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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

成功した会社ほど、変われないのはなぜ?

一時代を築いた会社が、市場や技術の変化についていけずに失速する。変化に気づいていないわけではないのに、これまでのやり方を変えられない。成功そのものが次の変化を妨げるという逆説は、経営学のいくつもの理論で扱われてきました。

先に答えを言うと

成功を支えた能力や知識は、組織の仕組みや価値観に深く埋め込まれ、環境が変わると足かせにもなります。成功した企業ほど、環境が大きく変わった後も同じ戦略を続けやすく、そうした固執が業績の悪化と結びついていたという研究もあります。

この疑問を説明する 2 つの理論

01

コア・コンピタンスCore Competence · Prahalad & Hamel 1990

企業の競争力の根っこは、複数の事業にまたがって生かせる技術やスキルの束にある、とする理論です。これに対し Leonard-Barton (1992) は、こうした中核的な能力は新製品開発を助けると同時に妨げると論じ、その裏面をコア・リジディティ(中核的硬直性)と呼びました。過去に会社を支えてきた技能、技術システム、管理システム、価値観が、新しいプロジェクトには合わない知識として働くのです。四つのうち最も変えにくいのは価値観だとされています。

研究の根拠と限界

研究の根拠5社・20件の新製品開発プロジェクトの事例(Leonard-Barton, 1992)。コア・コンピタンスの項目を参照。

因果と言うには足りないこと事例は例示のためのデータとされ、各社の中核能力は企業側の合意による判断で選ばれている(コア・コンピタンスの項目を参照)。

コア・コンピタンスの解説を読む ↗
02

アーキテクチュラル・イノベーションArchitectural Innovation · Henderson & Clark 1990

部品はほとんど変えず、部品どうしのつなぎ方を組み替える革新は、既存企業が持つつなぎ方の知識を役に立たなくする、とする理論です。つなぎ方の知識は、部署間の連絡の経路や、重要な情報を拾うフィルター、技術者の問題解決の定石といった組織の仕組みに目に見えない形で埋め込まれているため、変化に気づきにくく、気づいても直すのに時間がかかります。ポラロイド社の事例では、デジタル画像の技術を築いていたのに、フィルムで利益を上げるビジネスモデルへの経営陣の信念が足かせになりました(Tripsas & Gavetti, 2000)。

注意別の説明もある。ハードディスクの小型化を調べた Christensen & Rosenbloom (1995) は、既存企業の遅れは技術や組織の能力の差ではなく、小型化を求めていなかった主要顧客に応えていたことによると論じている(アーキテクチュラル・イノベーションの項目を参照)。

研究の根拠と限界

研究の根拠半導体露光装置の業界の事例(Henderson & Clark, 1990)と、ポラロイド社の事例(Tripsas & Gavetti, 2000)。アーキテクチュラル・イノベーションの項目を参照。

アーキテクチュラル・イノベーションの解説を読む ↗

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組織的刻印Organizational Imprinting · Stinchcombe 1965

組織は創業期のような影響を受けやすい時期に、その時の環境を映す特徴を身につけ、環境が大きく変わった後もそれを持ち続ける、とする考え方です。個人のレベルでも、入社時と現在の環境が近い人ほど成果が高いという研究があります(Tilcsik, 2014)。成功した時代の環境で身についた特徴が、環境の変化の後も残ることを説明する手がかりになります。

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 実験で確認

    環境が大きく変わった後も、成功した戦略を続けていないか

    Audia, Locke & Smith (2000) は、規制緩和という環境の急変の前後で、米国の航空会社25社とトラック輸送会社125社を調べました。緩和の前に業績の良かった会社ほど、緩和の後も戦略を変えずに続けており、そうした戦略の固執は業績の悪化と結びついていました(p. 844)。ただしトラック輸送では、固執と業績悪化の関連は境界的な有意水準にとどまりました(p. 844)。学生168人に経営シミュレーションを行わせた実験でも、成功の度合いを高く操作された人ほど、環境が変わった後も同じ戦略を続け、業績を落としていました(pp. 847–848)。著者らはこれを、組織が目指す成功そのものが将来の衰退の種をまくという逆説と呼んでいます(p. 849)。

    • Audia, Locke & Smith (2000). The paradox of success: An archival and a laboratory study of strategic persistence following radical environmental change. Academy of Management Journal. DOI ↗
  2. 調査(相関)

    成功の後、批判する人の意見を聞いているか

    上の実験で、成功が固執につながった経路を、途中の心理を測って分析すると、経路は一つではありませんでした(成功の度合いは操作しましたが、途中の心理は測っただけです)。成功した人ほど満足し、目標を高く掲げ、自分の能力と今の戦略への確信を強め、批判的な相手からの情報を求めなくなっていました(Audia et al., 2000, pp. 848–849)。集めた情報の量ではなく、誰から集めたかが違っていたのです(pp. 849–850)。著者らは、批判的な人の意見を求めること、ただしそれに必ず従う必要はなく妥当な批判を見分けること、自社が不十分な面で新しい目標を立てることを勧めています(pp. 850–851)。一方、実験の対象は大学生で、経営者での追試が必要だとも述べています(p. 851)。

    • Audia, Locke & Smith (2000). The paradox of success: An archival and a laboratory study of strategic persistence following radical environmental change. Academy of Management Journal. DOI ↗
  3. 理論からの観点

    変わらないことは、いつも悪いことか

    Audia et al. (2000) は、戦略を続けることは安定した環境では通常は有益で、害になるのは環境が根本的に変わった後だとしています(pp. 838–839)。また、成功した会社がみな変われなくなるわけではなく、経営者の技能や交代、取締役会の監視が歯止めになりうると述べています(p. 850)。問題は変わらないことそのものではなく、環境が変わったのに同じやり方を続けることです。

    • Audia, Locke & Smith (2000). The paradox of success: An archival and a laboratory study of strategic persistence following radical environmental change. Academy of Management Journal. DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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