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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

同じ仕事でも、熱中できる人とできない人がいるのはなぜ?

同じ部署で同じような仕事をしているのに、時間を忘れて打ち込む人もいれば、ずっと気持ちが入らない人もいる。仕事に自分の力を注ぎ込んでいる状態は、組織行動論では「エンゲイジメント」と呼ばれ、その違いがどこから来るのかが調べられてきました。

先に答えを言うと

熱中の度合いは、本人の性格とも、仕事の中身とも関連しています。研究では、仕事に多様さや意味があるほど熱中しやすく、「仕事そのものが許す程度までしか熱中できない」とも言われます。ただし多くは一時点の調査で、因果の向きははっきりしていません。

この疑問を説明する 3 つの理論

01

ワーク・エンゲイジメントWork Engagement / Personal Engagement · Kahn 1990

人は仕事に、自分の身体・認知・感情をどれだけ注ぎ込むかを、その時々に調整している、とする考え方です。91研究のメタ分析では、熱中の度合いは、仕事の特徴とも本人の特徴とも関連していました。仕事の側では技能の多様性(ρ = .53)やタスクの重要性(ρ = .51)、自律性(ρ = .39)、本人の側では誠実性(ρ = .42)、ポジティブな感情の持ちやすさ(ρ = .43)、自ら動く性格(ρ = .44)です。熱中できるかどうかは、人の違いと仕事の違いの両方に関わっていることになります。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心91研究・770の効果量のメタ分析(Christian, Garza & Slaughter, 2011)。個人レベルの研究だけを集めたもの。

因果と言うには足りないことほとんどの研究は同じ時点で測っており、自己報告のため相関が水増しされた可能性があると著者自身が述べている(Christian et al., 2011, pp. 124–125)。データが横断的なため、因果の順序を入れ替えたモデルは検証していない(p. 121)。

ワーク・エンゲイジメントの解説を読む ↗
02

職務特性モデルJob Characteristics Model · Hackman & Oldham 1976

仕事に技能の多様性、タスクの完結性、タスクの重要性、自律性、フィードバックがそなわると、働く人は仕事の意味や責任を実感し、内側から動機づけられる、とする理論です。上のメタ分析で複数の要因を同時に入れたモデルでは、熱中と関連が残ったのは主に技能の多様性とタスクの重要性で、自律性やフィードバックからの経路はほぼゼロでした(Christian et al., 2011, pp. 121–122)。著者らはこれを、仕事に意味を感じられるかが熱中の鍵になることと結びつけています(p. 122)。著者らの言葉では、従業員は「仕事そのものが許す程度までしか熱中できない」(p. 124)のです。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心Christian et al. (2011) のメタ分析による経路モデル。著者ら自身、暫定的な支持と位置づけている(p. 121)。

職務特性モデルの解説を読む ↗
03

仕事の要求度-資源モデルJob Demands-Resources Model · Demerouti et al. 2001

仕事の特徴を「要求度」と「資源」の二つに分け、資源が足りないと仕事から気持ちが離れる、とする理論です。上のメタ分析でも、同僚や上司からの支援が多い人ほど熱中しており(ρ = .32)、身体的な負担(ρ = −.23)や作業環境の悪さ(ρ = −.22)は熱中と負の関連がありました。同じ仕事に見えても、支援や環境という資源の違いが、熱中の違いとして現れている可能性があります。

注意このモデルを使った研究の多くは相関を示すにとどまるとされる。時間を追った研究だけを集めたメタ分析では、仕事の特徴とウェルビーイングが互いに影響し合うとするモデルが最もよく当てはまった(Lesener, Gusy & Wolter, 2019。仕事の要求度-資源モデルの項目を参照)。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心Christian et al. (2011) のメタ分析。身体的な負担は2研究だけに基づく。

仕事の要求度-資源モデルの解説を読む ↗

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 調査(相関)

    自分の仕事に、多様さや意味を感じられる余地があるか

    上のメタ分析では、熱中と最も強く関連していた仕事の特徴は、さまざまな技能を使うこと(技能の多様性)と、仕事が他人に影響を与えること(タスクの重要性)でした(Christian et al., 2011, p. 108)。熱中できない理由が性格ではなく仕事の中身にあるなら、仕事の範囲や関わる相手を自分で少し組み替えるジョブ・クラフティングの考え方が手がかりになるかもしれません。ただし、仕事の特徴を変えれば熱中が高まるという因果は、このメタ分析では確かめられていません。

  2. 調査(相関)

    「エンゲイジメント」は、満足度の言い換えではないのか

    熱中(エンゲイジメント)は、職務満足(ρ = .53)、組織へのコミットメント(ρ = .59)、仕事への関与(ρ = .52)と中程度に強く関連していましたが、同じものとみなせるほどではありませんでした(Christian et al., 2011, pp. 105, 107)。満足度などを先に考慮しても、熱中は、他人が評価した職務の成果をさらに説明していました(本来の職務で ΔR² = .19、職務の範囲を超えた協力的な行動で ΔR² = .16)(p. 116)。ただしこの分析の一部には、ほかのメタ分析から借りた相関が使われています(p. 114)。著者らは、熱中は職務への態度と重なる部分を持ちながら、独自の部分もあるとまとめています(p. 120)。

    • Christian, Garza & Slaughter (2011). Work engagement: A quantitative review and test of its relations with task and contextual performance. Personnel Psychology. DOI ↗
  3. 調査(相関)

    熱中できない人を「やる気の問題」で片づけていないか

    著者らは、熱中を高める手段として、性格(誠実性、自ら動く性格、ポジティブな感情)に注目した採用と、仕事の設計の二つを挙げています(Christian et al., 2011, p. 124)。性格とも関連がある一方で、仕事の特徴や支援とも同じくらいの強さで関連しているため、熱中できない理由を本人の意欲だけに帰すのは、このデータからは言えません。

    • Christian, Garza & Slaughter (2011). Work engagement: A quantitative review and test of its relations with task and contextual performance. Personnel Psychology. DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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