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Theory Atlas
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EVERYDAY QUESTION

頑張っているのに、評価されないのはなぜ?

残業もして、新しい仕事にも手を挙げてきたのに、査定は同僚と変わらない。研究から見ると、「評価されない」という悩みには、性質の違ういくつかの問題が混ざっています。自分が数えている頑張りと、評価する側が数えているものは、一致するとは限らないからです。

こんな言い方でも仕事で評価されない頑張っても評価されない人事評価に納得できない上司が評価してくれない評価面談が意味ない

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

先に答えを言うと

自分の評価と上司の評価は、もともと一致しにくく、自己評価のほうが高めに出やすいことが分かっています。そのうえで、数えている頑張りのずれ、決め方や説明への不満、上司との関係の影響など、性質の違う問題が混ざっています。

この疑問を説明する 3 つの理論

01

公平理論Equity Theory · Adams 1963

人は、自分が仕事に注いだもの(投入)と受け取ったもの(成果)の釣り合いを、比較相手の投入と成果に照らして判断する、とする理論です。提唱者の Adams は、投入は本人が知覚したもので、相手の見方と一致するとは限らないと述べました。自分が大事な投入だと思っている頑張りが、評価する側には数えられていないとき、不公平が生じます。不公平を感じた人は、投入を減らす、比較相手を替える、職場を去るなどの方法で、それを解消しようとするとされます。

研究の根拠と限界実験・介入の研究がある

研究の根拠実験・介入の研究がある理論的な提案と、少人数の実験、観察研究に基づく(Adams, 1963)。

因果と言うには足りないこと実験は少人数で、いずれも報酬が多すぎる場合を扱ったもの。提唱者自身が、直接の証拠は「やや乏しい」と認めている。

公平理論の解説を読む ↗
02

組織的公正Organizational Justice · Colquitt 2001

人は職場の公正さを、結果の配分、決め方の手続き、相手からの扱われ方、説明のされ方という四つの面から判断する、とする視点です。183件の研究をまとめたメタ分析では、決め方の手続きの公正さは、職務満足(r = .51)や組織へのコミットメント(r = .48)と強く結びついていました。評価の結果そのものに不満なのか、決め方や説明に不満なのかを分けて考える手がかりになります。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心183件の研究のメタ分析(Colquitt et al., 2001)。満足などの態度との関連は強いが、業績との関連は弱い。

因果と言うには足りないこと多くの研究は同じ回答者の回答で測っており、関連が水増しされている可能性がある。

組織的公正の解説を読む ↗
03

LMX理論(リーダー・メンバー交換理論)Leader-Member Exchange (LMX) Theory · Graen & Uhl-Bien 1995

上司は部下全員と同じ関係を結ぶのではなく、部下一人ひとりと質の異なる関係を築く、とする理論です。79件の研究をまとめたメタ分析では、上司が答えた関係の質は、上司がつける業績評価とは r = .41 で関連していましたが、客観的な業績との関連は r = .10 にとどまりました。評価が、成果だけでなく上司との関係にも左右されうることを示しています。

研究の根拠と限界相関研究が中心

研究の根拠相関研究が中心79件の研究のメタ分析(Gerstner & Day, 1997)。

因果と言うには足りないこと研究の多くは一時点の調査で、関係が良いから評価が高いのか、評価の高い部下との関係が良くなるのかは区別できない。

LMX理論(リーダー・メンバー交換理論)の解説を読む ↗

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もっと読むなら

心理的契約Psychological Contract · Rousseau 1989

約束されていた昇進や役割が与えられなかったと感じるなら、この理論が手がかりになります。組織が約束を守らなかったという認識(破棄)は、経営陣への不信(ρ = .65)や職務満足の低さ(ρ = −.54)と強く結びついていました。

研究の根拠と限界

研究の根拠51件の研究のメタ分析(Zhao et al., 2007)。多くの研究は結果を本人の自己報告で測っている。

期待理論Expectancy Theory · Vroom 1964

人の努力を、頑張れば成果が出るという見込みと、成果が報酬につながるという見込み、その報酬の魅力で説明する理論です。頑張りが成果につながらないのか、成果が評価につながらないのかを分けて考える手がかりになります。

注意77件の研究のメタ分析では、モデル全体と業績との相関は r = .19 で、著者らは、モデルが要素そのものより高い相関を示さないことから「モデルは妥当性を欠く」と述べている(Van Eerde & Thierry, 1996)。考えを整理する枠組みとして使うのがよい。

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自分の状況に当てはめて考える

研究から引き出せる見直しの観点です。各観点の札は根拠の種類を表します。実験で確認は実験やそのメタ分析で確かめられたもの、調査(相関)は調査で関連が見られたもの(因果は分からない)、理論からの観点は理論から考えられるもので効果は確かめられていないものです。どんな研究なのかは、それぞれの説明に書いています。

  1. 調査(相関)

    自己評価と上司の評価は、どのくらい一致するものなのか

    職場で集めた評価を比べたメタ分析では、本人の自己評価と上司の評価の相関は r = .22(測定誤差などを補正して .35)にとどまりました。これに対して、同僚と上司の評価どうしは r = .48(補正して .62)と、よく一致していました(Harris & Schaubroeck, 1988, p. 50)。115の標本をまとめた後のメタ分析でも相関は r = .22 で、自己評価は上司の評価より平均して標準偏差の約3分の1高く出ていました(d = 0.32; Heidemeier & Moser, 2009, pp. 360–361)。「頑張っているのに評価されない」と感じること自体は、珍しいことではないのです。

    ずれの大きさは条件で変わります。売上のような数字で測れる指標を評価する場合は一致が高く(r = .46。そうでない場合は .21)、「同僚と比べてどうか」を尋ねる尺度では、自己評価の高めの傾向が小さくなっていました(d = .21。そうでない場合は .33)。性格のような特性や全体的な印象を評価するときは、高めの傾向が大きくなっていました(p. 361; Table 3, p. 364)。米国の標本では d = .32、欧州では .17、アジアでは .09 と、地域でも差がありました(p. 361; Table 3, p. 364)。ただし、自己評価のほうが低く出る「謙遜」の傾向は確認されませんでした(p. 365)。

    ただし、上司と同僚の評価がよく一致することは、それが正しいことを意味しません。ずれの理由として、人は自分の行動を状況のせいに、他人の行動をその人のせいにしやすいといった説明が挙げられていますが、直接には確かめられていません(Harris & Schaubroeck, 1988, pp. 55–58)。

    • Harris & Schaubroeck (1988). A meta-analysis of self-supervisor, self-peer, and peer-supervisor ratings. Personnel Psychology. DOI ↗
    • Heidemeier & Moser (2009). Self–other agreement in job performance ratings: A meta-analytic test of a process model. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
  2. 理論からの観点

    自分が「頑張り」として数えているものを、評価する側も数えているか

    公平理論の Adams (1963) は、人が仕事に注ぐもの(投入)は本人が知覚したもので、交換の相手の見方と一致するとは限らないと述べました(p. 423)。努力もその投入に含まれます(p. 422)。残業や新しい仕事への挑戦を自分は大事な投入と数えていても、評価する側がそれを数えていなければ、不公平の感覚が生まれます。Adams は、不公平を減らそうとして人がとる方法として、投入を減らす、比較相手を替える、職場を去るなど八つを挙げました(pp. 427–429)。ただし理論を直接支持する証拠は「やや乏しい」と本人が認めています(p. 430)。

  3. 調査(相関)

    不満なのは、結果か、決め方か、説明のされ方か

    183件の研究のメタ分析では、結果の配分の公正さ(分配的公正)と職務満足は r = .46、決め方の手続きの公正さ(手続き的公正)と職務満足は r = .51 で関連していました(Colquitt et al., 2001, p. 436)。公正さには、結果、手続き、扱われ方、説明という区別できる面があります(pp. 437–438)。査定の結果そのものが不満なのか、どう決まったのか、なぜそうなったのかの説明が足りないのかを分けると、上司に尋ねるべきことがはっきりします。ただし多くの研究は同じ回答者の回答で測っており、関連が水増しされている可能性があります(p. 438)。

  4. 調査(相関)

    評価面談で、自分の言い分を伝えられているか

    職場での研究27件をまとめたメタ分析では、評価の過程に参加できることは、評価への満足や公正感といった反応と強く関連していました(ρ = .61; Cawley, Keeping & Levy, 1998, p. 622)。興味深いのは、結果を変えるための参加よりも、自分の言い分を聞いてもらうための参加のほうが、やや強く関連していた点です(ρ = .65 と .59)。公正感では .64 と .51 でした(pp. 622–624)。一方、面談で話した時間の長さとの関連は弱いものでした(ρ = .30, p. 623)。

    著者らは、人は評価の場で意見を言う機会は当然あるものと考えているが、結果まで変えられるとは必ずしも思っていない、と解釈しています(p. 626)。ただし相関の研究で、少数の研究に基づく分析も多いため、著者自身が結果は暫定的だとしています(p. 628)。また、ここで調べているのは評価への反応で、評価の点数そのものではありません(p. 620)。

    • Cawley, Keeping & Levy (1998). Participation in the performance appraisal process and employee reactions: A meta-analytic review of field investigations. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
  5. 調査(相関)

    評価が、成果より上司との関係で決まっていないか

    79件の研究のメタ分析では、上司が答えた関係の質(LMX)は、上司がつける業績評価とは r = .41 で関連していましたが、客観的な業績との関連は r = .10 にとどまりました(Gerstner & Day, 1997, p. 833)。評価が関係の質に左右されうることを示す材料ですが、同じ上司が関係と評価の両方に答えているため、その分の水増しがありえます(p. 832)。

  6. 実験で確認

    成果が上がっても、評価がついてこないことはあるのか

    米国の行政機関の書類処理部門で、上司に部下との関係づくりの訓練(計12時間)をし、部下一人ひとりと面談させた現場実験があります。関係づくりの訓練だけを受けた部署では、コンピューターで記録された生産性が、ほかの部署(職務設計の変更と組み合わせて訓練を受けた部署を含む)より16.3%伸び、品質も落ちませんでした(Graen, Novak & Sommerkamp, 1982, pp. 120, 125)。ところが、上司がつける業績評価は上がらず、評価と実際の生産性との相関は .22 にとどまりました(pp. 121–122)。この研究では、一人ひとりの生産性の記録は上司には見えないようになっていました(p. 116)。

    評価する側が成果の記録を見られないと、成果の変化は評価にそのまま反映されないことを示す例です。「評価されない」と感じたときは、自分の成果が評価する人に見えているのかを確かめる価値があります。ただし一つの組織の7つの部署を単位に割り当てた研究で、無作為に割り当てたかどうかは論文に書かれていません。

    • Graen, Novak & Sommerkamp (1982). The effects of leader–member exchange and job design on productivity and satisfaction: Testing a dual attachment model. Organizational Behavior and Human Performance. DOI ↗
  7. 実験で確認

    説明や扱われ方は、上司が変われば変わるのか

    米国の4つの病院で、給与を約10%引き下げられた看護師を調べた準実験があります。上司が「対人的公正」(礼儀正しく敬意をもって接する、十分に説明する)の訓練を受けた病院では、受けていない病院に比べて、看護師の不眠が早く和らぎ、辞める人も少なくなっていました(Greenberg, 2006, pp. 61, 64)。ただし病院を単位にした準実験で、給与の引き下げの伝え方自体にも問題があったと著者は認めています(pp. 65–66)。

    カナダの労働組合の支部を訓練群と比較群に分けた準実験でも、役員が手続きの公正と対人的な公正について計12時間の訓練を受けた支部では、3か月後に組合員の公正感(d = 0.31)と、仲間が評価した協力的な行動が高まっていました(Skarlicki & Latham, 1996, pp. 162–165)。訓練には「公正に見えるように振る舞う」内容も含まれており(p. 163)、どの部分が効いたのかは分かっていません(p. 168)。どちらの研究も、公正さは個人の感じ方だけでなく、上司の振る舞いで変えられることを示す材料です。

    • Greenberg (2006). Losing sleep over organizational injustice: Attenuating insomniac reactions to underpayment inequity with supervisory training in interactional justice. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
    • Skarlicki & Latham (1996). Increasing citizenship behavior within a labor union: A test of organizational justice theory. Journal of Applied Psychology. DOI ↗
  8. 実験で確認

    評価の伝え方(フィードバック)は、次の成果につながっているか

    フィードバックの効果を調べた607の比較をまとめたメタ分析では、フィードバックは平均すると成果を高めていましたが(d = 0.41)、3分の1を超える比較では、かえって成果を下げていました(Kluger & DeNisi, 1996, pp. 254, 258)。ほめ言葉を含むものは効果が小さく(d = .09。含まないもの .34)、やる気をくじく内容のものは平均するとかえって成果を下げていました(−.14)。前回からの変化を伝えるもの(.55。そうでないもの .28)や、正しいやり方を示すもの(.43。そうでないもの .25)は、効果が大きい傾向がありました(Table 2, p. 273)。一方、良い知らせか悪い知らせかによる違いは、はっきりしませんでした(p. 276)。

    著者らは、フィードバックが自分自身に注意を向けさせるほど効果が下がり、課題そのものに注意を向けさせるほど効果が上がると考えました(p. 254)。これは著者らの理論で、データは全体の傾向としてはこれを支持しましたが、仕組みそのものを測ったわけではありません(p. 276)。研究の多くは実験室の課題で、職場の人事評価を直接調べたものではありません。

    • Kluger & DeNisi (1996). The effects of feedback interventions on performance: A historical review, a meta-analysis, and a preliminary feedback intervention theory. Psychological Bulletin. DOI ↗
  9. 調査(相関)

    約束されていたものが、守られなかったのか

    昇進や役割の約束が守られなかったと感じているなら、それは単なる期待外れではなく心理的契約の破棄として受け止められ、強い反応を生みやすいとされます。51件の研究のメタ分析では、破棄の知覚は経営陣への不信(ρ = .65)や職務満足の低さ(ρ = −.54)と強く関連していました(Zhao et al., 2007, p. 663)。著者らは組織の側への示唆として、非現実的な約束をしない、守れない理由を説明する、部分的にでも約束を果たす、を挙げています(pp. 671–672)。

  10. 理論からの観点

    頑張りが成果につながらないのか、成果が評価につながらないのか

    期待理論は、努力が成果につながるという見込み、成果が報酬につながるという見込み、報酬の魅力を区別します。77件の研究のメタ分析では、モデル全体で業績を予測する力は弱く(r = .19)、著者はモデル全体ではなく、この三つの構成要素を分けて使うよう勧めています(Van Eerde & Thierry, 1996, p. 582)。「評価されない」がどの段階のつまずきなのかを分けて考える道具として使うのがよいでしょう。

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ここに挙げた理論は、疑問を考えるための手がかりです。どの理論がよく当てはまるかは、組織や状況によって変わります。

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