組織学習
研究分野「組織学習」(Organizational Learning)に分類される項目です(理論 13・概念 1・論文 2)。ひとつの理論が複数の分野に属することがあります。
理論・視点 13
理論・視点吸収能力
Absorptive Capacity
外部の新しい知識の価値に気づき、それを取り込み、自社の商業的な成果に結びつける能力は、それまでに蓄積してきた関連知識の量に左右される、とする理論。
問い外部の同じ知識に触れても、それを生かせる企業と生かせない企業があるのはなぜか。
アーキテクチュラル・イノベーション
Architectural Innovation
製品の部品そのものはほとんど変えず、部品どうしのつなぎ方(アーキテクチャ)を組み替える革新は、既存企業の知識や組織の仕組みを役に立たなくするため、見かけ以上に既存企業を苦しめる、とする理論。
問い小さな技術変化にすぎないように見える革新が、なぜ既存企業を失敗させるのか。
実践共同体
Communities of Practice
学習は、頭の中に知識を取り込むことではなく、ある実践を共有する人々の集まりに加わり、周辺から次第に中心へと参加を深めていく過程だとする視点。
問い人は仕事や技能を、教室や研修の外で、どのように身につけていくのか。
意図的戦略と創発的戦略
Deliberate and Emergent Strategy
実際に実現する戦略は、事前に計画された意図的戦略だけでなく、日々の行動の積み重ねから結果として形づくられる創発的戦略が混ざり合ったものだ、という視点。
問い企業の戦略は、計画どおりにつくられるのか、それとも行動の中から生まれるのか。
ダイバーシティ・パースペクティブ
Diversity Perspectives
職場の多様性が成果につながるかどうかは、多様性の量ではなく、その集団のメンバーが多様性をどう意味づけ、仕事にどう活かすべきものと考えているか(ダイバーシティ・パースペクティブ)によって左右される、とする理論。
問い同じように人種や文化が多様な職場でも、多様性が学びと成果につながる職場と、緊張や分断を生む職場があるのはなぜか。
ダイナミック・ケイパビリティ
Dynamic Capabilities
環境が速く変わる中で競争優位を保つには、今ある資源を持つだけでは足りない。社内外の資源を組み合わせ直し、作り変える能力が重要だ、とする理論。
問い変化の激しい環境で、企業はどのようにして競争優位を保ち続けるのか。
探索と活用(知の探索・知の深化)
Exploration and Exploitation
組織の学習には、新しい可能性を試す「探索」と、既にあるものを磨く「活用」がある。活用は確実で早く成果が出るため優先されやすいが、探索を怠ると長期的な適応力を失う、とする枠組み。
問い組織は、新しいことへの挑戦と、今の強みを磨くことの間で、資源をどう配分すべきか。
リーン生産方式
Lean Production
自動車産業の国際比較から、大量生産よりも少ない人手・空間・在庫・開発期間で、品質と多様性を両立する生産と企業運営のやり方を「リーン(ぜい肉のない)生産」と名づけ、それが大量生産に代わる普遍的な方式として世界に広がるとする視点。
問い同じ自動車をつくるのに、なぜ一部の企業は、より少ない資源で、より高い品質と多様な製品を実現できるのか。
知識創造理論(SECIモデル)
Organizational Knowledge Creation (SECI Model)
組織の新しい知識は、言葉にしにくい暗黙知と、言葉や数字で表せる形式知が、共同化・表出化・連結化・内面化の四つの過程を通じて変換され、個人から組織へと螺旋状に広がることで生まれる、とする理論。
問い組織は、どのようにして新しい知識を生み出すのか。
心理的安全性
Psychological Safety
チームのメンバーが「このチームでは、対人関係上のリスクをとっても安全だ」という信念を共有していると、フィードバックを求める、誤りについて話し合うといった学習行動が起こりやすくなり、それがチームの成果につながる、とする理論。
問いなぜ一部のチームでは、メンバーが率直に発言し、失敗から学べるのか。
シングル・ループ学習とダブル・ループ学習
Single- and Double-Loop Learning
組織の学習には、決められた目標や前提の範囲で行動を修正するシングル・ループ学習と、その目標や前提自体を問い直すダブル・ループ学習の二つがある、とする理論。
問い組織は、なぜ誤りを直せても、誤りを生む前提そのものは変えにくいのか。
トランザクティブ・メモリー(交換記憶)
Transactive Memory
集団では、全員がすべてを覚えるのではなく、「誰が何を知っているか」を互いに把握し、記憶を分担している。この分担の仕組みが集団の知的な働きを支えるとする理論。
問い集団は、メンバーの知識をどのように分担し、必要なときに引き出しているのか。
ウプサラ・モデル
Uppsala Internationalization Model
企業の国際化は、海外市場についての経験的な知識を少しずつ蓄え、それに応じて海外市場への資源の投入を段階的に増やしていく過程であり、知識と投入が互いに強め合いながら進む、とする理論。
問い企業はなぜ、いきなり海外に大きな投資をするのではなく、少しずつ段階を踏んで国際化していくのか。
概念・現象 1
概念・現象組織学習
Organizational Learning
組織が経験から推論を引き出し、それをルーティンや知識として蓄え、将来の行動を変えていく現象。個人の学習の総和ではなく、組織としての記憶や手順に残る点が特徴である。
問い組織は、経験から何をどのように学び、それはどこに蓄えられるのか。
論文・書籍 2
論文・書籍Exploration and Exploitation in Organizational Learning
組織学習における探索と活用March 1991 · Organization Science
新しい可能性の探索と、既存の確実性の活用の間の配分を、組織学習の中心問題として定式化した論文。二つのシミュレーション・モデルで、活用に偏る学習が長期的には組織を弱めうることを示した。
問い組織は、新しいことを試す探索と、今あるものを磨く活用に、資源をどう配分すべきか。
Psychological Safety and Learning Behavior in Work Teams
職場のチームにおける心理的安全性と学習行動Edmondson 1999 · Administrative Science Quarterly
「チームの心理的安全性」という概念を提示し、オフィス家具メーカーの51チームを対象に、質的調査とアンケートを組み合わせて検証した論文。心理的安全性は学習行動を通じてチームの成果につながり、リーダーのコーチングや組織の支援は心理的安全性を通じて学習行動に影響することを示した。
問い職場のチームでは、なぜ誤りを話し合ったり助けを求めたりするところと、しないところがあるのか。