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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

人脈を広げても、いざというとき役に立たないのはなぜ?

交流会に出て名刺を増やし、SNSでつながりも広げた。それなのに、転職や仕事で本当に困ったとき、頼れる相手が思い浮かばない。人とのつながりが仕事にどう役立つのかは、社会ネットワークの研究で長く調べられてきました。

先に答えを言うと

知り合いがいることと、必要な場面でその人を思い浮かべて頼めることは別です。つながりが役立つのは異なる集団への橋渡しになっている場合で、数が多ければよいわけではありません。

この疑問を説明する 2 つの理論

01

ネットワーク活性化Network Activation · Smith et al. 2012

持っている人間関係のうち、ある場面で実際に頭に浮かぶ部分に注目する考え方です。Smith, Menon & Thompson (2012) は、職を失う脅威にさらされたとき、自分を低い地位とみる人は小さく密なネットワークを、高い地位とみる人は大きく開いたネットワークを思い浮かべることを示しました。人脈を広げても、困ったときに思い浮かぶのがいつもの身近な人たちだけなら、広げた人脈は使われないままになります。

研究の根拠と限界

研究の根拠調査と学生を対象にした研究(Smith, Menon & Thompson, 2012)。ネットワーク活性化の項目を参照。

因果と言うには足りないこと研究1は横断データで逆の因果を排除できず、研究2は学部生の標本で一般化に限界がある。就職の結果のデータがないため、どちらの反応が望ましいかは判断していない(ネットワーク活性化の項目を参照)。

ネットワーク活性化の解説を読む ↗
02

弱い紐帯の強さThe Strength of Weak Ties · Granovetter 1973

親しい相手より、たまに会う程度の弱いつながりのほうが、異なる集団の間を橋渡しし、新しい情報や機会を運ぶ、とする理論です。ただし弱いつながりの利点は、それが別の集団への橋渡しとして働く場合に生じるもので、弱いつながりなら何でも役立つわけではありません。Hansen (1999) は、弱いつながりは有用な知識を探すのには役立つが、複雑な知識を移すには強いつながりのほうが適していることを示しました。

注意Granovetter 自身、この議論を「理論の断片」と呼び、つながりの内容や時間的な変化は扱っていないと述べている(弱い紐帯の強さの項目を参照)。

研究の根拠と限界

研究の根拠理論の提示(Granovetter, 1973)と、その後の実証研究。ビジネス向け SNS での大規模な実験データで、弱いつながりと転職の関係を因果的に検証した研究もある(Rajkumar et al., 2022)。弱い紐帯の強さの項目を参照。

弱い紐帯の強さの解説を読む ↗

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構造的空隙Structural Holes · Burt 1992

互いにつながっていない集団の間をまたぐ位置にいる人が、多様な情報を得て優位に立つ、とする理論です。人脈の数より、つながりが重なっていないかに注目します。同じ業界、同じ会社の人とばかりつながっていると、数が多くても入ってくる情報は似通います。

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 理論からの観点

    困ったとき、誰を思い浮かべているか

    ネットワーク活性化の研究では、知り合いがいることと、必要な場面でその人を思い浮かべることを区別します。脅威を感じると、人によっては思い浮かべる範囲が狭くなります。困ったときに思い浮かぶ顔ぶれが、ふだん一緒にいる人たちだけになっていないかを見直してみると、使われていないつながりに気づくかもしれません。ただし原典の著者らは、相手も助けるかどうかを決める主体であり、小さなネットワークを思い浮かべることが常に不利とは限らないとも述べています(ネットワーク活性化の項目を参照)。

  2. 調査(相関)

    疎遠になった知り合いを、頼る候補から外していないか

    Levin, Walter & Murnighan (2011) は、米国とカナダのエグゼクティブMBAの受講者に、3年以上連絡を取っていない知り合いを2人(かつて親しかった人と、かつて疎遠だった人)選んで連絡し直し、進行中の仕事のプロジェクトについて相談するよう求めました(両方の調査に答えたのは129人)(pp. 926–927)。本人の評価では、連絡し直した相手は、いまの相手より予想外の新しい見方を多くもたらしており、かつて親しかった相手との相談は、いまの親しい相手より短い時間で済んでいました(pp. 928–931)。かつて疎遠だった相手でも、いまの親しい相手や、かつて親しかった相手と同じくらい役に立ったと評価され(p. 933)、かつて親しかった相手は、信頼や考え方の共有もかなり保っていました(pp. 932–933)。別の116人(回答95人)の調査では、連絡し直したい順位の10番目の相手も、1番目の相手と同じくらい役に立っていました(p. 933)。人脈を新しく広げる前に、休眠中のつながりを思い出してみる価値はありそうです。ただし、相手は無作為ではなく本人が選び、評価はすべて本人の回答で、連絡は授業の課題として行われたものです。著者らは、自発的に連絡する場合には違うかもしれないこと、期待の低かった人が甘く評価した可能性があることを限界に挙げています(p. 934)。多くの受講者は、最初は連絡し直すことをためらっていたといいます(p. 936)。

    • Levin, Walter & Murnighan (2011). Dormant ties: The value of reconnecting. Organization Science. DOI ↗
  3. 調査(相関)

    人脈づくりに「うしろめたさ」を感じていないか

    Casciaro, Gino & Kouchaki (2014) は、自分の利益のために意図してつながりをつくることに、人は道徳的な「汚れ」を感じると論じました。北米の企業法務の法律事務所の弁護士165人の調査では、人脈づくりに汚れや恥ずかしさを感じる人ほど人脈づくりの頻度が低く(β = −.40)、頻度が低い人ほど請求可能な労働時間が短い、という関連がありました(pp. 721–722)。地位の高い弁護士ほど、汚れを感じにくい傾向もありました(p. 722)。ただし、この論文の実験の一つを1,000人規模で追試した Ziani (2022) では、効果はまったく再現されず(d = .02)、汚れの感じ方を測る項目が研究ごとに変わっていることも批判されています。「人脈づくりは汚れた感じがする」という説明は、確かめられたものとは言えません。人脈づくりが苦手だと感じる人がいること自体は、Ziani も否定していません。

    • Casciaro, Gino & Kouchaki (2014). The contaminating effects of building instrumental ties: How networking can make us feel dirty. Administrative Science Quarterly. DOI ↗
    • Ziani (2022). Does networking make people feel "dirty"? Reconsidering the evidence in Casciaro, Gino, Kouchaki, 2014. PsyArXiv(査読前の論文). DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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