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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

社長が代わると、会社はがらりと変わるのか?

新しい社長が就任すると、会社の方針も雰囲気も一変すると期待される。業績が悪ければ社長の責任が問われ、良ければ名経営者と呼ばれる。経営者が会社の戦略や業績をどれだけ左右するのかは、経営戦略論で長く問われてきました。

先に答えを言うと

経営者の経歴は会社の戦略や業績と関連していますが、その関連は平均すると小さいものです。業績のばらつきのうち経営者で説明できる割合は米国で高まってきましたが、今も説明できない部分が大きく残ります。

この疑問を説明する 1 つの理論

01

アッパーエシュロン理論(経営上層部理論)Upper Echelons Theory · Hambrick & Mason 1984

組織の戦略や業績は、トップ経営者の価値観と認知を映し出す、とする理論です。308研究のメタ分析では、経営者の特徴と会社の戦略的な行動(買収、多角化、研究開発、戦略の変更など)の関連は、どれも小さなものでした。学歴の高さ(.07)や職歴(.09)は戦略的な行動と正の関連を、在任期間の長さは負の関連(−.04)を示し、年齢は全体としては関連がありませんでした(.01)。性格(自信の強さやナルシシズムなど)は、リスクの高い行動とは関連していましたが、その後の業績とは関連が見られませんでした(Wang et al., 2016, pp. 796–819)。

注意理論が想定する「経営者の特徴 → 戦略 → 業績」の流れはそろわなかった。多くの特徴は、その後の業績とは正の関連があったのに、戦略的な行動とは弱いか負の関連しかなかった。著者らは、経営者は戦略以外の経路でも業績に影響しているようだと述べている(Wang et al., 2016, p. 824)。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心308研究・315標本のメタ分析(Wang, Holmes, Oh & Zhu, 2016)。値は測定誤差を補正した相関。

因果と言うには足りないこと行動に積極的な企業ほど学歴の高い経営者を雇う、といった逆の因果は完全には排除できず、経営者の裁量や業界による違いは、研究が少なくて検証できなかった(Wang et al., 2016, pp. 827–828)。

アッパーエシュロン理論(経営上層部理論)の解説を読む ↗

自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 調査(相関)

    業績のばらつきのうち、社長で説明できるのはどのくらいか

    米国の上場企業1,015社(30業界、1950〜2009年、経営者2,732人)の業績のばらつきを、年、業界、会社、経営者に分けた Quigley & Hambrick (2015) の研究では、経営者で説明できる割合は時代とともに高まっていました。売上高利益率で見ると、1950〜69年の4.1%から、1990〜2009年には16.2%になりました(分析方法によっては8.6%から26.4%)(p. 826)。同じ期間に、業界で説明できる割合は大きく下がっています(p. 825)。一方、どの分析でも、説明できない部分は経営者で説明できる部分より大きく残っていました(p. 826)。この方法では、どんな経営者が良い結果をもたらすのかは分からないと著者ら自身が述べています(p. 824)。また、米国の企業だけの結果です。

    • Quigley & Hambrick (2015). Has the "CEO effect" increased in recent decades? A new explanation for the great rise in America's attention to corporate leaders. Strategic Management Journal. DOI ↗
  2. 調査(相関)

    新しい社長に、変えるための時間を与えているか

    Wang et al. (2016) では、在任期間が長い経営者ほど戦略の変更やリスクの高い行動が少ない一方で、その後の業績とはわずかに正の関連がありました(p. 798, p. 812)。著者らはここから、取締役会は新しい経営者に十分な時間を与えるべきだとし、在任の長い経営者は大規模な立て直しが必要な会社には向かないかもしれない、と述べています(p. 827)。就任してすぐに「がらりと変わる」ことを期待しすぎると、判断を誤るかもしれません。

    • Wang, Holmes, Oh & Zhu (2016). Do CEOs matter to firm strategic actions and firm performance? A meta-analytic investigation based on upper echelons theory. Personnel Psychology. DOI ↗
  3. 理論からの観点

    社長の力を、実際より大きく見ていないか

    Quigley & Hambrick (2015) は、経営者の影響が実際に高まったことと、人々が経営者の力を実際以上に大きく見ることが、互いを強め合ってきた可能性を否定していません(p. 828)。業績の振れ幅が大きく、原因が分かりにくくなるほど、「経営者の手腕や失策のせいだ」という見方が生まれやすいといいます(p. 828)。社長交代の後の変化を見るときは、業界や景気の変化がどれだけ効いているかも合わせて考える必要があります。

    • Quigley & Hambrick (2015). Has the "CEO effect" increased in recent decades? A new explanation for the great rise in America's attention to corporate leaders. Strategic Management Journal. DOI ↗

ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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