理論・視点

組織の正統性Organizational Legitimacy

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

組織の存在や行動が、社会の規範や価値観に照らして「適切だ」と受け入れられている状態。正統性があると資源や支持を得やすく、組織は正統性を獲得・維持・回復しようとする。

目次
説明したい問い組織は、社会から「ふさわしい存在だ」と認められるために何をするのか。

この理論で考えられる身近な疑問

01

中核的な問い

組織は、製品や業績だけで評価されるわけではない。社会から「まっとうな存在だ」と認められることは、なぜ重要で、それはどのように得られるのか。

02

主張とメカニズム

Suchman (1995) は正統性を「ある主体の行動が、社会的に構成された規範・価値・信念・定義の体系の中で、望ましい、ふさわしい、あるいは適切だとみなされているという一般化された認識または前提」と定義した。

さらに三つのタイプを区別した。自分たちの利益になるから支持される実用的正統性、正しいことをしているから支持される道徳的正統性、筋の通った説明がつき理解できること、さらには当たり前の存在として疑われないことにもとづく認知的正統性である。正統性を得る戦略として、Suchman は三つを挙げた。今の環境にいる相手の求めに合わせる、今のやり方を支持してくれる相手を求めて環境を選ぶ、新しい支持者や正統性の新しい根拠となる考え方をつくり出して環境そのものを変える、の三つで、受け身の順応から能動的な働きかけまでの幅がある。正統性を保つことと、失った正統性を取り戻すことについては、それぞれ別に戦略を論じている。

03

身近な例

ライドシェアのような新しいサービスは、当初「違法な白タク」とみなされることがある。事業者は安全基準を自主的に設けたり、行政と協議したり、利用者の声を発信したりして、徐々に「当たり前のサービス」としての地位を得ようとする。

04

主要概念

実用的正統性
利害関係者が自分の利益になると判断することで生じる支持。
道徳的正統性
組織の行動が「正しい」と規範的に評価されることで生じる支持。
認知的正統性
組織やその活動に筋の通った説明がつき理解できること、さらには当然視されて疑問を持たれないことにもとづく正統性。
05

代表的な展開研究

  • Deephouse, D. L. (1996). Does isomorphism legitimate?. Academy of Management Journal. DOI ↗銀行の戦略が同業他社に近いほど、規制当局やメディアから正統とみなされやすいことを示した。
  • Zimmerman, M. A., & Zeitz, G. J. (2002). Beyond survival: Achieving new venture growth by building legitimacy. Academy of Management Review. DOI ↗新しい企業が正統性を資源として獲得し、成長につなげる過程を論じた。正統性を「適切さ、受容、望ましさについての社会的判断」と定義し、社会の受容と支持を得るために越える必要がある正統性の閾値を論じた。
06

批判と境界条件

正統性と評判や地位との区別は、十分に研究されてこなかった(Deephouse & Carter, 2005, p. 330; Bitektine, 2011, p. 160)。Deephouse & Carter (2005, p. 330) は、両者が似た先行要因と、資源を得やすくなるという似た帰結をもつため、概念が大きく重なっていると指摘した。そのうえで、正統性は規範や期待に従うことで得られる社会的な受容、評判は組織どうしの比較だと区別した(p. 332)。米国の銀行の分析では、同業他社に似た戦略は正統性を高めたが、評判への効果は銀行の評判の高さによって違った(p. 329)。Bitektine (2011, p. 163) は、評価する側から見ると、正統性・評判・地位はそれぞれ別の問いに答える判断だと整理している。

正統性が「誰から見て」のものかも問題になる。Bitektine (2011, p. 154) によれば、正統性を与える評価者は分野ごとに異なり、すべての評価者が同じように重要なわけではない。実証研究でよく扱われてきたのは、メディアと規制当局から見た正統性である(pp. 154–155)。原典の Suchman (1995, p. 594) も、正統性は組織の持ち物ではなく、見る側(観衆)との関係であり、断片化した制度環境では、すべての派閥を満たすことはもちろん、見分けることさえほぼ不可能になりうると述べていた。Suddaby et al. (2017, p. 465) の整理でも、正統性は期待の異なる多くの評価者から与えられ、組織がそのすべての要求に応えるのは難しく、不可能なこともある。Deephouse & Carter (2005, p. 351) も、一つの業界と二つの利害関係者(金融界と一般の人々)に絞って調べたことを、自らの研究の限界に挙げている。

研究者によって正統性のとらえ方そのものが違う。Suddaby et al. (2017, p. 451) は、正統性を組織がもつ資源や属性とみる見方、相互作用の過程とみる見方、評価者の知覚や判断とみる見方の三つを区別し、前提の違いから研究者どうしが「すれ違って」いると述べた(p. 468)。資源とみる見方については、Deephouse & Suchman (2008) の指摘を引き、正統性の新しい要素が次々に提案されるのに、実証されるものは少ないと述べている(p. 458)。また Suddaby et al. (2017, p. 454) の整理によれば、Aldrich & Ruef (2006) は、Suchman (1995) の実用的正統性を、正統性ではなく組織の学習の程度を表すものだとして退けている。ただし著者たちは、三つの見方は根本的に異なるが、異なる主体の立場から見た、互いに補い合う見方だとしている(p. 469)。

正統性をどう測るかも難しい。個体群生態学の密度依存モデルは、正統性を組織の数(密度)で間接的に表したが、Zucker (1989, p. 542) は、それでは正統性の効果を確かめたことにならないと批判した。これに対し Carroll & Hannan (1989, p. 546) は、人々が何を当たり前と思っているかを直接尋ねる方法には信頼性や妥当性の問題があり、個別の出来事を指標にすると事後的に都合のよい指標を選びがちになると応じている。

研究上の位置づけ

原典Suchman, M. C. (1995)
Managing legitimacy: Strategic and institutional approaches
分類概念
分析単位組織
理論系譜制度論 · 社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。