組織的公正Organizational Justice
一言で言うと人は職場で、結果の配分、決め方の手続き、相手からの扱い、説明の仕方のそれぞれについて公正さを判断する。組織的公正はこの四つの次元に分けて捉えられ、次元ごとに異なる態度や行動と結びつく、という視点。
この理論で考えられる身近な疑問
中核的な問い
昇給額に納得できないとき、人は金額だけに不満をもつのではない。どう決められたのか、上司がどう接したのか、きちんと説明されたのかも気にする。公正さはいくつの側面に分けて考えるべきで、それぞれは別のものなのか。
主張とメカニズム
Colquitt (2001) は、組織的公正を四つの次元で捉えた。分配的公正は「決定の結果の公正さ」、手続き的公正は「結果を決めるのに使われる手続きの公正さ」である。対人的公正は「手続きを実行したり結果を決めたりする権限者や第三者から、礼儀正しく、尊厳と敬意をもって扱われる度合い」、情報的公正は「なぜその手続きが使われたのか、なぜその配分になったのかを伝える説明」に関わる公正さである。
それまでの研究では、公正を二つ(分配と手続き)や三つ(分配、手続き、相手とのやりとり)に分ける見方が並び立ち、測定の仕方も研究ごとにばらばらだった。Colquitt は、先行研究が示してきた公正の基準(手続きの一貫性、偏りのなさ、正確さ、異議を述べる機会など)をもとに質問項目をつくり、大学の授業と職場という二つの場面で検証した。その結果、四つの次元に分けるモデルが、二つや三つに分けるモデルよりもデータによく当てはまった。
さらに、四つの次元は、満足や評価といった結果とそれぞれ異なる形で結びついていた。このため、公正を一つにまとめず、次元ごとに測ることに意味があるとされた。
身近な例
たとえば、ある部署で人事評価の結果が伝えられたとしよう。評価の点数そのものに納得できるか(分配)、評価基準が全員に同じように当てはめられ、意見を言う機会があったか(手続き)、上司が丁寧に接したか(対人)、なぜその評価になったのかを具体的に説明されたか(情報)は、別々に判断される。点数に不満があっても、手続きと説明に納得できれば、上司や組織への評価はそれほど下がらないかもしれない。
主要概念
- 分配的公正(distributive justice)
- 報酬や評価など、決定の結果が公正かどうか。
- 手続き的公正(procedural justice)
- 結果を決める手続きが、一貫性や偏りのなさなどの基準を満たしているかどうか。
- 対人的公正(interpersonal justice)
- 決定に関わる人から、礼儀正しく、尊厳と敬意をもって扱われているかどうか。
- 情報的公正(informational justice)
- 手続きや結果の理由について、十分で誠実な説明がなされているかどうか。
代表的な展開研究
- Colquitt, J. A., Conlon, D. E., Wesson, M. J., Porter, C. O. L. H., & Ng, K. Y. (2001). Justice at the millennium: A meta-analytic review of 25 years of organizational justice research. Journal of Applied Psychology. DOI ↗それまでの組織的公正研究をメタ分析で統合し、四つの次元がそれぞれ異なる結果と結びつくことを検討した。
- Ambrose, M. L., & Schminke, M. (2009). The role of overall justice judgments in organizational justice research: A test of mediation. Journal of Applied Psychology. DOI ↗個々の次元の公正が、全体としての公正判断を通じて態度に影響するという見方を検証した。
批判と境界条件
Ambrose & Schminke (2009) は、人は職場の公正さを次元ごとではなく全体として判断することも多いと考え、個々の次元の公正さの影響が、全体としての公正判断を通じて態度に及ぶことを示した。この研究は、次元を細かく分ける見方だけでは、人が公正をどう経験しているかを捉えきれない可能性を示している。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Colquitt, J. A. (2001). On the dimensionality of organizational justice: A construct validation of a measure. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
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