理論・視点
Organizational Ambidexterity両利きの経営(組織の両利き)
一言で言うと既存事業を磨く力と、新しい事業を切り開く力を、一つの組織の中で同時に持つこと。そのために、異なる文化を持つ部門を分けつつ、トップが統合する、といった仕組みが必要だとする理論。
説明したい問い組織は、既存事業の効率化と新事業の開拓を、どうすれば両立できるのか。
原典Tushman, M. L., & O'Reilly, C. A. (1996)
Ambidextrous organizations: Managing evolutionary and revolutionary change
Ambidextrous organizations: Managing evolutionary and revolutionary change
分類Theory
分析単位個人 · 組織
理論系譜進化論 · 行動論
01
中核的な問い
成功している企業ほど、既存事業に最適化され、新しい技術や市場への対応が遅れがちである。既存事業を捨てずに、新しい事業も育てるにはどうすればよいのか。
02
主張とメカニズム
Tushman & O'Reilly (1996) は、企業が少しずつの改善(進化的変化)と大きな変革(革命的変化)の両方を行える能力を「両利き」と呼んだ。その代表的な方法が、探索のための部門を既存事業から切り離し、独自の構造・文化・評価の仕組みを持たせつつ、経営トップが両者を戦略的に統合する「構造的両利き」である。
その後、Gibson & Birkinshaw (2004) は、個人が日々の仕事の中で効率と適応の両方を行えるような環境をつくる「文脈的両利き」を提示した。両利きの実現方法には、組織の分離、時間の切り替え、個人の行動、などいくつかの型がある。
03
身近な例
ある製造業の大企業が、社内に新規事業の専門組織を立ち上げ、本社とは異なる評価基準や意思決定の速さを認める。一方で、既存事業の販売網や技術を新規事業に使えるよう、社長直轄で調整する。
04
主要概念
- 構造的両利き
- 探索と活用を別々の部門に分け、トップで統合する方法。
- 文脈的両利き
- 個人が一つの職場の中で、効率と適応の両方に取り組めるようにする方法。
- 連続的両利き
- 時期によって探索と活用を切り替える方法。
05
代表的な展開研究
- He, Z.-L., & Wong, P.-K. (2004). Exploration vs. exploitation: An empirical test of the ambidexterity hypothesis. Organization Science. DOI ↗探索と活用の相互作用が、企業の売上成長と正の関係にあることを示した。
- Gibson, C. B., & Birkinshaw, J. (2004). The antecedents, consequences, and mediating role of organizational ambidexterity. Academy of Management Journal. DOI ↗「文脈的両利き」を提示し、業績との関係を実証した。
- O'Reilly, C. A., & Tushman, M. L. (2013). Organizational ambidexterity: Past, present, and future. Academy of Management Perspectives. DOI ↗研究の展開と今後の課題を整理した。
06
批判と境界条件
「両利き」の測り方(探索と活用の積か、差か)が研究ごとに異なり、結果の比較が難しい。また、両利きが本当に業績を高めるのかは、企業規模や環境の不確実性などの条件によって変わるという結果もある。分離した新規事業部門が、結局は既存事業に飲み込まれてしまう実務上の難しさも指摘されている。
出典
- 原典Tushman, M. L., & O'Reilly, C. A. (1996). Ambidextrous organizations: Managing evolutionary and revolutionary change. California Management Review. DOI ↗
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