理論・視点

Paradox Theoryパラドックス理論

一言で言うと

組織には、短期と長期、効率と創造、統制と自由のように、矛盾しながらも両方必要な要素がつきまとう。どちらかを選ぶのではなく、両方を抱え続けることが長期的な成果につながる、とする理論。

説明したい問い組織は、互いに矛盾するが両方とも欠かせない要求に、どう向き合えばよいのか。
原典Smith, W. K., & Lewis, M. W. (2011)
Toward a theory of paradox: A dynamic equilibrium model of organizing
分類Theory
分析単位個人 · チーム · 組織
理論系譜プロセス · 認知
01

中核的な問い

「利益か、社会貢献か」「既存事業か、新規事業か」。経営は多くの二者択一を迫るように見える。しかし、どちらか一方を選ぶと、やがて捨てた側の問題が大きくなる。矛盾とどう付き合えばよいのか。

02

主張とメカニズム

Smith & Lewis (2011) は、パラドックスを「矛盾しつつも相互に関連し、同時に存在し、時間を通じて持続する要素」と定義した。そして、組織の主要なパラドックスを、学習(新旧)、所属(個人と集団)、組織化(統制と柔軟性)、遂行(多様な目標)の四つに分類した。

人は矛盾に直面すると、片方を選んで不安を減らそうとする(防衛反応)。これは短期的には楽だが、悪循環を生む。反対に、矛盾を受け入れ、両方を行き来しながら調整し続けると、「動的な均衡」が保たれ、長期的な持続性につながるとした。

03

身近な例

ある経営者が、「今期の利益を守る」という要求と「将来の新規事業に投資する」という要求の間で、会議ごとに比重を変えながら両方を追い続ける。これはぶれているのではなく、矛盾を管理する一つのやり方だと理解できる。

04

主要概念

パラドックス(paradox)
矛盾しつつ相互に関連し、持続的に存在する要素の組み合わせ。
ジレンマ(dilemma)
どちらか一方を選べば解決する二者択一。パラドックスとは区別される。
動的均衡(dynamic equilibrium)
矛盾する要素の間を行き来しながら、全体として保たれるバランス。
05

代表的な展開研究

  • Lewis, M. W. (2000). Exploring paradox: Toward a more comprehensive guide. Academy of Management Review. DOI ↗パラドックスの認識、強化の悪循環、管理の仕方を整理した。
  • Smith, W. K. (2014). Dynamic decision making: A model of senior leaders managing strategic paradoxes. Academy of Management Journal. DOI ↗経営陣が探索と活用の矛盾を、決定を行き来させながら管理する過程を示した。
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批判と境界条件

何でも「パラドックス」と呼べてしまい、ジレンマや緊張関係との区別があいまいになりやすい。また、「両方を抱えるべき」という主張が規範的で、どんな場合に選択した方がよいのかの条件は十分に示されていない。

REFERENCES

出典

  • 原典Smith, W. K., & Lewis, M. W. (2011). Toward a theory of paradox: A dynamic equilibrium model of organizing. Academy of Management Review. DOI ↗

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