理論・視点
Population Ecology個体群生態学
一言で言うと個々の組織は大きく変わることが難しい。組織の世界の変化は、主に新しい組織の誕生と古い組織の消滅によって起こる、と生物の進化になぞらえて説明する理論。
説明したい問い組織の多様性はなぜ生まれ、環境の変化に応じてどう入れ替わっていくのか。
原典Hannan, M. T., & Freeman, J. (1977)
The population ecology of organizations
The population ecology of organizations
分類Theory
分析単位組織 · コミュニティ
理論系譜進化論 · 社会学
01
中核的な問い
経営学の多くは、組織が環境に合わせて自らを変える(適応する)ことを想定する。しかし実際には、多くの組織は変われずに消えていく。組織の世界の変化を、個々の適応ではなく集団(個体群)の入れ替わりとして捉えるとどうなるか。
02
主張とメカニズム
Hannan & Freeman (1977) は、組織の個体群を単位として、誕生と死亡の率を分析する枠組みを提示した。環境が特定の形の組織を「選択」し、合わない組織は淘汰される。
その前提にあるのが構造的慣性である。Hannan & Freeman (1984) は、信頼性と説明責任を求められる組織ほど、変わりにくい構造を持つこと、そして変化しようとすること自体が死亡の危険を高めることを論じた。また、ある種類の組織の数(密度)が増えると、はじめは正統性が高まって誕生が増え、やがて競争が激しくなって死亡が増えるという「密度依存」のモデルも発展した。
03
身近な例
フィルムカメラの時代からデジタルへの移行期に、既存の大手企業の多くは大きく変われず、新しいメーカーが台頭した。業界全体の姿は、個々の企業の変身ではなく、企業の入れ替わりによって変わった、と見ることができる。
04
主要概念
- 個体群(population)
- 同じ種類の資源に依存する、似た形の組織の集まり。
- 構造的慣性(structural inertia)
- 組織の中核的な特徴が、環境の変化に比べてゆっくりとしか変わらない性質。
- 密度依存(density dependence)
- 個体群内の組織の数が、誕生率と死亡率に影響する関係。
05
代表的な展開研究
- Hannan, M. T., & Freeman, J. (1984). Structural inertia and organizational change. American Sociological Review. DOI ↗慣性が選択の結果として生じること、中核の変化が死亡リスクを高めることを論じた。
- Carroll, G. R., & Hannan, M. T. (1989). Density dependence in the evolution of populations of newspaper organizations. American Sociological Review. DOI ↗新聞社の個体群で、密度と誕生・死亡の関係を実証した。
06
批判と境界条件
経営者の意図や戦略の役割を軽視しているとの批判が強い。実際には大きく変身して生き残る企業もある。また、正統性や競争といったメカニズムを、組織の数という間接的な指標で測っている点も問題とされる。
出典
- 原典Hannan, M. T., & Freeman, J. (1977). The population ecology of organizations. American Journal of Sociology. DOI ↗
本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。