Management
Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

同じ職場なのに、人によって扱いが違うのはなぜ?

上司が一部の部下にだけ大事な仕事や相談を回す。同僚だけが特別な働き方を認められている。扱いの違いは不公平感の原因になりやすい一方で、研究では、単なるえこひいきとしてだけ説明されてきたわけではありません。

こんな言い方でも上司のえこひいき上司が人によって態度を変える上司のお気に入りの部下職場の不公平感職場での特別扱い

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

先に答えを言うと

上司は部下ごとに違う関係を築きやすく、扱いの違いは珍しくありません。違いが見えるとチームの対立と結びつきやすい一方、能力に見合った違いだと受け止められれば公正とみなされることもあり、決め方と理由の見え方が鍵になると考えられています。

この疑問を説明する 3 つの理論

01

LMX理論(リーダー・メンバー交換理論)Leader-Member Exchange (LMX) Theory · Graen & Uhl-Bien 1995

上司は部下全員と同じ関係を結ぶのではなく、部下一人ひとりと質の異なる関係を築いている、という発見から始まった理論です。関係が育つと、決められたやりとりを超えて互いに協力するパートナーシップになります。理論を提唱した研究者たちは、一部の部下だけを内集団として優遇するのではなく、すべての部下に関係を深める機会を与えるべきだと提言しています。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心79件の研究のメタ分析(Gerstner & Day, 1997)と、その後のメタ分析(Dulebohn et al., 2012)。

因果と言うには足りないこと研究の大半は一時点の調査で、部下が一人で答えたものが多い。関係が良いから結果が良いのか、その逆なのかは区別しにくい(Dulebohn et al., 2012, p. 1719)。関係の質をどう高めるかを示す研究は少ない(p. 1743)。

LMX理論(リーダー・メンバー交換理論)の解説を読む ↗
02

組織的公正Organizational Justice · Colquitt 2001

人は職場の公正さを、結果の配分、決め方の手続き、相手からの扱われ方、説明のされ方という四つの面から判断する、とする視点です。四つの面は、満足や評価とそれぞれ異なる形で結びついています。扱いの違いに不満を感じたとき、それが結果そのものへの不満なのか、決め方や説明への不満なのかを分けて考える手がかりになります。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心183件の研究のメタ分析(Colquitt et al., 2001)。満足などの態度との関連は強いが、業績との関連は弱い。

因果と言うには足りないこと多くの研究は同じ回答者の回答で測っており、関連が水増しされている可能性がある(Colquitt et al., 2001, p. 438)。

組織的公正の解説を読む ↗
03

i-deals・個別配慮Idiosyncratic Deals (I-deals) · Rousseau et al. 2006

従業員が会社と個別に交渉して、同僚とは異なる働き方や条件を得る取り決めを扱う理論です。本人だけでなく組織にも利益がある点で、個人的な関係などをもとに与えられ、組織の利益になるとは限らないえこひいきとは区別されます。ただし、取り決めの理由を知らない同僚からは、雇用主が一人をひいきしていると見られることがあります。取り決めの手続きが開かれているか、自分にも同じ機会があると思えるかが鍵になるとされます。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心23研究・8,110人のメタ分析(Liao, Wayne & Rousseau, 2016)と、同僚の受け止め方を調べた1社65人の調査(Lai, Rousseau & Chang, 2009)。

因果と言うには足りないこと研究の多くは横断調査で、因果は結論できない(Liao et al., 2016, p. S24)。同僚の受け止め方の研究は1社の小さな標本にとどまる(Lai et al., 2009, p. 553)。

i-deals・個別配慮の解説を読む ↗

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自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 理論からの観点

    違いの理由と決め方は、周りに見えているか

    i-deals の原典は、個別の取り決めが秘密のうちに結ばれると、同僚はそれを不公正だと判断しやすく(Rousseau, Ho & Greenberg, 2006, p. 987)、開かれた形で伝えられるほど公正だと感じられやすいとしています(p. 991)。組織的公正の研究も、人は結果だけでなく、決め方の手続きや、理由の説明のされ方からも公正さを判断するとしています(Colquitt et al., 2001)。扱いの違いに納得できないときは、違いそのものより、決め方や理由が見えないことに引っかかっていないかを分けて考えると、何を尋ねればよいかが見えてきます。

  2. 理論からの観点

    その違いは、能力や仕事ぶりに見合っていると受け止められているか(不公平感の分かれ目)

    LMXの差異化のレビューによれば、扱いの違いは、それが相手の能力に見合っていると受け止められたときには公正と見られ、そう見られなかったときには、優遇された人が嫌われたり、話しかけられにくくなったり、警戒されたりしたという研究があります(Henderson et al., 2009 による Sias & Jablin, 1995 の紹介, p. 528)。レビューはさらに、上司が偏りなく、善意で判断していると見えるかどうかが、違いの受け止め方を左右すると提案しています(p. 527)。ただしこの部分は検証前の命題で、公正の風土や透明性を直接調べた研究ではありません。

    • Henderson, Liden, Glibkowski & Chaudhry (2009). LMX differentiation: A multilevel review and examination of its antecedents and outcomes. The Leadership Quarterly. DOI ↗
  3. 調査(相関)

    自分にも同じ機会があると思えるか

    同僚は、自分にも同じくらい望ましい条件を得る機会があると思えるほど、他人の個別の取り決めを公正だと受け止める、と原典は論じています(Rousseau et al., 2006, p. 988)。研究開発部門の65人を調べた研究でも、自分も将来同じような取り決めを得られるという見込みは、受け入れと正の関係にありました(Lai, Rousseau & Chang, 2009, p. 551)。ただし1社の小さな標本で、著者たちは慎重な解釈を求めています(p. 553)。同僚に負担がかかる取り決めは公正と見られにくい、という指摘もあります(Rousseau et al., 2006, p. 989)。

  4. 調査(相関)

    えこひいき(扱いの違い)は、チームと本人にそれぞれ何をもたらすか

    オーストラリアの消防士357人などを調べた研究では、自分と上司との関係の良さを考慮しても、チームの中で上司との関係にばらつきがあると感じている人ほど、メンバー間の感情的な対立が多く(β = .33〜.39)、仕事への満足や心身の健康がやや低い傾向がありました。この関連は対立を通じたものでした(Hooper & Martin, 2008, p. 26)。ただし一時点の自己報告の調査で、関連は自分と上司との関係の良さに比べると小さなものです。著者らは、少なくとも尊敬や信頼は全員に等しく示すよう勧めています(p. 27)。

    一方、インドの工場で働く男性254人を調べた研究では、同僚より上司と近い関係にあると感じている人ほど、上司が評価した業績や協力的な行動が高い傾向がありました(Vidyarthi et al., 2010, p. 855)。著者らは、全員を同じように扱うことがかえって逆効果になりうるとまで述べています(p. 859)。二つの研究は、チーム全体への影響と優遇される本人の行動という別々のものを見ており、矛盾はしていません。レビュー論文も、関係の差がチームにとって良いか悪いかは未解決だとしています(Henderson et al., 2009, p. 528)。

    • Hooper & Martin (2008). Beyond personal leader–member exchange (LMX) quality: The effects of perceived LMX variability on employee reactions. The Leadership Quarterly. DOI ↗
    • Vidyarthi, Liden, Anand, Erdogan & Ghosh (2010). Where do I stand? Examining the effects of leader–member exchange social comparison on employee work behaviors. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
    • Henderson, Liden, Glibkowski & Chaudhry (2009). LMX differentiation: A multilevel review and examination of its antecedents and outcomes. The Leadership Quarterly. DOI ↗
  5. 調査(相関)

    上司との関係の違いは、評価にまで及んでいないか

    LMX理論では、上司は部下一人ひとりと質の異なる関係を築くとされます。79件の研究のメタ分析では、上司が答えた関係の質は、上司がつける業績評価とは r = .41 で関連していましたが、客観的な業績との関連は r = .10 にとどまりました(Gerstner & Day, 1997, p. 833)。関係の違いが、仕事の任され方だけでなく評価にも入り込みうることを示す材料です。ただし一時点の相関研究が中心で、因果の向きは分かりません。

  6. 実験で確認

    関係の違いは、変えられるものなのか

    理論を提唱した Graen & Uhl-Bien (1995) は、上司が一部の部下だけを内集団として優遇するのではなく、すべての部下にパートナーシップを築く機会を提供すべきだと提言しました。これを試した数少ない現場実験があります。米国の行政機関の書類処理部門で、上司が計12時間の訓練を受け、部下一人ひとりと、仕事への不満や期待、互いの関係について話し合う面談を行いました。訓練だけを受けた部署では、ほかの部署に比べて、上司と部下の双方が答えた関係の質が高まり、生産性は16.3%伸び、満足度も上がりました(Graen, Novak & Sommerkamp, 1982, pp. 122–125)。一方で、仕事の負担感も増えていました(p. 124)。

    ただし一つの組織の7つの部署を単位に割り当てた研究で、無作為に割り当てたかどうかは論文に書かれていません。生産性の伸びは、仕事で成長したいという気持ちの強い一部の部下に集中していましたが、その人数はごく少数でした(p. 121)。同じ理論の提唱者は、すべての部下に申し出ても、すべてが質の高い関係になるかは疑わしいとも述べており(Graen & Uhl-Bien, 1995, p. 233)、Dulebohn et al. (2012, p. 1743) も、関係の質をどう高めるかを示す研究はまだ少ないとしています。

    • Graen, Novak & Sommerkamp (1982). The effects of leader–member exchange and job design on productivity and satisfaction: Testing a dual attachment model. Organizational Behavior and Human Performance. DOI ↗

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ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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