理論・視点

コンティンジェンシー理論(条件適合理論)Contingency Theory

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

「どんな場合にも最善の組織」は存在しない。環境や技術などの条件に組織の形が合っているとき、成果が高まる、とする理論。

目次
説明したい問い組織の最適な構造は、どのような条件によって変わるのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

古典的な管理論は、組織の目的に照らして最適な分業のあり方を探した。これに対しこの理論は、どんな条件にも当てはまる「唯一最善の方法」はないと考える。同じ構造でも、条件によって成果が違うからである。どんな条件のとき、どんな組織が合うのか。

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主張とメカニズム

Lawrence & Lorsch (1967) の論文は、技術や製品の変化が速い化学工業の六つの組織を比べている。そこでは、研究・販売・製造の部門が、それぞれ向き合う環境の確かさに応じて、目標や時間感覚、対人志向、構造の面で大きく異なっていた(分化)。成果の高い組織は、分化の程度が高いと同時に、部門どうしの協力(統合)も高い水準で実現していた。分化が大きい部門どうしほど統合は難しく、両者は本来相反する。

Lawrence & Lorsch (1967) によれば、それより前に Burns & Stalker (1961) は、確実な環境で利益を上げている組織では公式化された構造の程度が高く(機械的組織)、不確実で変化する環境で利益を上げている組織ではその程度が低い(有機的組織)ことを見出していた。Child (1972) は、この二つの研究を含む何人もの論者が、環境の変動が大きく不確実なほど、役割を絶えず定義し直し、頻繁な会議と横方向のやりとりで調整する適応的な構造が望ましい、という同じ結論に達したとまとめている。構造そのものではなく、構造と条件の「適合(fit)」が成果を決めるというのが共通の主張である。

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身近な例

規制が厳しく変化の少ない業務(経理など)ではマニュアルと承認手続きが機能する。一方、市場の変化が速い新規事業では、同じ手続きが足かせになる。一つの会社の中でも、部門ごとに合う組織の形が違う。

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主要概念

分化(differentiation)
部門ごとに目標、時間感覚、対人志向、構造が異なる程度。
統合(integration)
組織の課題を果たすために、分化した部門の努力をひとつにまとめる過程と、その達成の程度。統合を担う部門やチームは、そのための手段(統合の仕組み)である。
適合(fit)
組織の特徴と、環境・技術・規模などの条件との整合性。何をもって「合っている」とみなすかには、交互作用、一致、プロファイルからの乖離など複数の捉え方があり、それぞれ検証方法も異なる。
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代表的な展開研究

  • Galbraith, J. R. (1974). Organization design: An information processing view. Interfaces. DOI ↗不確実性が高いほど処理すべき情報が増えると考え、組織設計を情報処理の観点から整理した。
  • Drazin, R., & Van de Ven, A. H. (1985). Alternative forms of fit in contingency theory. Administrative Science Quarterly. DOI ↗「適合」の意味(選択・相互作用・システム)を区別し、検証方法を明確にした。
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批判と境界条件

Child (1972, p. 2) は、環境・技術・規模といった状況要因が組織構造を決めるとみなす当時の有力なモデルを、組織を動かす権力をもつ人々の選択の働きを十分に考えていないと批判した。Child によれば、多くの組織は事業を行う環境をある程度選ぶことができ、大きな組織なら環境の条件そのものに影響を与えることもできる (p. 4)。Child はこれを、環境決定論的な見方に対する重要な留保だと述べた (p. 4)。また、成果が満足できる水準を上回っていれば、その余裕を使って、意思決定者は多少の費用をかけても自分たちの好む構造を選べる (p. 11)。そこで Child は、構造の違いを直接生むのは、構造を決める権力をもつ人々(支配的連合)の戦略的選択だと主張した (p. 16)。なお、Child 自身の枠組みでも、人員・技術・構造の配置が実際にどれだけ合っているか(goodness of fit)が効率を決めるとされている (p. 17)。

Schoonhoven (1981, p. 351) は、構造が環境に「ふさわしい」「一致する」「適合する」といった表現は示唆に富むがあいまいであり、理論にはより高い精密さが必要だと指摘した。たとえば、二つの変数の組み合わせが成果を左右するという主張は、統計的には交互作用を予測していることになるが、そのことがはっきり認識されてこなかった (p. 351)。また、線形の関係を当然のように仮定すると、「低い同士」の組み合わせも「高い同士」の組み合わせも同じようにうまくいくという、理論に隠れた対称性の仮定が見えなくなる (p. 353)。Schoonhoven は、こうした問題が、この理論の実証結果がまちまちであることの多くを説明するとみた (p. 349)。

Schoonhoven は、米国の17病院の手術部門のデータで、Galbraith (1973) の議論から導いた仮説を検証した (pp. 349, 358)。その結果、手順の標準化をゆるめることや意思決定の分権化は、作業の不確実性が低い部門ではかえって成果を下げ、不確実性が高い部門では成果を上げていた (pp. 366–367)。効果の向きが途中で逆転するため、「不確実性が高いほど効果が大きい」という Galbraith 型の仮説は支持されなかった (pp. 366, 368)。ただし、標本は大規模な病院に偏っていた (pp. 358–359)。それでも著者は、この結果は「すべては状況しだい」という考え方そのものとは矛盾せず、既存の議論をより精密にするものだと位置づけている (p. 371)。

Venkatraman (1989, p. 423) は、戦略研究では「適合」が理論の重要な要素とされながら、言葉で述べた適合と統計的な検証方法が対応していないと指摘した。研究者は手近な数式を選んでその妥当性を確かめずに検定しており、この対応の欠如が、研究結果が一貫しない大きな理由かもしれないという (p. 423)。また、適合を交互作用として検定すると、適合があることと、適合の効果とを切り分けられない (p. 427)。この場合の適合は特定の成果指標との関係で定まるため、その意味は他の成果指標には一般化できないかもしれない (p. 428)。

研究上の位置づけ

原典Lawrence, P. R., & Lorsch, J. W. (1967)
Organization and Environment: Managing Differentiation and Integration
分類理論
地図の区画組織・意思決定
分析単位組織
理論系譜社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。