組織コミットメント(3次元モデル)Organizational Commitment: Three-Component Model
原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)
一言で言うと従業員と組織の結びつきには、情緒的、存続的、規範的という性質の異なる三つの要素があり、それぞれが別の理由で人を組織にとどまらせる、とする理論。
目次
この理論で考えられる身近な疑問
中核的な問い
同じように会社にとどまっている人でも、その理由は同じとは限らない。この会社が好きだから残る人もいれば、辞めると損だから残る人もいる。それまでの研究は「コミットメント」という一つの言葉で、こうした異なる結びつきを扱っていた。これらをどう整理すれば、人が組織にとどまる理由と、その後の働き方を理解できるのか。
主張とメカニズム
Meyer & Allen (1991) は、それまでの研究に見られる三つの考え方に共通する見方として、コミットメントを「従業員と組織との関係を特徴づけ、組織にとどまるか離れるかの決定に影響する心理状態」ととらえた。そのうえで、この心理状態には三つの要素があるとした。
情緒的コミットメントは、組織への感情的な愛着、組織との一体感、組織への関与である。存続的コミットメントは、組織を離れることにともなうコストの認識である。規範的コミットメントは、組織にとどまり続けるべきだという義務感である。言いかえれば、人は「そうしたいから」「そうする必要があるから」「そうすべきだと感じるから」組織にとどまる。
三つは互いに排他的な「型」ではなく、一人の中に程度の差をもって同時に存在する要素だとされる。三つとも組織にとどまることにつながるが、仕事ぶりへの影響は同じではないと考えられた。たとえば、愛着から残る人は組織のために努力しやすいが、損をしたくないから残るだけの人ではそうとは限らない。
原典は、三つの要素が異なる先行要因から生まれると論じた。情緒的コミットメントは、主に、心地よさや自分の有能さを感じさせる仕事上の経験から育つとされた。存続的コミットメントの先行要因としては、辞めると失われる「サイドベット」(投資)と、ほかの就職先の少なさが挙げられた。たとえば、その会社でしか通用しない技能の習得にかけた時間と労力、手厚い福利厚生、勤続にもとづく特権などである。ただし原典は、この二つを先行要因に含めたのは、実証的な証拠よりも理論的な議論によると断っている。規範的コミットメントは、忠誠の規範を内面化することや、返すべき恩恵(学費の負担など)を組織から受けることから生まれるとされた。
身近な例
たとえば、同じ部署で働く三人がいるとしよう。Aさんは会社の方針に共感し、仲間と働くのが好きなので残っている。Bさんは、辞めると退職金や積み上げた人脈を失い、ほかに良い転職先もないので残っている。Cさんは、研修に多くの費用をかけてもらった恩があるので、すぐに辞めるのは筋が通らないと感じて残っている。三人とも離職していないが、新しい仕事を自分から引き受けるかどうかは違ってくるかもしれない。
主要概念
- 組織コミットメント(organizational commitment)
- 従業員と組織との関係を特徴づけ、組織にとどまるか離れるかの決定に影響する心理状態。
- 情緒的コミットメント(affective commitment)
- 組織への感情的な愛着、一体感、関与。
- 存続的コミットメント(continuance commitment)
- 組織を離れることにともなうコストの認識にもとづく結びつき。
- 規範的コミットメント(normative commitment)
- 組織にとどまり続けるべきだという義務感にもとづく結びつき。
代表的な展開研究
- Meyer, J. P., Allen, N. J., & Smith, C. A. (1993). Commitment to organizations and occupations: Extension and test of a three-component conceptualization. Journal of Applied Psychology. DOI ↗3次元モデルを、組織へのコミットメントだけでなく職業へのコミットメントにも広げた。看護学生と看護師を対象に、職業への情緒的・存続的・規範的コミットメントを測る尺度(各6項目)を作り、因子分析で、三つが互いに区別でき、組織へのコミットメントの三つとも区別できることを示した。看護師のデータでは、組織へのコミットメントを統制しても、職業へのコミットメントが、組織にかかわる結果(離職の意図や職場での行動など)の予測に、小さいながら独自に寄与した。ただし、調べたのは一つの職業だけで、看護師のデータは一時点の自己報告だった。この研究ではあわせて組織への規範的コミットメント尺度も改訂し、Meyer & Allen (1991) の考える組織への義務感をよりはっきり表すよう項目を書き直した(6項目)。Meyer et al. (2002) によれば、この改訂版は、社会化による義務感をあまり強調せず、組織にとどまる義務感をより一般的に測ることを意図したものである。
- Meyer, J. P., Stanley, D. J., Herscovitch, L., & Topolnytsky, L. (2002). Affective, continuance, and normative commitment to the organization: A meta-analysis of antecedents, correlates, and consequences. Journal of Vocational Behavior. DOI ↗155の独立標本(50,146人)を対象にしたメタ分析により、三つの要素の先行要因・相関要因・結果を比較した。三つの要素は、互いに関連しつつも区別できることが示された。三つとも離職と負の相関をもち、出勤、業績、組織市民行動との相関は情緒的コミットメントが最も強かった。存続的コミットメントは、これらと無関係か負の相関だった。
批判と境界条件
Meyer & Allen (1991, p. 69) 自身が、このモデルは既存研究の結果から帰納的に導かれたものであり、それらの結果はモデルの検証にはならないと断っている。モデルは先行要因がコミットメントを生み、コミットメントが行動を生むという因果を想定しているが、多くの場合、因果を主張するには証拠が足りないという (p. 81)。モデルとは逆向きの関係を示す結果もある (p. 81)。三つの要素が完全には独立していないことを示す証拠もあり (p. 82)、原典は、モデルを最終的な分析と見なさず、今後検証すべき仮説の源として使うべきだと述べている (p. 82)。
Meyer et al. (2002, p. 23) によれば、尺度の間には一貫して相関があり、とくに情緒的と規範的の相関が強いため、Ko, Price & Mueller (1997) のように、規範的コミットメントを別の尺度として残す意味を疑う研究者もいた。メタ分析では、両者の修正済み相関は ρ = .63 と大きく、改訂された6項目版の尺度では ρ = .77 に達した (p. 28)。これに対し Meyer et al. (2002, p. 40) は、相関は1ではなく、ほかの変数との相関の大きさもしばしば異なると応じている。そのうえで、両者は同一の概念ではないが、規範的コミットメントとは何か、どう育つのか、行動を独自に予測するのかは、さらに研究が必要だと結論している (p. 41)。メタ分析では、規範的コミットメントに固有の先行要因は見つからなかった (p. 20)。
Meyer & Allen (1991, p. 82) は、それぞれの要素が単一の概念なのかも明らかではないとし、McGee & Ford (1987) が存続的コミットメントの尺度に、辞めるときの個人的な犠牲と代替案の少なさという二つの下位尺度を見いだしたことを挙げている。Meyer et al. (2002, p. 28) のメタ分析では、二つの下位成分は強く相関していた(ρ = .86)。ただし離職意図とより強く関連するのは犠牲の成分であり、Meyer et al. (2002, p. 41) は、犠牲の下位尺度の方が Becker (1960) の「サイドベット」の考え方をよく表しているとして、尺度の改訂を勧めている。また、年齢や勤続年数を投資の蓄積の代わりの指標とする従来の想定は、支持されなかった (p. 42)。
Meyer et al. (2002, p. 39) は、コミットメントと行動の相関はおおむね予測どおりだが、その大きさは控えめだと認めている。ただし、各要素の影響はほかの要素によって弱められて現れるため、この相関は真の影響を過小評価している可能性があると述べている (p. 39)。また、ほとんどの研究は横断的な相関研究であり、因果の向きは確かめられない (p. 43)。北米の外で行われた研究では情緒的と規範的の相関がより高く、文化の違いによる可能性も、翻訳の難しさによる可能性もあるという (p. 41)。たとえば Lee et al. (2001) は、尺度を標準的な逆翻訳の手続きで韓国語に訳すと、北米で報告される三因子構造を再現できなかった (p. 41)。
研究上の位置づけ
出典
- 原典Meyer, J. P., & Allen, N. J. (1991). A three-component conceptualization of organizational commitment. Human Resource Management Review. DOI ↗
- Ko et al. (1997). Assessment of Meyer and Allen's three-component model of organizational commitment in South Korea. Journal of Applied Psychology. ↗
- McGee & Ford (1987). Two (or more?) dimensions of organizational commitment: Reexamination of the affective and continuance commitment scales. Journal of Applied Psychology. ↗
- Becker (1960). Notes on the concept of commitment. American Journal of Sociology. ↗
- Lee, Allen, Meyer & Rhee (2001). The three-component model of organisational commitment: An application to South Korea. Applied Psychology: An International Review. ↗
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