理論・視点

組織市民行動Organizational Citizenship Behavior

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

職務として決められてはいないが、同僚を助ける、組織の活動に進んで関わるといった自発的な行動が、積み重なることで組織の働きを支えている、とする理論。

目次
説明したい問い職務記述書に書かれていない自発的な協力は、組織にとってどのような意味をもつのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

Podsakoff et al. (2000) によれば、Organ (1988) は、Katz (1964) による、決められた役割を確実に果たすことと「革新的で自発的な行動」との区別などを手がかりに、組織市民行動を定義した。困っている同僚を手伝う、仕事につきものの不便に不平を言わない、会議に出て意見を述べる、といった行動である。Organ (1997) によれば、こうした行動を洗い出すため、Smith, Organ, & Near (1983) の Smith が、現場の管理者に、部下に「してほしいが、強制も、見返りの約束も、しなかったときの罰もできないこと」は何かを尋ねた。このような誰にも命じられていない協力をどう捉え、何がそれを生むのか。

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主張とメカニズム

Organ (1997) によれば、Organ (1988) は、組織市民行動を「自由裁量による個人の行動であり、公式の報酬制度によって直接的・明示的には認められていないが、全体として組織の効果的な機能を促進するもの」と定義した。自由裁量とは、役割や職務記述書で強制できる要件ではなく本人の選択に任されており、しなくても一般には罰せられるとは受け取られない、という意味である。また、一回ごとの行動がどれも組織の成果に違いを生むわけではないが、時間と人を通じて積み重なれば組織の有効性に貢献する、ということも定義の条件とされた。Organ (1997) は、この条件を確かめるのは難しいと考えていたが、その後の研究は、一時点の調査によるものではあるが一貫してこれを支持している、と述べている。

Podsakoff et al. (2000) の整理によれば、Organ は、この行動の中身として、仕事上の問題を抱えた人を助ける愛他主義、出勤や時間厳守、資源の節約などで最低限の水準をはるかに超えて勤める誠実さ、仕事につきものの不便を不平なく受け入れるスポーツマンシップ、他の人の問題を未然に防ぐための配慮である礼儀、組織の政治的な過程に責任をもって建設的に関わる市民的美徳などを挙げていた。

Organ (1997) によれば、組織市民行動の研究は、職務満足は個人の客観的な仕事の量とはあまり関係しなくても、同僚を助けたり、仕事の仕組みを保つためにさまざまな形で協力したりする意欲には影響する、という主張 (Organ, 1977) から始まった。Podsakoff et al. (2000) の整理でも、職務満足、公正の知覚、組織コミットメント、上司の支援の知覚は、いずれも組織市民行動と同じくらいの強さで関連していた。Organ (1997) は、これらに共通するものを、昔ながらの「士気」に近いものと呼んでいる。また、上司と部下の交換関係(LMX)の質も組織市民行動と強く関連しており、Podsakoff et al. (2000) は、組織市民行動が互恵的な社会的交換の過程で役割を果たしているようだと述べている。

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身近な例

たとえば、ある事務所で、新人が慣れない作業に手間取っているとしよう。隣の席の先輩が、頼まれていないのに手順を教える。別の人は、プリンターの紙が切れそうなのに気づいて補充しておく。こうした行動は評価表の項目にはなく、給料にも直接は反映されない。しかし、これらがなくなれば、仕事の流れはすぐに滞るだろう。

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主要概念

組織市民行動(organizational citizenship behavior, OCB)
自由裁量による個人の行動で、公式の報酬制度では直接的・明示的には認められていないが、全体として組織の効果的な機能を促進するもの(Organ, 1988 の定義)。Organ (1997) は後に、課題遂行を支える社会的・心理的な環境の維持と向上への貢献として定義し直した。
自由裁量(discretionary)
職務として強制されておらず、するかしないかを本人が選べること。
愛他主義(altruism)
仕事上の課題や問題について、特定の他者を助ける行動。Organ (1997) は、この呼び名は特定の動機を決めつけるという批判を受け入れ、単に「援助」と呼べばよいと述べている。
スポーツマンシップ(sportsmanship)
仕事につきものの不便や負担を、不平を言わずに受け入れる行動。
市民的美徳(civic virtue)
会議への参加など、組織の運営に責任をもって関わる行動。
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代表的な展開研究

  • Organ, D. W. (1997). Organizational citizenship behavior: It's construct clean-up time. Human Performance. DOI ↗Organ 自身が当初の定義を見直し、課題遂行を支える社会的・心理的な環境への貢献として定義し直した。
  • Podsakoff, P. M., MacKenzie, S. B., Paine, J. B., & Bachrach, D. G. (2000). Organizational citizenship behaviors: A critical review of the theoretical and empirical literature and suggestions for future research. Journal of Management. DOI ↗30近い組織市民行動の形を、援助、スポーツマンシップ、組織への忠誠、組織への服従、個人の率先、市民としての美徳、自己啓発の七つにまとめた。管理者による業績評価では、組織市民行動が客観的な業績より大きな割合を説明していた(組織市民行動と評価を同じ評価者から測ったことによる偏りを統制した7研究でも、平均 19.3% 対 11.3%)。
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批判と境界条件

Organ (1997, p. 85) は自ら、組織市民行動を「役割外」「職務を超える」「公式の制度で報われない」行動とみなすのは、もはや実りがないと認めた。Organ (1997, p. 88) によれば、Morrison (1994) の調査では、20項目のうち18項目が回答者の過半数に「役割内」とされ、職務の範囲の捉え方も人によって違った。報酬についても、組織市民行動は役割内の業績と同じかそれ以上に金銭的な見返りにつながりうることが示されていた (Organ, 1997, p. 89)。そこで Organ (1997, p. 91) は、課題遂行を支える社会的・心理的な環境への貢献として定義し直した。ただし Organ (1997, p. 90) 自身、新しい定義はあいまいで広すぎるという反論がありうると認めている。

これに対し Podsakoff et al. (2000, p. 548) は、Morrison (1994) の結果は、仕事として「期待されている」かどうかを大まかに尋ねたことによる見かけの結果かもしれないと反論した。ただし、管理者が評価のときに組織市民行動を考慮していることから、役割内の行動との区別は従業員にも管理者にも難しいことは認めている (p. 549)。また Organ (1997, p. 93) は、広く使われた尺度が、管理者に「部下にしてほしいが強制できないこと」を尋ねて作られたため、管理者の側に偏った内容になったと述べている。

実証面では、Podsakoff et al. (2000, p. 541) の整理によると、組織市民行動と総合評価を同じ評価者から測った偏りを統制しない研究では、組織市民行動が評価の平均 42.9% を説明したが、統制した7研究では平均 19.3% だった。また研究の大半は一時点の調査なので、業績のよい部署ほど組織市民行動をしやすいという逆向きの因果もありうる (p. 558)。

援助がいつも成果を高めるわけではない。Podsakoff et al. (2000, pp. 547–548) によれば、保険代理店の営業所を調べた Podsakoff & MacKenzie (1994) では、援助行動が多い営業所ほど販売量が少なかった。著者らは、離職が非常に多いため、経験のある販売員が新人を助けた分の販売の減少を、すぐ辞める新人の販売の増加が埋め合わせないのではないかと推測した (p. 554)。Podsakoff et al. (2000, pp. 553–554) はまた、個人の販売成績で報酬が決まる制度のもとでは、販売員が同僚を助けにくくなるかもしれないと述べている。

研究上の位置づけ

原典Organ, D. W. (1988)
Organizational citizenship behavior: The good soldier syndrome
分類概念
地図の区画組織行動
分析単位個人 · 組織
理論系譜行動論 · 心理学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。