理論・視点

ステークホルダー理論Stakeholder Theory

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

企業は株主だけのものではない。従業員、顧客、取引先、地域社会など、企業に影響を与え、影響を受けるすべての人々(ステークホルダー)の利害を考えて経営すべきだ、とする理論。

目次
説明したい問い企業は誰のために経営されるべきで、多様な利害をどう調整するのか。

この理論で考えられる身近な疑問

01

中核的な問い

企業の目的は株主利益の最大化なのか。それとも、企業に関わる多くの人々の利益を考えるべきなのか。多くの利害がぶつかるとき、経営者は誰を優先すべきか。

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主張とメカニズム

Donaldson & Preston (1995) によれば、Freeman (1984) は、ステークホルダーを、企業に「影響を与える、または影響を受ける」あらゆるもの、という広い意味で定義した。また Freeman (1984) は、多くのステークホルダー集団と新しい戦略上の課題が現れたことで、企業についての従来の見方を描き直す必要があると論じたという。

Donaldson & Preston (1995) は、この理論が三つの側面を持つと整理した。企業が実際にどう振る舞っているかを記述する側面、ステークホルダーに配慮すると業績が上がるかを問う手段的な側面、そして配慮すべきだと主張する規範的な側面である。そのうえで、三つの側面は互いに支え合っているが、理論の根本にあるのは規範的な側面だと結論づけた。

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身近な例

工場を閉鎖するかどうかを決めるとき、株主にとってはコスト削減になっても、従業員や地域経済には大きな打撃となる。経営者は、雇用の移転支援や段階的な縮小などで、関係者の利害を調整しようとする。

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主要概念

ステークホルダー(stakeholder)
組織の目的の達成に影響を与えうる、またはその影響を受ける、あらゆる集団や個人(Freeman, 1984 の定義)。Donaldson & Preston (1995) は、企業の行動によって実際に、または将来に害や便益を受ける者として特定されるとした。
株主主権(shareholder primacy)
企業の目的を株主の利益の最大化に置く考え方。
ステークホルダーの顕著性(salience)
経営者が、競合するステークホルダーの要求にどの程度優先順位を与えるか。Mitchell, Agle & Wood (1997) は、パワー・正統性・緊急性という三つの属性のうち、経営者がその関係者に備わっていると知覚する属性の数が多いほど、顕著性は高くなると提案した。
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代表的な展開研究

  • Donaldson, T., & Preston, L. E. (1995). The stakeholder theory of the corporation: Concepts, evidence, and implications. Academy of Management Review. DOI ↗記述的・手段的・規範的という三つの側面を区別し、理論の根本にあるのは規範的な側面だと論じた。
  • Mitchell, R. K., Agle, B. R., & Wood, D. J. (1997). Toward a theory of stakeholder identification and salience: Defining the principle of who and what really counts. Academy of Management Review. DOI ↗ステークホルダーを、パワー・正統性・緊急性という三つの属性のうち、どれを持つか(持つとみなされるか)によって七つの類型に分けた。パワーは、ある主体が別の主体に、そうでなければしなかったことをさせられる関係、正統性は、ある主体の行為が社会的に構築された規範や価値観の体系の中で望ましく適切だという一般的な知覚、緊急性は、関係者の要求がすぐの対応を求める程度である。経営者が知覚する属性の数が多いほど、その関係者の顕著性(経営者がその要求に与える優先度)は高くなると提案した。
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批判と境界条件

「ステークホルダー」の意味や範囲が定まっていない、という批判がある。Donaldson & Preston (1995, p. 66) は、ステークホルダーやステークホルダー理論という概念が、論者によって大きく違う意味で使われ、多様でしばしば矛盾する証拠や議論で支えられていると指摘した。誰を正当なステークホルダーとみなすかについても、文献の答えには狭すぎるものと広すぎるものがあるという (p. 85)。広すぎる定義の例が、Freeman (1984) の、企業に「影響を与える、または影響を受ける」あらゆるもの、という定義である (p. 86)。これでは、企業に何らかの影響を与えても、企業に特定のステークを持たない者まで含まれてしまう (p. 86)。その例としてよく挙がるのが、競合相手とメディアである (p. 86)。

業績を高めるという主張の証拠も十分ではない。ステークホルダーの原則を採る企業ほど財務業績がよいという仮説は、直接には検証されていない (Donaldson & Preston, 1995, p. 77)。社会的業績と財務業績の関係を調べた研究の多くも、ステークホルダー・マネジメントを測る信頼できる指標を含んでいない (p. 78)。この関係を理論的に論じた Hill & Jones (1992) と Freeman & Evan (1990) も、最後は規範的な論拠に頼っているという (p. 80)。

経営者の自己利益を見逃しやすくなるという懸念もある。株主志向からステークホルダー志向に移ると、経営者は幅広い関係者のためと言いながら自らの権力や報酬を増やせるので、そうした行動を見つけて抑えにくくなる、というものである (Donaldson & Preston, 1995, p. 87)。Orts (1992) は、これを株主以外への配慮を認める州法の「最大の危険」とみたが、それでもこの考え方を支持した (p. 87)。これに対し Donaldson & Preston (1995, p. 87) は、従来の株主中心のモデルも経営者の自己利益を抑えられていないと応じた。また、自分たちのモデルは、どれか一つの関係者だけに過度の注意を向けることを禁じているという (p. 87)。ただし、誰がステークホルダーで、その利害をどう評価するかという長年の問題は、この理論では解決されないと、彼ら自身が述べている (p. 67)。

研究上の位置づけ

原典Freeman, R. E. (1984)
Strategic Management: A Stakeholder Approach
分類理論
分析単位組織
理論系譜社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。