Exploration and Exploitation in Organizational Learning組織学習における探索と活用
原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)
新しい可能性の探索と、既存の確実性の活用の関係を組織学習の文脈で論じ、両者の間で資源を配分することの難しさを分析した論文。二つのシミュレーション・モデルで、活用に偏る学習が長期的には組織を弱めうることを示した。
目次
研究上の問い
March は、組織の適応を、新しい可能性の探索(exploration)と、既存の確実性の活用(exploitation)の間の配分の問題として捉えた。探索には、探索、変異、リスクテイク、実験、遊び、柔軟性、発見、革新といった言葉で表される活動が含まれる。活用には、洗練、選択、生産、効率、選別、実施、実行といった活動が含まれる。
中心的な主張
活用の成果は、確実で、すぐに、身近なところに現れる。探索の成果は、不確実で、時間がかかり、学習が起きた場所から離れたところに現れ、しばしばマイナスにもなる。このため、学習する組織は活用を優先しやすい。探索ばかりで活用しない組織は、実験の費用を払うばかりでその利益の多くを得られない。逆に活用ばかりの組織は、最適ではない状態に安定してしまう。両者の適切なバランスが、生き残りと繁栄の鍵になる。
モデル1:組織の規範と個人の相互学習
一つ目のモデルでは、組織の規範(コード)と個人の信念が互いに学び合う。個人は組織の規範に社会化され、組織の規範は、規範よりも現実を正しく捉えている個人から学ぶ。シミュレーションの結果、個人の社会化が速すぎると、組織の知識の水準はかえって低くなった。平均的な社会化の速さが同じなら、速く社会化される個人と遅く社会化される個人が混じっているほうが、均質な場合よりも到達する知識の水準は高かった。人員の入れ替わりについては、社会化が速い場合には適度な入れ替わりが組織の規範の知識を高め、環境が変化する場合には知識の劣化を防いだ。ただし社会化が遅い場合には、入れ替わりが増えるほど規範の知識は下がった。
モデル2:相対的な順位をめぐる競争
二つ目のモデルでは、少数の勝者だけが報われる競争を扱う。この場合、平均的な成果を高めるだけでなく、成果のばらつきも重要になる。学習によって平均を上げつつばらつきを減らすことは、競争相手が多いときには、首位に立つ可能性をかえって下げうる。
身近な例
たとえば、新人が入るとすぐに「うちのやり方」を徹底的に教え込む職場があるとしよう。短期的には仕事が早く回るようになるが、新人が持ち込んだ別のやり方が職場に取り入れられる機会もなくなる。しばらく「うちのやり方」に染まらない人がいるほうが、職場全体が学ぶ余地は大きくなる。
代表的な展開研究
- Levinthal, D. A., & March, J. G. (1993). The myopia of learning. Strategic Management Journal. DOI ↗学習が、目先の成果、身近な範囲、成功した経験に偏りやすいこと(学習の近視眼)を論じ、探索と活用のバランスをとる難しさを掘り下げた。
- Gupta, A. K., Smith, K. G., & Shalley, C. E. (2006). The interplay between exploration and exploitation. Academy of Management Journal. DOI ↗探索と活用の定義、両者が一つの連続体の両端なのか独立した次元なのか、同時に追求するのか交互に追求するのか、といった論点を整理した。
批判と境界条件
この論文の主張は、March 自身が「単純なモデル」「小さなモデル」と呼ぶ、単純化したシミュレーション・モデルから導かれたものであり(pp. 73, 85)、実際の組織を観察したデータによるものではない。後の研究では、概念の曖昧さが指摘されている。Gupta, Smith & Shalley (2006) は、探索と活用を学習の種類で分けるのか、学習の有無で分けるのかが研究によって異なること、両者を一つの連続体の両端とみるか、別々の次元とみるかによって、両立できるかどうかの結論が変わることを整理した(pp. 693–697)。
研究上の位置づけ
出典
- 出版社の論文ページ ↗
- Levinthal & March (1993), Strategic Management Journal ↗
- Gupta, Smith & Shalley (2006), Academy of Management Journal ↗
本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。