研究法

相関と因果(内生性)Correlation, Causation, and Endogeneity

二つのことが一緒に起きていても、一方が他方の原因だとは限らない。共通の原因、逆向きの影響、自分で選んだことによる偏りがあると、関連の大きさだけでなく向きまで誤ることがある。「関連している」と書くだけでは足りず、因果と言うには何が足りないのかを示す必要がある。

この項目が扱う問い「〜と関連している」という研究結果から、どこまで「〜が効く」と言えるのか。
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「関連している」と書くだけでは足りない

たとえば、30歳までに大学を出た人の40歳時点の週収が平均1,500ドル、出ていない人が約700ドルだったとする(Rohrer, 2018, p. 29 の架空の例)。この差から、大学を出ると週収が800ドル増える、とは結論できない。大学を出た人と出ていない人は、収入に影響するほかの多くの点でも違っているはずで、その違いだけで収入の差がすべて説明され、学歴の効果はゼロということもありうる(同 p. 29)。

こうした弱みに対して、観察データを使う研究は、「関連」や「結びつき」といった言葉を選び、因果の言い方を避けることが多い。Rohrer (2018, p. 28) は、これを多くの場合満足のいく解決ではないと批判した。実質的な問いの多くは因果の効果を問うものであり、言葉を注意深く選んでも、読み手が因果の結論に飛びつくのは防げないからである(同 p. 28)。代わりに求めているのは、因果の結論にどんな仮定が必要かを理解し、それを透明に伝えることである(同 p. 39)。

このサイトの身近な疑問のページも、「〜と関連している」と書く方針をとってきた。この項目では、その書き方で何が足りないのか、代わりに何を書けばよいのかを説明する。身近な疑問のページで理由ごとに付けている「根拠の種類」の札と、「因果と言うには足りないこと」の欄の読み方は、最後から二つめの節にまとめた。

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相関が因果にならない道筋

Antonakis et al. (2010, p. 1087) は Kenny (1979) を引き、x が y の原因だと言うための条件を三つ挙げる。x が y より時間的に先であること、x と y の関連が偶然を超えて確かであること、その関連がほかの原因で説明されないことである。最も難しいのは三つめである(同 p. 1088)。三つめを崩す道筋は、大きく分けて次のようなものである。

第一は交絡、つまり両方に影響する共通の原因である。上の例で知能が学歴にも収入にも影響しているなら、学歴と収入の相関には、学歴の効果に加えて、知能を通じた見かけの関連が混ざる(Rohrer, 2018, pp. 29, 31)。経営学の例では、職務満足が業績を高めると主張するとき、否定的な感情の傾向を考えに入れないと、それが満足とも業績とも関わっているために推定が偏る(Hill et al., 2021, p. 112)。

第二は逆の因果である。原因と結果が互いに影響し合うこともある(Antonakis et al., 2010, p. 1088)。たとえば、研究開発費が業績に影響し、業績も研究開発費に影響する(Hill et al., 2021, Table 2, p. 113)。Antonakis et al. (2010, p. 1088) は、x が時間的に先だというだけで原因とは言えず、時間の順序は必要だが十分ではない条件だと書いている。

第三は選択である。人や企業は、何をするかを自分で選ぶ。人は自分に合う仕事を探し、合わない人は業績を測る前に辞めているかもしれない(Hill et al., 2021, Table 2, p. 113)。Hamilton & Nickerson (2003, p. 53) の例では、部品を内製する企業は、内製で高い利益を上げられる生産能力をもっているのかもしれない。そうであれば、内製を選んだ企業と外部から買うことを選んだ企業の利益を比べても、「買った企業が内製していたらどうなったか」という問いには答えられない(同 p. 53)。

Hill et al. (2021, p. 112) は、Wooldridge (2010) にならって、こうした問題を欠落変数、同時性、測定誤差、選択の四つに整理している。x と y の関係が一部でもほかの理由によるとき、x は内生的であるという(Antonakis et al., 2010, p. 1088)。そのとき x の係数は単なる相関としてさえ解釈できず、本当の値はもっと大きいかもしれないし、小さいかもしれないし、符号が逆かもしれない(同 p. 1088)。Hamilton & Nickerson (2003, p. 52) も、偏りの向きと大きさは事前には予測しにくいと書いている。Antonakis et al. (2010, p. 1088) は、論文の限界の欄に「逆の因果がありうる」「非実験データなので関連にすぎない」と書き添えることも、内生的であれば意味をなさないとまで述べている。

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統制変数を増やせば解決するか

よく使われる対処は、ほかの変数を統計的に統制することである。Rohrer (2018, p. 31) によれば、統制の目的は、原因とされる変数と結果の変数を結ぶ見かけの経路(バックドア・パス)をふさぐことにある。そうした経路をすべてふさげれば、観察データだけでも因果の効果を特定できる(同 p. 31)。ただしそれは、関係する変数を一つも見落としていないという、多くの場合非常に強い仮定のもとでの話である(同 p. 31)。

逆に、統制してはいけない変数もある。原因とされる変数と結果の変数の両方から影響を受ける変数(合流点)で分析を絞ったり統制したりすると、本来はない関連が生まれうる(Rohrer, 2018, p. 34)。Rohrer の思考実験では、研究の方法の厳密さと新しさのあいだに関係がなくても、どちらも論文の出版されやすさを高めるなら、出版された論文だけを見ると、厳密な研究ほど新しさに欠けるという見かけの負の関連が現れる(p. 35)。過去の恋人を振り返ると、魅力的な人ほど知的でなかったように見えるのも、同じ仕組みでありうる(pp. 35–36)。原因とされる変数から影響を受ける媒介変数も、副作用を考えずに統制すべきではない(p. 34)。

Rohrer (2018, p. 28) は、統制変数の選び方が、その分野の慣習と手元のデータにある変数で決まりがちだと指摘する。統制変数を多く入れるほど因果の推論が良くなるという考えは、よくて方法論上の都市伝説だとする見方を引き、そうしたモデルが「ごみ箱回帰」と呼ばれてきたことも紹介している(同 p. 28)。正しい変数を入れても、測定誤差を無視すれば結論を誤りうる(同 p. 28)。

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経営学の研究はどこまで対処しているか

Antonakis et al. (2010) は、1999〜2008年に経営学・応用心理学の主要7誌に載ったリーダーシップ研究から無作為に選んだ110本を調べた(pp. 1110–1111)。因果の主張を無効にしうる条件のうち、少なくとも66%、多ければ90%に対処していなかった(p. 1086; p. 1112)。

戦略論では、Hamilton & Nickerson (2003, p. 53) が、1990〜2001年に Strategic Management Journal に載った実証論文426本のうち、内生性を計量的に明示して補正していたのは27本だけだと報告した。業績を直接扱う論文に絞っても、196本のうち169本(86%)が内生性を統制していなかった(p. 75, 注2)。ただし著者らは、すべての研究に内生性の心配があるわけではないとも断っている(p. 53)。

内生性に触れる論文が増えても、問題は残っている。Hill et al. (2021) は、2014〜2018年に主要5誌で内生性に触れた実証論文435本を調べた(pp. 112–113)。頑健性の検定で内生性を確かめた論文のうち、結果が変わったと報告したのは2本(1.5%)だけだった(p. 114)。著者らは、結果が変わらなかった論文だけが公表されるなら、文献全体が楽観的に偏るおそれがあると書いている(p. 115)。また、対処や頑健性の検定をした論文で挙げられた内生性の原因411件のうち、約4分の1(102件、24.8%)は、どの原因なのかを特定せず、「結果は内生性の影響を受けているかもしれない」といった一般的な書き方にとどまっていた(pp. 115–116)。

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補正の手法にも落とし穴がある

代表的な補正の手法が操作変数である。原因とされる変数(戦略の選択など)には影響するが、結果(業績など)には直接影響しない変数を使って、効果を推定する(Hamilton & Nickerson, 2003, p. 67)。操作変数には、原因とされる変数と十分に相関していること(関連性)と、結果の式の誤差と相関しないこと(外生性)の二つが求められる(Bascle, 2008, pp. 295–296)。

良い操作変数は見つけにくい。Hamilton & Nickerson (2003, p. 67) は、多くの戦略研究のデータで、戦略の選択には影響するが業績には影響しない操作変数を見つけるのは難しいと書いている。操作変数なしに選択の補正を行うと、推定は非常に不安定で信頼できないものになりやすい(同 p. 67)。

補正がかえって悪くすることもある。Semadeni et al. (2014) のシミュレーションでは、操作変数そのものがわずかに内生的なだけで、推定値は、弱い操作変数で約1,000%、中程度の強さの操作変数でも約300%大きくなった(p. 1076)。この偏りは、補正しない通常の回帰よりも悪い(p. 1077)。著者らの言葉では、「治療が病気より悪い」(p. 1071)。とはいえ、補正しない推定が安全なわけでもない。同じシミュレーションで、原因とされる変数の内生性が低い水準でも、本当は効果がないのに、通常の回帰は61%の場合で統計的に有意な正の関係を報告した(p. 1075)。

使い方の報告も十分ではない。Semadeni et al. (2014, pp. 1072–1073) が、2005〜2012年の Strategic Management Journal で2段階最小二乗法を使った24本を調べたところ、操作変数の強さを検定していたのは3本、操作変数の内生性を検定していたのは5本だった。Hill et al. (2021, p. 125) の調査でも、操作変数を使った論文の28.6%が、何を操作変数にしたのかを説明していなかった。

それでも、補正によって結論が変わった例はある。Hamilton & Nickerson (2003, p. 52) は、新規に拠点を設ける海外進出は買収による進出より生き残りやすいという従来の結果が、Shaver (1998) で内生性を補正すると有意でなくなったことを紹介している。Bascle (2008, p. 308) も、多角化企業の配当が企業価値を高めるという結果が、通常の回帰では強く有意だったのに、三つの操作変数法ではいずれも裏づけられなかった例を示した。

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実験なら万全か、観察研究は無力か

処置を無作為に割り当てた実験では、処置を受けた群と受けなかった群は始めの時点でほぼ同じになる。そのため、受けなかった群が「もし受けなかったら」の比較相手になり、群の差がそのまま処置の効果になる(Antonakis et al., 2010, p. 1088)。群が無作為に分けられていなければ、この比較は成り立たない(同 p. 1088)。

しかし、実験にも仮定は要る。実験は限られた実験室で行われることがあり、その結果を日常に当てはめるには別の仮定が必要になる(Rohrer, 2018, p. 28)。Rohrer は、大事なのは研究の設計が仮定に頼るかどうかではなく、どの仮定が必要かだとする(同 p. 28)。無作為化実験は内的妥当性への強い確信を与えるが、対象の現象にとっての意味や重要性はしばしば疑わしい、という Rozin (2001) の言葉も引いている(p. 39)。

逆に、観察データからでも、説得力のある因果の議論はできる。1950年代、たばこ業界は、遺伝的な素因が喫煙と肺がんの両方を引き起こすと主張した。この主張を退けたのは、人間での無作為化実験ではなく、さまざまな統制と標本の設計を用いた観察研究の一貫した結果、動物実験、もっともらしい仕組みの提示だった(Rohrer, 2018, p. 39)。一卵性双生児どうしを比べる研究のように、設計によって遺伝や家庭環境をまとめて統制する方法もある(同 p. 34)。どの方法が向いているかは、問いごとに判断するしかないとされる(同 p. 39)。

内生性の指摘を、どんな研究でも退けられる万能の武器にすべきでもない。Hill et al. (2021, p. 134) は、内生性を得体の知れない「お化け」として持ち出すのではなく、査読の側も具体的な原因を名指しして批判すべきだとしている。一つの研究で内生性の懸念をすべて取り除くことは不可能であり、異なる設計と分析の研究を重ねることで、ようやく確信が得られる(同 p. 138)。

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このサイトの「根拠の種類」の読み方

身近な疑問のページでは、理由ごとに、根拠になっている研究の種類を三つの札で示している。札は根拠の強さのおおまかな目安で、どの札も「確かめられた」という意味ではない。

実験・介入の研究がある:原因とされるものを研究者が割り当てた研究があるという意味である。無作為に割り当てていれば、群どうしのもともとの違いによる説明は退けられる(Antonakis et al., 2010, p. 1088)。ただし、実験室の結果が職場やサークルに当てはまるかは、別の仮定の問題である(Rohrer, 2018, p. 28)。

時間を追った研究がある:同じ人や組織を複数の時点で測った研究があるという意味である。原因が先に起きたことは確かめやすくなるが、時間の順序は必要条件にすぎない(Antonakis et al., 2010, p. 1088)。同じ企業を何年も追うデータでは、時間がたっても変わらない企業の特徴の影響は取り除けるが、戦略を変えた理由そのものが業績にも影響していれば、推定は偏りうる(Hamilton & Nickerson, 2003, p. 71)。互いに影響し合う関係を解きほぐすには、ふつうの研究より細かい時間の間隔で測ったデータが要ることもある(Rohrer, 2018, p. 39)。

相関研究が中心:一時点で測った研究が大半だという意味である。この場合、どちらが原因なのか、共通の原因がないのかは、データからは区別しにくい。リーダー・メンバー交換理論のページで「関係が良いから評価が高いのか、評価の高い部下との関係が良くなるのかは区別できない」と書いているのは、その例である。

因果と言うには足りないこと:上の道筋や、同じ回答者に尋ねたことによる歪み(共通方法分散)などのうち、読んだ文献が述べている限界を書いている。Hill et al. (2021, p. 134) が研究者に求めているように、「内生性がありうる」とひとまとめにせず、どの問題が残っているのかを具体的に書くことを目指している。

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論文を読むときの目安

第一に、因果を言いたいのかどうかを見る。Rohrer (2018, p. 28) は、観察データにもとづく研究の多くは、意味のある因果の効果について何か言えると示唆するからこそ出版されているのだろう、とみている。因果を言いたいのなら、そのためにどんな仮定を置いたのかを著者が書いているかを確かめる(Rohrer, 2018, p. 39)。

第二に、「内生性に対処した」の中身を見る。どの原因(欠落変数、同時性、測定誤差、選択)に、なぜその手法で対処したのかが書かれているか。Hill et al. (2021, p. 138) は、「内生性を統制した」といった包括的な言い方ではなく、「この結論は、Z が X と Y の両方の原因だという別の説明に対して頑健である」のような限定した言い方を勧めている。

第三に、操作変数を使っていれば、何を操作変数にしたのか、なぜ結果に直接影響しないと言えるのか、強さの検定の結果が報告されているかを見る。Semadeni et al. (2014, p. 1078) は、「内生性を検定し、問題ないと分かった」と書くだけの報告は受け入れられないとしている。

第四に、統制変数の選び方に理由があるかを見る。統制変数が多いことは、それだけでは強みにならない(Rohrer, 2018, p. 34)。

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主な文献

  • Antonakis, J., Bendahan, S., Jacquart, P., & Lalive, R. (2010). On making causal claims: A review and recommendations. The Leadership Quarterly. DOI ↗内生性の源を整理し、リーダーシップ研究110本の多くが因果の主張に必要な条件に対処していないことを示した。
  • Rohrer, J. M. (2018). Thinking clearly about correlations and causation: Graphical causal models for observational data. Advances in Methods and Practices in Psychological Science. DOI ↗因果グラフを使って、統制すべき変数と統制してはいけない変数(合流点・媒介)を区別する入門。
  • Hamilton, B. H., & Nickerson, J. A. (2003). Correcting for endogeneity in strategic management research. Strategic Organization. DOI ↗戦略の選択が業績の見込みで決まることによる内生性と、その補正法を解説した。
  • Bascle, G. (2008). Controlling for endogeneity with instrumental variables in strategic management research. Strategic Organization. DOI ↗操作変数の条件と検定、弱い操作変数の危険を整理した。
  • Semadeni, M., Withers, M. C., & Certo, S. T. (2014). The perils of endogeneity and instrumental variables in strategy research: Understanding through simulations. Strategic Management Journal. DOI ↗質の低い操作変数による補正が、補正しないより悪くなりうることをシミュレーションで示した。
  • Hill, A. D., Johnson, S. G., Greco, L. M., O’Boyle, E. H., & Walter, S. L. (2021). Endogeneity: A review and agenda for the methodology-practice divide affecting micro and macro research. Journal of Management. DOI ↗内生性に触れた実証論文435本を調べ、原因の特定と手法の正当化が不十分なことを示し、書き方を提案した。
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批判と境界条件

この項目の根拠にも限界がある。Antonakis et al. (2010) が調べたのはリーダーシップ研究だけで、ほかの分野にも当てはまるという見方は著者らの推測である(p. 1113)。Hamilton & Nickerson (2003) の数値は1990〜2001年の1誌についてのもので、Shaver (1998) の結果はこの項目では原文を読まず、Hamilton & Nickerson (2003) を通して紹介している。Hill et al. (2021) の対象は、戦略論の専門誌 Strategic Management Journal の論文が435本中249本を占め、応用心理学の Journal of Applied Psychology は13本にとどまる(Table 3, p. 114; p. 115)。Semadeni et al. (2014) の結果は、観測数500などの限られた設定でのシミュレーションにもとづく(p. 1073)。

Rohrer (2018, p. 39) 自身も、ある変数が交絡なのか、合流点なのか、媒介なのかが本当に分からない場合があると認めている。また、この項目は量的研究についての議論である。Antonakis et al. (2010, p. 1088) は、因果を確かに示せるのは適切に行われた量的研究だけだとまで書いているが、事例研究などの質的研究の側の考え方は、この項目では扱っていない。

研究上の位置づけ

分類Methodological issue
地図の区画組織行動
分析単位個人 · 組織
理論系譜経済学 · 心理学
REFERENCES

出典

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