どうしの配置、熱の逃がし方、電池との関係などが大きく変わる。部品に詳しい大手が、小型機器の開発では新しい設計に慣れた後発企業に後れを取ることがあるのは、この理論で説明できる。
主要概念
- 部品知識(component knowledge)
- 製品を構成する個々の部品や、その中心となる設計の考え方についての知識。
- アーキテクチャ知識(architectural knowledge)
- 部品をどのように組み合わせ、連結して一つの製品にするかについての知識。
- モジュラー・イノベーション(modular innovation)
- 部品の中心的な設計は変えるが、部品どうしのつなぎ方は変えない革新。
- 情報フィルター(information filter)
- 組織が長年のうちに身につけた、重要な情報を選び出し、それ以外を無視する習慣。
代表的な展開研究
- Sanchez, R., & Mahoney, J. T. (1996). Modularity, flexibility, and knowledge management in product and organization design. Strategic Management Journal. DOI ↗部品間の接続ルールを標準化したモジュール型の製品設計が、組織の設計や知識の管理にも影響することを論じた。
- Tripsas, M., & Gavetti, G. (2000). Capabilities, cognition, and inertia: Evidence from digital imaging. Strategic Management Journal. DOI ↗写真フィルム企業のデジタル化への対応を分析し、技術能力だけでなく経営者の認識が変化への適応を妨げることを示した。
批判と境界条件
どこまでが部品でどこからがつなぎ方かは、見る人や分析の細かさによって変わり、事前に分類するのは難しい。また、組織の仕組みを意図的に作り直して適応する既存企業もあり、失敗が避けられないわけではない。製品の物理的な構造を中心にした議論なので、ソフトウェアやサービスへの当てはめには工夫が要る。
出典
- 原典Henderson, R. M., & Clark, K. B. (1990). Architectural innovation: The reconfiguration of existing product technologies and the failure of established firms. Administrative Science Quarterly. DOI ↗
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