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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

上司が熱く語っても、部下がついてこないのはなぜ?

上司がビジョンを熱く語り、変革を呼びかける。けれど部下はどこか冷めていて、職場は思ったほど動かない。リーダーの語る言葉や姿勢が人を動かすのかは、変革型・カリスマ型リーダーシップの研究で最もよく調べられてきたテーマの一つです。

先に答えを言うと

ビジョンを語る型のリーダーシップは、部下の上司への満足とは強く関連しますが、業績との関連はずっと弱く、測り方にも根本的な批判があります。期待をはっきりさせ、約束どおり報いるリーダーシップも、全体としては同じくらい成果と関連しています。

この疑問を説明する 2 つの理論

01

変革型リーダーシップTransformational Leadership · Bass 1985

目指すことの意味を語り、一人ひとりの成長に目を配り、新しい見方で考えるよう促すことで、メンバーが期待以上に力を尽くすようになる、とする理論です。87研究のメタ分析では、変革型リーダーシップは、部下の上司への満足と強く関連していました(ρ = .71)。一方、集団や組織の業績との関連は ρ = .26、リーダー自身の職務遂行との関連は ρ = .27 と、ずっと弱いものでした(Judge & Piccolo, 2004, p. 760)。著者らはこの差について、同じ部下が両方を答えていることによる水増しに加えて、変革型リーダーシップは業績を高めることより、部下を満足させることに効いているのかもしれないと述べています(p. 760)。

注意van Knippenberg & Sitkin (2013) は、この研究領域そのものに根本的な問題があると批判した。概念がその効果によって定義されているため、定義上「効果がある」ことになってしまう、代表的な尺度(MLQ)は理論を測れていない、などである(pp. 2, 14, 42)。彼らは、この概念自体を研究から外し、ビジョンの伝え方のような、はっきり定義できる要素を個別に調べるべきだとしている(pp. 45–46)。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心87研究・626の相関のメタ分析(Judge & Piccolo, 2004)。時間を追った研究では相関は ρ = .27、リーダーと成果を別々の人が評価した研究では ρ = .28 で、どちらも同じ時点・同じ人の評価による研究(ρ = .50、.55)の約半分だった(p. 761)。

因果と言うには足りないこと変革型リーダーシップと、期待を示して報いる条件つき報酬の相関は ρ = .80 と高く、同じものを別の尺度で測った場合と同じくらいだと著者自身が述べている(Judge & Piccolo, 2004, pp. 762–763)。

変革型リーダーシップの解説を読む ↗
02

パス・ゴール理論Path-Goal Theory of Leader Effectiveness · House 1971

リーダーの役割は、メンバーが目標にたどり着く道筋をはっきりさせ、障害を取り除くことにある、とする理論です。House (1996) はこの理論を見直す中で、価値観に訴えるリーダーシップ(ビジョンを語り、情熱や自己犠牲を示す)が効くのは、ビジョンが部下の深く内面化した価値観と合っているとき、並外れた努力が求められるとき、危機や脅威があるときなどだと提案しました(p. 345)。逆に、決まった実務的な目標を着実にこなす仕事では、こうしたリーダーシップは必要でなく、逆効果にさえなりうるとしています(p. 344)。

研究の根拠と限界

研究の根拠House (1996) が見直した理論は提案で、検証の結果は示されていない。元の理論の研究をまとめた120研究のメタ分析(Wofford & Liska, 1993)では、どの状況でどの振る舞いが効くかという予測は、一貫しては支持されなかった(p. 873)。

因果と言うには足りないことWofford & Liska (1993, p. 872) は、多くの研究で部下が上司の振る舞いと成果の両方を評価しており、相関が水増しされていて結論は疑わしいと述べている。

パス・ゴール理論の解説を読む ↗

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 調査(相関)

    期待をはっきり示し、約束どおりに報いているか

    Judge & Piccolo (2004) のメタ分析では、期待をはっきりさせ、達成したら約束どおり報いる条件つき報酬のリーダーシップも、全体として変革型とほぼ同じくらい成果と関連していました(ρ = .39、変革型は ρ = .44)(p. 759)。部下の職務満足(ρ = .64)とリーダー自身の職務遂行(ρ = .45)では、変革型より強く関連していました(p. 760)。ただし、時間を追った研究や、別々の人が評価した研究に限ると、条件つき報酬の相関は大きく下がり(ρ = .13、.15)、変革型(ρ = .27、.28)を下回りました(p. 761)。著者らは、厳密な設計の研究では変革型のほうがかなり妥当性が高いとまとめています(p. 763)。著者らは、条件つき報酬は報いる資源があって初めて成り立つとも述べています(p. 763)。語る前に、約束したことを果たせる状態にあるかを確かめる必要があるということです。

    • Judge & Piccolo (2004). Transformational and transactional leadership: A meta-analytic test of their relative validity. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
  2. 理論からの観点

    語っているビジョンは、部下が大事にしている価値観と合っているか

    House (1996, p. 344) は、患者の治療を最優先する医師たちは、それと相いれないコスト削減のビジョンを経営者が語っても抵抗するだろう、という例を挙げています。van Knippenberg & Sitkin (2013) も、ビジョンの伝え方の研究では、ビジョンの中身や語り方が聞き手に合うかによって効き方が変わったという研究(Stam et al., 2010)を紹介し、既存の尺度はおおむねビジョンの中身を問わないと批判しています(pp. 46–47)。熱量より先に、何を語っているかが問われることになります。

    • House (1996). Path-goal theory of leadership: Lessons, legacy, and a reformulated theory. The Leadership Quarterly. DOI ↗
    • van Knippenberg & Sitkin (2013). A critical assessment of charismatic—transformational leadership research: Back to the drawing board? Academy of Management Annals. DOI ↗
  3. 調査(相関)

    上司への「好感」と、職場が動くことを混同していないか

    van Knippenberg & Sitkin (2013, p. 44) は、変革型リーダーシップの尺度への部下の回答は、上司をどれだけ好きかを強く反映しているという研究を紹介しています。Judge & Piccolo (2004, p. 761) でも、同じ部下がリーダーシップと成果の両方を答えた研究では相関が ρ = .55 だったのに対し、別々の人が答えた研究では ρ = .28 にとどまりました。「あの上司の話はいい」と感じられていても、それが仕事の成果につながっているとは限りません。

    • van Knippenberg & Sitkin (2013). A critical assessment of charismatic—transformational leadership research: Back to the drawing board? Academy of Management Annals. DOI ↗
    • Judge & Piccolo (2004). Transformational and transactional leadership: A meta-analytic test of their relative validity. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
  4. 調査(相関)

    放っておくよりは、語るほうがよいのか

    Judge & Piccolo (2004) のメタ分析では、判断や関与を避ける放任型のリーダーシップは、上司への満足(ρ = −.58)やリーダーの有効性の評価(ρ = −.54)と強い負の関連がありました(p. 760)。著者らは、リーダーシップがないことは、ほかの形のリーダーシップがあることとほぼ同じくらい重要だと述べています(p. 765)。語り方に問題があっても、関わらないことの害のほうが大きい可能性があります。

    • Judge & Piccolo (2004). Transformational and transactional leadership: A meta-analytic test of their relative validity. Journal of Applied Psychology. DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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