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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

決まった手順が、いつの間にか変わっていくのはなぜ?

マニュアルは変わっていないのに、実際のやり方は人によって少しずつ違い、気づけば別物になっている。逆に、新しいシステムや規則を入れても、現場のやり方は思ったほど変わらない。組織の「ルーティン」(決まった手順)の研究は、この両方を説明しようとしてきました。

先に答えを言うと

手順は、書かれた決まりだけでなく、人がその都度行う実際の行為からできています。行為は毎回少しずつ違い、そのうち受け入れられたものが「いつものやり方」として残るため、手順は内側から変わっていきます。

この疑問を説明する 1 つの理論

01

ルーティン・ダイナミクスRoutine Dynamics · Feldman & Pentland 2003

ルーティン(決まった手順)を、複数の人が行う、繰り返し現れる、それと分かる、相互に依存した行為のパターンと捉える視点です(Feldman & Pentland, 2003, p. 95)。ルーティンには、「原則としてのルーティン」である理想や図式の側面と、特定の人が特定の時と場所で行う「実践としてのルーティン」である実際の行為の側面があるとされます(p. 101)。手順をすべて書き尽くすことはできず、規則は行為の手がかりにはなっても行為を決めきれません(p. 101)。実際の行為には即興が含まれ、ばらつきや例外が生まれ続けます(p. 102)。そのうち人々が「うちのやり方」として語るようになったものが残り、手順が変わっていきます(pp. 112–113)。

注意手順が変わることは、良い方向への適応とは限らない。Feldman & Pentland (2003, p. 112) は、ルーティンが必ず環境に適応的だと言っているわけではなく、新しい行為のパターンを生み出して残す力が内側にある、と主張しているだけだとしている。

研究の根拠と限界

研究の根拠大学の学生寮の部署を約4年、約1,750時間観察したエスノグラフィー(Feldman, 2000)と、それをもとにした理論(Feldman & Pentland, 2003)、コンピューター・シミュレーション(Pentland et al., 2012)。

因果と言うには足りないことFeldman (2000, pp. 626–627) が調べたのは、年に一度行われ、裁量のある専門職が担い、緩やかに結びついた組織の中の手順だった。もっと頻繁に行われる手順や、裁量の小さい手順では違うかもしれないと述べている。

ルーティン・ダイナミクスの解説を読む ↗

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 理論からの観点

    手順の変化は、どんな不満や理想から始まったか

    Feldman (2000) が観察した学生寮の部署では、手順がたびたび変わっていました。たとえば退寮時の部屋の損傷の確認は、学生が去った後に行われることが多く、親が罰金をあっさり払ってしまうため、寮の責任者たちは学生を教育する機会を失っていると感じていました。ある責任者が入寮時の点検表を考え、4年のうちに全員が使うようになりました(pp. 616–617)。Feldman は、手順の結果が意図に届かない、望まない結果を生む、新しい可能性を開く、理想に届かない、といったとき、人は元に戻す、可能性を広げる、理想に近づこうとするのいずれかで応じると整理しました。後の二つは、仕事の基準そのものを変えるため、変化が続きやすいといいます(p. 620)。手順が変わるのは、怠けや勝手な判断のせいだけではなく、よりよくしようとする努力の結果でもあるということです。

    • Feldman (2000). Organizational routines as a source of continuous change. Organization Science. DOI ↗
  2. 理論からの観点

    マニュアルやシステムを変えれば、やり方も変わると思っていないか

    Feldman & Pentland (2003, p. 103) は、最もよくある誤りは、原則としての手順を、実践としての手順と取り違えることで、一方を変えても他方が変わるとは限らないと述べています。Pentland & Feldman (2008) が紹介する大学の事例では、二つの研修プログラムの事務を一つのソフトウェアにまとめようとし、技術的な問題はなかったのに、一方のプログラムはソフトを使わずにデータを別のパソコンに移し、もう一方も機能の一部しか使いませんでした(p. 239)。著者らは、決まりやシステムといった道具を設計しても、行為のパターンを設計したことにはならないと論じ、担い手どうしで一緒に練習する、仕事の中で利用者自身が判断できる余地を設計する、本当に大事な点だけを固める、導入後も関わり続ける、といった提案をしています(pp. 247–248)。ただし、この事例で使われなかった理由ははっきり分からないとも述べています(pp. 239–240)。

    • Feldman & Pentland (2003). Reconceptualizing organizational routines as a source of flexibility and change. Administrative Science Quarterly. DOI ↗
    • Pentland & Feldman (2008). Designing routines: On the folly of designing artifacts, while hoping for patterns of action. Information and Organization. DOI ↗
  3. 理論からの観点

    同じ手順について、人によって理解が違っていないか

    Feldman & Pentland (2003, p. 101) によれば、「原則としての手順」は一つにまとまったものではなく、立場によって見え方が違います。Feldman (2000) の学生寮の事例では、採用の手順を一本化して均質な人材をそろえたことを、本部は成果と見ましたが、寮の責任者たちは多様な人材がいなくなったと受け止め、正式な手順を迂回し始めました(pp. 618–622)。手順の変化の背後に、何のための手順かについての理解の違いがあることもあります。

    • Feldman & Pentland (2003). Reconceptualizing organizational routines as a source of flexibility and change. Administrative Science Quarterly. DOI ↗
    • Feldman (2000). Organizational routines as a source of continuous change. Organization Science. DOI ↗
  4. 理論からの観点

    少しのばらつきがあると、手順は固まらないのか

    Pentland et al. (2012) のシミュレーションでは、過去の行為の並びが記憶されるだけで、手順は特定の形に固まっていきました。しかし、わずかでもランダムなばらつきがあると、手順は固まりきらずに少しずつ変わり続けました(pp. 1495–1496)。著者らは、手順を固める仕組みと、手順を変え続ける仕組みは同じものでありうるとし、変化は外から押しつけなければ起きないという見方に疑問を呈しています(p. 1499)。ただし、シミュレーションの設定は現象を示すために選んだもので、実際の職場での値はまだ測られていません(p. 1504)。

    • Pentland, Feldman, Becker & Liu (2012). Dynamics of organizational routines: A generative model. Journal of Management Studies. DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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