理論・視点

資源依存理論Resource Dependence Theory

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

組織は必要な資源を外部に頼っており、その資源を握る相手にパワーを持たれ、行動を制約される。そのため組織は、合併、提携、取締役の選任、政治活動、経営者の交代などを通じて依存を管理しようとする、とする理論。

目次
説明したい問い組織は、外部の他者への依存をどのように管理しようとするのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

組織は必要な資源を自分だけでは賄えず、外部の組織に頼っている。Hillman, Withers & Collins (2009) の整理によれば、Pfeffer & Salancik (1978) の資源依存理論は、企業を、外部環境の不確定な条件(contingencies)に依存する開放システムとして捉える。Hillman らが引く Pfeffer & Salancik (1978: 1) の言葉では、「組織の行動を理解するには、その行動の文脈、つまり組織の生態を理解しなければならない」。

では、外部への依存は組織の行動をどう制約するのか。そして、環境に制約されながらも、経営者は依存と不確実性を減らすために何ができるのか。これが資源依存理論の中核的な問いである。

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主張とメカニズム

Hillman, Withers & Collins (2009) の整理によれば、資源依存理論の基本的な論理は、Pfeffer (1987) が次のように示したものである。第一に、企業間関係や社会を理解する基本単位は組織である。第二に、組織は自律的ではなく、他の組織との相互依存の網に制約されている。第三に、相互依存に、相手がどう動くかの不確実性が重なると、組織の存続と成功は不確かになる。第四に、そこで組織は外部との相互依存を管理しようとする。ただし、その行動は完全には成功せず、新たな依存のパターンを生む。第五に、こうした依存のパターンが組織間と組織内のパワーを生み、そのパワーが組織の行動に影響する。Hillman らは、依存と不確実性を減らそうとする行動の中心にパワーの概念を置き、Ulrich & Barney (1984) にならって、パワーを重要な資源に対する支配と定義する。組織は、他者が自分に対して持つパワーを減らし、しばしば自分が他者に対して持つパワーを増やそうとする。

依存の強さは何で決まるのか。Pfeffer (1972) は Thompson (1967) を引き、組織が相手に依存する度合いは、その相手が提供できる資源への必要性に比例し、ほかの相手が同じ資源を提供できる程度に反比例すると述べている。そのうえで Pfeffer (1972) は、依存に対処する戦略を整理した。依存から生じるパワーの行使を法や規範で封じる戦略、多角化によって特定の相手の重要性を下げる回避の戦略、そして相手を取り込む吸収の戦略である。吸収には、合併による全面的な吸収から、長期契約による今の取り決めの形式化、相手の代表者を取締役会に迎えるコオプテーション(部分的な吸収)まで、取り込みの程度の違いがある。

Hillman et al. (2009) は、Pfeffer & Salancik (1978) が挙げた、依存を減らすための五つの手段に沿って研究を整理している。合併・垂直統合、合弁などの組織間関係、取締役会、政治活動、経営者の交代である。合併は最も完全な吸収であり、合弁や提携は依存の部分的な吸収にとどまる。Hillman らによれば、Pfeffer & Salancik (1978) は、取締役が組織に四つの便益をもたらすとした。助言、環境との情報の経路、資源への優先的なアクセス、そして正統性である。政治活動については、Pfeffer & Salancik (1978) は、組織は政治的な手段によって自らに有利な環境を「つくり出そう」とすると述べている。経営者の交代については、外部の環境条件と依存が組織内のパワー配分を左右し、それが経営者の在任や選任に影響するというモデルが示されている。

取締役会は、Hillman らによれば資源依存理論が最も大きな影響を持った研究領域である。その初期の研究が Pfeffer (1972) である。Pfeffer は非金融企業80社の無作為標本を分析し、取締役の人数が売上規模や負債比率と関係すること、社内取締役の比率が負債比率や規制の有無と逆の関係にあることなどを示した。9つの仮説のうち8つが支持された。さらに、予測される社内・社外の構成から外れている企業ほど、業界水準と比べて利益率が低かった。Pfeffer は、取締役会の規模と構成は偶然に決まるものではなく、外部環境の条件に対する合理的な組織の反応だと結論づけた。

Hillman et al. (2009) は全体として、依存を抱える企業は実際に複数の手段でそれに対処しており、合併、組織間関係、取締役会については理論の基本モデルがおおむね正確だと結論づけている。一方、政治活動と経営者の交代は研究が少ない領域だとしている。

03

身近な例

たとえば、ある部品メーカーが、売上の大半を一社の完成品メーカーに頼っているとしよう。その完成品メーカーは他の部品メーカーからも調達できるが、部品メーカーのほうには代わりの売り先がほとんどない。この場合、部品メーカーの依存は大きく、相手は値下げや納期の要求を通しやすい。

資源依存理論の見方では、部品メーカーにはいくつかの打ち手がある。新しい顧客を開拓して、特定の相手の重要性を下げる(回避)。長期契約を結び、今の取引関係を形式化して継続を確かなものにする(吸収の一つの形)。設備投資の資金が必要なら、取引銀行の役員を取締役に迎え、資金の支援を得やすくする(コオプテーション)。ただし、どの打ち手も依存を完全にはなくせず、新しい取引先への依存という別の依存を生むこともある。

04

主要概念

依存(dependence)
Pfeffer (1972) が Thompson (1967) を引いて示した考え方では、組織がある相手に依存する度合いは、その相手が提供できる資源への必要性に比例し、ほかの相手が同じ資源を提供できる程度に反比例する。
パワー(power)
重要な資源に対する支配。Hillman et al. (2009) は、Ulrich & Barney (1984) にならってこう定義し、依存と不確実性を減らそうとする組織の行動の中心にある概念として位置づけている。
吸収(absorption)
依存する相手を組織の中に取り込むことで依存に対処する戦略。合併による全面的な吸収、長期契約による今の取り決めの形式化、コオプテーションによる部分的な吸収のように、取り込みの程度に違いがある(Pfeffer, 1972)。
コオプテーション(cooptation)
外部の重要な組織の代表者を取締役会などに迎え入れ、部分的に取り込むこと。Pfeffer (1972) によれば、ある程度の支配権と情報の秘匿を手放す代わりに、相手から継続的な支援の約束を得る戦略である。
パワーの不均衡と相互依存(power imbalance / mutual dependence)
Casciaro & Piskorski (2005) が、Emerson (1962) の交換理論にもとづいて区別した二者関係のパワーの二つの次元。前者は二つの組織の間のパワーの差(互いの依存の差)、後者は互いの依存の合計(または平均)を指す。
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代表的な展開研究

  • Hillman, A. J., Withers, M. C., & Collins, B. J. (2009). Resource dependence theory: A review. Journal of Management. DOI ↗Pfeffer & Salancik (1978) の刊行から30年の時点で、合併・垂直統合、合弁などの組織間関係、取締役会、政治活動、経営者の交代の五つの領域について、資源依存理論を用いた研究を整理し、今後の研究課題を示した。
  • Pfeffer, J. (1972). Size and composition of corporate boards of directors: The organization and its environment. Administrative Science Quarterly. DOI ↗企業80社の取締役会を分析し、取締役会の規模と構成が資本市場へのアクセスの必要や規制といった外部環境の条件と体系的に関係すること、予測される構成から外れた企業ほど業界水準より利益率が低いことを示した。
  • Casciaro, T., & Piskorski, M. J. (2005). Power imbalance, mutual dependence, and constraint absorption: A closer look at resource dependence theory. Administrative Science Quarterly. DOI ↗批判・再定式化。元の理論が一つにまとめていた依存を、パワーの不均衡と相互依存という二つの次元に分け、業種間の合併・買収の分析で、相互依存は吸収を促し、パワーの不均衡は妨げることを示した。
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批判と境界条件

Hillman et al. (2009) によれば、Pfeffer 自身が第2版(2003年)の序文で、組織が環境に制約され依存を管理しようとするという考えがあまりに当然視され、本来あるべきほど厳密に検証されていないと述べている。Hillman らはこれに異を唱え、企業、環境、依存を減らす行動の間の一般的な関係は十分に確立されており、合併、組織間関係、取締役会については理論の基本モデルが正確だとする。その一方で、理論そのものの発展や精緻化はあまり進んでいないと認めている。

Hillman らは、いくつかの限界を挙げている。第一に、五つの領域のどれについても、資源依存理論だけでは十分に説明できない。たとえば合併は、依存の大きさだけでなく、企業の歴史的な文脈や業界環境、制度的な規範などにも左右される。第二に、政治活動と経営者の交代は研究が少ない。第三に、複数の重要な依存が同時にあるとき、どれが優先されるのかを理論は特定していない。第四に、環境の変化に応じて取締役会の構成を変えることはほぼ当然とされているが、実証的な検証は少ない。第五に、理論が当てはまる範囲(境界条件)の研究が遅れており、アメリカ以外の文脈での検討も必要だとしている。

Casciaro & Piskorski (2005) は、元の理論のあいまいさを四つ指摘している。パワーの不均衡と相互依存を明確に区別せず、「相互依存(interdependence)」という一つの概念にまとめていたこと、規範的な処方と実際の予測を混同していること、理論が当てはまる範囲があいまいなこと、実証研究の多くが一方の依存だけを扱い、逆向きの依存を考慮していないこと、である。そのうえで1985〜2000年のアメリカ企業の業種間の合併・買収を分析し、相互依存は合併・買収を促すが、パワーの不均衡はむしろその妨げになることを示した。

Pfeffer (1972) 自身も、自らの分析の限界を認めている。社内取締役の比率のばらつきのうち説明できたのは約3分の1にとどまる。取締役会そのものが成果の違いを生むのか、単に組織の内向き・外向きの姿勢を反映しているだけなのかは、今後の研究を待つとした。また、分析は取締役の選任にコオプテーションの意図があることを前提としており、この戦略の有効性についての証拠を集める必要があると述べている。

研究上の位置づけ

原典Pfeffer, J., & Salancik, G. R. (1978)
The External Control of Organizations: A Resource Dependence Perspective
分類理論
地図の区画組織・意思決定
分析単位組織
理論系譜社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。