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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

いいアイデアなのに、社内で通らないのはなぜ?

会社は「新しい発想を」と言うのに、いざ新しい案を出すと、前例がない、リスクが高いと言われて通らない。創造的なアイデアを生むことと、それが組織で採用され実行されることのあいだには、研究でも大きな溝があるとされています。

先に答えを言うと

アイデアを生むことと、支持を集めて実行することには、別の条件が要ります。生む段階で役立つ人間関係は、通す段階では役立たないことがあります。また、不確かさを避けたい状況では、人は創造的な案を低く評価しやすいという実験結果もあります。

この疑問を説明する 2 つの理論

01

アイデア・ジャーニーIdea Journey · Perry-Smith & Mannucci 2017

アイデアは、生成、精緻化、支持の獲得、実装という段階を通り、段階ごとに必要なものが変わる、とする理論です。生む段階では多様な弱いつながりが発想を広げますが、支持を集める段階では影響力と正統性が必要になります。ある段階で役立った人間関係が、次の段階では役に立たないことがある、というのがこの理論の見方です。216人の従業員を調べた Baer (2012) では、創造的なアイデアほど実装されやすいわけではなく、創造性と実装の負の関係は、実装への意欲とネットワーキングの力(または支援してくれる強いつながり)がともに乏しい人でだけ見られました。

研究の根拠と限界

研究の根拠理論は Perry-Smith & Mannucci (2017)。従業員と上司の評価を使った調査研究(Baer, 2012)。理論を検証した実験(Mannucci & Perry-Smith, 2022)は、理論の一部を支持するにとどまる(アイデア・ジャーニーの項目を参照)。

因果と言うには足りないことPerry-Smith & Mannucci (2017) は、創造者がジャーニー全体を通じてアイデアの主な推進者であり続けると単純化して仮定している。案がそもそも悪い場合もあると述べている(アイデア・ジャーニーの項目を参照)。

アイデア・ジャーニーの解説を読む ↗
02

構造的空隙Structural Holes · Burt 1992

つながっていない集団の間の隙間をまたぐ位置にいる人は、多様な情報に触れ、良いアイデアを出しやすい、とする理論です。ただし Burt (2004) の調査では、そうした管理職のアイデアは身近な同僚とばかり話し合われ、組織の分断はむしろ保たれていました。発明を調べた Fleming, Mingo & Chen (2007) も、仲介の位置は新しい組み合わせを生むのには役立つが、その発明が他の人に使われることには必ずしもつながらないことを示しています。良いアイデアを生む位置と、それを広める位置は違うのです。

研究の根拠と限界

研究の根拠大手電子機器メーカーの管理職の調査(Burt, 2004)と、発明者のネットワークの研究(Fleming et al., 2007)。構造的空隙の項目を参照。

因果と言うには足りないことBurt (2004) 自身、仲介と成果の関係は因果とはいえないと述べている(構造的空隙の項目を参照)。

構造的空隙の解説を読む ↗

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 実験で確認

    判断する側が「正解を一つに決めたい」状況にいないか

    Mueller, Melwani & Goncalo (2012) の実験では、不確かさを強く感じる条件に置かれた人は、口では創造性を良いものと答えながら、無意識の連想では、実用性に比べて創造性を「嘔吐」や「苦痛」といった悪い言葉と結びつけやすくなっていました(pp. 14–16)。「どんな問題にも正解は一つしかない」という立場で文章を書かせた群は、同じアイデア(生地の厚さを調整して足を冷やし、靴ずれを減らすナノテクノロジーのランニングシューズ)を、それほど創造的でないと評価しました(pp. 15–16)。著者らは、唯一の「最善で正確な」案を選ぶよう求められる審査役は、自覚のないまま創造性を嫌っているかもしれないと述べています(p. 17)。ただし、対象は大学生など少人数(73人と140人)で、評価したのは一つのアイデアの創造性であり、実際に採用するかどうかを調べたわけではありません。

    • Mueller, Melwani & Goncalo (2012). The bias against creativity: Why people desire but reject creative ideas. Psychological Science. DOI ↗
  2. 調査(相関)

    アイデアを推してくれる人とのつながりがあるか

    Baer (2012) では、創造的なアイデアが実装されにくいのは、本人の実装への意欲が低く、しかもネットワーキングの力や支援してくれる強いつながりが乏しい場合でした。意欲が高ければネットワーキングの力の上乗せは小さく、支援のつながりが十分あれば意欲の上乗せは小さくなっていました(アイデア・ジャーニーの項目を参照)。案の良し悪しとは別に、誰がその案を推してくれるかを考えておく必要があるということです。

    • Baer (2012). Putting creativity to work: The implementation of creative ideas in organizations. Academy of Management Journal. DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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