理論・視点

組織的公正Organizational Justice

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

人は職場で、結果の配分、決め方の手続き、相手からの扱い、説明の仕方のそれぞれについて公正さを判断する。組織的公正はこの四つの次元に分けて捉えられ、次元ごとに異なる態度や行動と結びつく、という視点。

目次
説明したい問い職場の人々は何を手がかりに「公正だ」と感じ、その判断は態度や行動にどう影響するのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

昇給額に納得できないとき、人は金額だけに不満をもつのではない。どう決められたのか、上司がどう接したのか、きちんと説明されたのかも気にする。公正さはいくつの側面に分けて考えるべきで、それぞれは別のものなのか。

02

主張とメカニズム

Colquitt et al. (2001) の整理によれば、組織的公正の研究は、もともと二種類の公正の知覚を扱ってきた。分配的公正は「結果の配分の公正さ」、手続き的公正は「結果の配分を決めるのに使われる手続きの公正さ」である。

Colquitt et al. (2001) によれば、その後 Bies & Moag (1986) は、手続きを実行するときに人が受ける対人的な扱いの質に注目した。この側面は「相互作用的公正」と呼ばれ、さらに二つに分けて考えられるようになった。対人的公正は「手続きを実行したり結果を決めたりする権限者や第三者から、礼儀正しく、尊厳と敬意をもって扱われる度合い」を表す。情報的公正は、なぜ手続きがそのように使われたのか、なぜ結果がそのように配分されたのかを伝える説明に関わる公正さである。

Colquitt et al. (2001) によれば、それまでの研究では、公正の次元が一つか、二つか、三つか、四つかをめぐって議論が続いていた。手続き的公正を、相互作用的公正と合わせて一つの尺度で測る研究も多かった。そのなかで Colquitt (2001) は、各次元を最初に示した研究をもとに四つの次元の尺度をつくり、大学と職場という二つの場面で検証した。その結果、四つの次元に分けるモデルがデータに最もよく当てはまり、四つの次元はそれぞれ異なる結果を予測した。Ambrose & Schminke (2009) によれば、Colquitt (2001) の尺度は、「どのくらい公正か」を直接たずねるのではなく、意見を述べる機会、一貫性、礼儀正しい扱いといった公正さの特徴をたずねる間接的な尺度で、個々の次元を測る尺度として最もよく使われるものの一つである。

Colquitt et al. (2001) は、メタ分析の結果から、対人的公正と情報的公正は、分配的公正と同じく、手続き的公正とは区別して考えるべきだとした。そして、手続き的・対人的・情報的公正の三つを一つの変数にまとめる尺度をやめるよう求めた。三つはそれぞれ異なる変数と関連しており、別々に測れば、次元どうしの違いをさらに調べられるからである。

03

身近な例

たとえば、ある部署で人事評価の結果が伝えられたとしよう。評価の点数そのものに納得できるか(分配)、評価基準が全員に同じように当てはめられ、意見を言う機会があったか(手続き)、上司が丁寧に接したか(対人)、なぜその評価になったのかを具体的に説明されたか(情報)は、別々に判断される。点数に不満があっても、手続きと説明に納得できれば、上司や組織への評価はそれほど下がらないかもしれない。

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主要概念

分配的公正(distributive justice)
報酬や評価など、決定の結果が公正かどうか。
手続き的公正(procedural justice)
結果を決める手続きが、一貫性や偏りのなさなどの基準を満たしているかどうか。
対人的公正(interpersonal justice)
決定に関わる人から、礼儀正しく、尊厳と敬意をもって扱われているかどうか。
情報的公正(informational justice)
手続きがなぜそのように使われたのか、結果がなぜそのように配分されたのかについて、説明がなされているかどうか。
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代表的な展開研究

  • Colquitt, J. A., Conlon, D. E., Wesson, M. J., Porter, C. O. L. H., & Ng, K. Y. (2001). Justice at the millennium: A meta-analytic review of 25 years of organizational justice research. Journal of Applied Psychology. DOI ↗183件の研究をメタ分析し、四つの次元が互いに区別できることを示した。分配的公正は結果への満足(r = .52)と、手続き的公正は職務満足(r = .51)や組織コミットメント(r = .48)と強く関連し、情報的公正は権威者への評価を最もよく予測した。業績との関連は、手続き的公正で r = .30、分配的公正で r = .13 にとどまった。
  • Ambrose, M. L., & Schminke, M. (2009). The role of overall justice judgments in organizational justice research: A test of mediation. Journal of Applied Psychology. DOI ↗個々の次元の公正が、全体としての公正判断を通じて態度や行動に影響するという見方を検証した。研究1では従業員の態度について、研究2では上司が評価した従業員の行動について、全体としての公正判断が媒介することを示した。
06

批判と境界条件

Ambrose & Schminke (2009, pp. 491, 498) は、人は職場の公正さを次元ごとではなく全体として判断することも多いと考え、個々の次元(分配・手続き・相互作用の三つ)の公正さの影響が、全体としての公正判断を通じて態度や行動に及ぶことを示した(pp. 495–496)。この研究は、次元を細かく分ける見方だけでは、人が公正をどう経験しているかを捉えきれない可能性を示している(pp. 491–492)。

Colquitt et al. (2001, p. 438) 自身は、多くの変数が自己報告で測られているため、関連が同じ回答者の回答によって水増しされている可能性があることを限界に挙げた。また、対人的公正を測った研究は16件と少なく(情報的公正は31件)、研究が手薄だと指摘している(p. 438)。手続き的公正については、満足やコミットメントに比べて、業績や組織市民行動を扱った研究が少ない(p. 438)。分配的・手続き的・情報的公正では、業績や組織市民行動との関連は、満足やコミットメントとの関連に比べて弱かった(p. 434)。また Ambrose & Schminke (2009, p. 494) は、Colquitt の尺度が出た2001年以降の主要誌の87本のうち、対人的公正と情報的公正を分けて測ったのは7本だけで、報告された13の相関のうち6つは .70 を超えていたと指摘し、自身の研究でも両者の相関が .79 と高かったため、二つを分けない4因子のモデルを採った。

研究上の位置づけ

原典Colquitt, J. A. (2001)
On the dimensionality of organizational justice: A construct validation of a measure
分類概念
地図の区画組織行動
分析単位個人 · 組織
理論系譜心理学
REFERENCES

出典

  • 原典Colquitt, J. A. (2001). On the dimensionality of organizational justice: A construct validation of a measure. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
  • Bies & Moag (1986). Interactional justice: Communication criteria of fairness. In R. J. Lewicki, B. H. Sheppard, & M. H. Bazerman (Eds.), Research on negotiations in organizations (Vol. 1). JAI Press.

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