仕事の要求度-資源モデルJob Demands-Resources Model
一言で言うとどの職種の仕事の特徴も「仕事の要求度」と「仕事の資源」の二つに分けられ、要求度が高すぎると消耗が、資源が足りないと仕事からの離脱が生じ、この二つがバーンアウト(燃え尽き)をつくる、とする理論。
この理論で考えられる身近な疑問
中核的な問い
バーンアウトの研究は、もともと看護や福祉、教育のように人に接する仕事を中心に進められてきた。しかし、工場や運輸の仕事でも、人は疲れ果て、仕事に背を向けることがある。職種ごとに違う無数の職場の条件を、共通の枠組みで捉えることはできないのか。
主張とメカニズム
Demerouti, Bakker, Nachreiner & Schaufeli (2001) は、仕事の特徴を二つに分けた。仕事の要求度とは、「持続的な身体的・精神的な努力を必要とし、そのため一定の生理的・心理的なコスト(たとえば疲弊)をともなう、仕事の身体的・社会的・組織的な側面」である。仕事の資源とは、「仕事の目標の達成に役立つ、要求度とそれにともなうコストを減らす、個人の成長や発達をうながす、のいずれかの働きをもちうる、仕事の身体的・心理的・社会的・組織的な側面」である。仕事量の多さや時間の圧力は前者、上司からのフィードバックや裁量、支援は後者の例である。
このモデルでは、バーンアウトを「消耗」と「仕事からの離脱」の二つの面から捉える。消耗は、身体的・感情的・認知的な負担が続いた結果として起こる。離脱は、仕事そのものや仕事の中身から心理的に距離をとり、否定的な態度をもつことである。モデルは二つの経路を想定する。要求度が高すぎると、主に消耗が生じる。資源が足りないと、目標を達成しにくくなり、働く意欲が失われ、主に離脱が生じる。著者らは異なる職種の働き手を調べ、この二つの経路が職種をこえて見られることを示した。
後の研究では、このモデルが広げられた。Schaufeli & Bakker (2004) は、資源がバーンアウトを防ぐだけでなく、ワーク・エンゲイジメント(仕事への前向きな没入)を高めるという、動機づけの経路を加えた。Bakker & Demerouti (2017) は、モデルを「理論」として整理し直し、働き手自身が要求度や資源を変える行動(ジョブ・クラフティング)なども組み込んだ。これらは原典の後に加えられた要素である。
身近な例
たとえば、二人の営業担当者がいるとしよう。どちらも担当する顧客が多く、締め切りに追われている(要求度が高い)。一人は、上司から定期的に助言を受け、訪問の順番を自分で決められる(資源がある)。もう一人は、助言もなく、細かな手順まで指示されている(資源が乏しい)。モデルに従えば、二人とも疲れはたまるが、後者のほうが仕事への関心を失い、「どうでもいい」と感じやすくなる。要求度を減らすことと資源を増やすことは、別々の対策として考える必要がある。
主要概念
- 仕事の要求度(job demands)
- 持続的な努力を必要とし、そのため身体的・心理的なコストをともなう仕事の側面。仕事量、時間の圧力など。
- 仕事の資源(job resources)
- 目標の達成を助け、要求度の負担を和らげ、成長をうながす仕事の側面。フィードバック、裁量、支援など。
- バーンアウト(burnout)
- 仕事上の負担が続いた結果として生じる、消耗と仕事からの離脱の状態。
- 消耗(exhaustion)
- 身体的・感情的・認知的な負担が続いた結果、疲れ果てた状態。
- 離脱(disengagement from work)
- 仕事そのものや仕事の中身から心理的に距離をとり、否定的な態度をもつこと。
代表的な展開研究
- Schaufeli, W. B., & Bakker, A. B. (2004). Job demands, job resources, and their relationship with burnout and engagement: A multi-sample study. Journal of Organizational Behavior. DOI ↗資源がワーク・エンゲイジメントを通じて組織への愛着などにつながる動機づけの経路を加え、バーンアウトの経路と並べて検討した。
- Bakker, A. B., & Demerouti, E. (2017). Job demands–resources theory: Taking stock and looking forward. Journal of Occupational Health Psychology. DOI ↗それまでの研究を振り返り、モデルを理論として整理し直した。働き手自身による仕事の再設計なども組み込んだ。
批判と境界条件
Schaufeli & Taris (2014) は、このモデルを、多くの職場に当てはめやすい発見的な枠組み(ヒューリスティック・モデル)だと評価した。そのうえで、要求度や資源がなぜそのような影響をもつのかを説明する心理的なメカニズムが、モデル自体には含まれていないと指摘した。また、同じ仕事の特徴が、状況や人によって要求度とも資源とも捉えられうるため、両者の区別があいまいになる場合があることも論じている。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Demerouti, E., Bakker, A. B., Nachreiner, F., & Schaufeli, W. B. (2001). The job demands-resources model of burnout. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
- Schaufeli & Taris (2014). A Critical Review of the Job Demands-Resources Model: Implications for Improving Work and Health. Bridging Occupational, Organizational and Public Health. ↗
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