理論・視点

制度的同型化Institutional Isomorphism

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

同じ分野の組織は、市場での競争や効率の追求によってだけでなく、国家や専門職を通じた圧力によって、互いに似た形になっていく。DiMaggio & Powell (1983) はこれを制度的同型化と呼び、強制・模倣・規範という三つのメカニズムを示した。

目次
説明したい問い組織は変わろうとしているのに、なぜ同じ分野の組織どうしは互いに似通っていくのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

これまでの組織理論の多くは、組織がなぜ多様なのかを説明しようとしてきた。DiMaggio & Powell (1983) は逆に、組織の形や慣行がなぜ驚くほど似通っているのかを問うた。Weber は、官僚制化の最も重要な原因を、市場での競争だと考えた。著者たちは、官僚制化と合理化を進める原動力が、市場から国家と専門職へ移ったと主張する。今日の組織の変化は、組織を効率的にするとは限らないまま、組織どうしを似せていく過程から生じている、というのである。そこから一つの逆説が生まれる。組織を変えようとする合理的な行為者たちが、結果として組織をますます似たものにしていく。

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主張とメカニズム

DiMaggio & Powell (1983) が分析の単位としたのは「組織フィールド」である。これは、主要な供給者、資源や製品の消費者、規制機関、似た製品やサービスを生み出す組織などを合わせた、制度的な生活の一領域を指す。フィールドは、組織間の相互作用が増え、支配と連合の構造がはっきりし、扱う情報量が増え、共通の事業に携わっているという相互の自覚が生まれることで成立する。著者はこの過程を「構造化」と呼ぶ。フィールドの初期には組織の形は多様である。しかし、いったん確立すると、同質化へ向かう強い力が働く。初期の採用者は成果を高めるために新しい慣行を採り入れる。だが普及がある閾値を超えると、採用は成果の改善ではなく正統性をもたらすものになる。

この同質化をとらえる概念が「同型化」である。著者は同型化を、競争による同型化と制度による同型化の二つに分ける。競争による同型化は、自由で開かれた競争のある分野には当てはまる。しかし、それだけでは現代の組織の世界を十分に説明できない。組織は資源や顧客だけでなく、政治的な力と制度的な正統性をめぐっても競い合っているからである。

制度的同型化には三つのメカニズムがある。第一は強制的同型化である。依存している他組織からの公式・非公式の圧力や、社会の文化的な期待によって起こる。たとえば、環境規制に合わせて汚染防止技術を採り入れることや、税法の要件を満たすために会計士を雇うことがこれにあたる。第二は模倣的同型化である。技術がよく理解されていないとき、目標があいまいなとき、組織は正統だ、あるいは成功していると見える他組織を手本にする。コンサルティング会社や業界団体は、少数のモデルを広める役割を果たす。第三は規範的同型化である。これは主に専門職化から生じる。大学での教育や専門職のネットワークを通じて、似た考え方をもつ、ほとんど入れ替え可能な人材が各組織に配置される。三つは分析上の区別であり、現実にははっきり分かれるとは限らない。

重要なのは、これらの過程が、組織内部の効率を高めるという証拠がなくても進むと考えられる点である。組織の効果が高まるとすれば、それは他の組織と似ていることで、取引しやすくなり、人材を集めやすくなり、正統で評判のよい組織と認められやすくなるからである。著者はこうした議論から、組織レベルとフィールドレベルの仮説を示した。たとえば、他組織への依存が大きいほど、その組織に似ていく。手段と目的の関係が不確実なほど、成功していると見える組織を手本にする。フィールド内の専門職化が進むほど、同型化も進む。

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身近な例

たとえば、ある業界で新しい人事評価の仕組みが話題になっているとしよう。最初に導入した数社は、自社の課題を解決するために採り入れた。やがて、取引先の大手企業が、取引の条件として同じ仕組みを求めるようになる。これは強制的同型化にあたる。効果がはっきりしないまま、ほかの会社も「評判のよい会社がやっているから」と導入する。これは模倣的同型化である。さらに、同じ研修や専門職の団体で学んだ人事担当者たちが、それを当然のやり方だと考えて自社に広める。これは規範的同型化である。数年後、業界の各社の人事評価の仕組みはよく似たものになる。ただし、それで各社の効率が上がったかどうかは分からない。

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主要概念

組織フィールド(organizational field)
主要な供給者、資源や製品の消費者、規制機関、似た製品やサービスを生み出す組織など、全体として制度的な生活の一領域をなす組織の集まり。
同型化(isomorphism)
同じ環境条件に直面する集団の中で、ある単位をほかの単位に似せていく、制約的な過程。著者は Hawley の説明に依拠している。
強制的同型化(coercive isomorphism)
依存している他組織からの公式・非公式の圧力と、社会の文化的な期待によって生じる同型化。
模倣的同型化(mimetic isomorphism)
不確実性への標準的な反応として、他組織を手本にすることで生じる同型化。
規範的同型化(normative isomorphism)
主に専門職化から生じる同型化。専門職化とは、ある職業の人々が仕事の条件と方法を定め、自らの自律性の認知的な基盤と正統性を確立しようとする集合的な取り組みである。
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代表的な展開研究

  • Meyer, J. W., & Rowan, B. (1977). Institutionalized organizations: Formal structure as myth and ceremony. American Journal of Sociology. DOI ↗組織の公式構造の多くは、社会に制度化された「合理化された神話」を反映したものだと論じた。神話に同型化した組織は正統性と資源を得る一方で、公式構造を実際の活動から切り離す(脱連結)とした。
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批判と境界条件

DiMaggio & Powell 自身が、示した仮説の実証的な検証はこの論文の範囲を超えると述べている。仮説は予測要因を網羅したものではなく、規模、技術、外部資源の集中度などを一定とする前提に立っている。また、関係の非線形性や天井効果、同質性を測るための指標については論じていないと明記している。組織は、ある次元では多様で、別の次元ではきわめて同質でありうることも認めている。

三つのメカニズムについても、著者は分析上の類型であり、実際にははっきり区別できるとは限らないと断っている。技術的な機能による変化とそれ以外の変化の相対的な重要性も、切り分けようとはしていない。

また、著者は Meyer & Rowan (1977) との予測の違いを明示している。Meyer & Rowan は、外部で正統化された慣行と組織内部の行動とがゆるやかに結びついていると見た。これに対し DiMaggio & Powell は、儀式的な慣行と並行して内部でも実質的な変化が起こり、その結果、同質性が高まると予想した。どちらが当てはまるのかを、この論文は検証していない。その後の研究について、Bromley & Powell (2012, pp. 493–494) の整理によれば、Kelly & Dobbin (1998) は、企業が外部の制裁を避けるために当初は儀式的に導入した差別禁止の方針のために職位や部署がつくられ、それらが独自の動きを始めて、組織内の専門職が新たな方針をつくったことを示した。

研究上の位置づけ

原典DiMaggio, P. J., & Powell, W. W. (1983)
The iron cage revisited: Institutional isomorphism and collective rationality in organizational fields
分類理論
分析単位組織 · コミュニティ
理論系譜制度論 · 社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。