理論・視点

探索と活用(知の探索・知の深化)Exploration and Exploitation

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

組織の学習には、新しい可能性を試す「探索」と、既にあるものを磨く「活用」がある。活用は確実で早く成果が出るため優先されやすいが、探索を怠ると長期的な適応力を失う、とする枠組み。

目次
説明したい問い組織は、新しいことへの挑戦と、今の強みを磨くことの間で、資源をどう配分すべきか。

この理論で考えられる身近な疑問

01

中核的な問い

限られた資源を、確実に成果の出る既存の活動に使うか、成果が不確かな新しい活動に使うか。組織の学習と適応にとって、この配分はどんな意味を持つのか。

02

主張とメカニズム

March (1991) は、探索を「探索、変異、リスクテイク、実験、遊び、柔軟性、発見、革新」、活用を「洗練、選択、生産、効率、選別、実施、実行」といった言葉で特徴づけた。

活用の成果は確実で、時間的にも空間的にも近くに現れる。探索の成果は不確実で、時間的にも空間的にも遠く、しばしばマイナスになる。そのため組織は活用に偏りやすい。March (1991) は、探索ばかりの組織は実験の費用を払うばかりでその利益の多くを得られず、活用ばかりの組織は最適でない安定した状態に閉じ込められると述べた。

Gupta, Smith & Shalley (2006) は、March の議論を、両者がそれぞれ自己強化的だとまとめている。活用はしばしば早い成功をもたらし、その成功がさらに同じ方向の活用を促す(成功の罠)。探索は失敗しやすく、失敗がさらに新しいアイデアの探索を促す(失敗の罠)。

March は、組織の規範(コード)と個人が互いに学び合うモデルのシミュレーションで、新しいメンバーの社会化が比較的ゆっくり進むことや、適度な人員の入れ替わり(在籍者が去り、組織に染まっていない新人が入ること)が、個人の信念の多様性を保ち、長期的には組織の知識と個人の平均的な知識を高めることを示した。

03

身近な例

既存製品の改良には予算が付きやすいが、成功するか分からない新技術の研究は後回しにされがちである。その結果、数年後に市場が変わったとき、会社に新しい選択肢が残っていない、という事態が起こる。

04

主要概念

探索(exploration)
新しい知識や可能性を探し、試すこと。
活用(exploitation)
既存の知識や能力を洗練し、効率よく使うこと。
成功の罠(success trap)
活用が早い成功をもたらし、その成功がさらに同じ方向の活用を促すことで、活用から抜け出しにくくなる状態。
05

代表的な展開研究

  • Levinthal, D. A., & March, J. G. (1993). The myopia of learning. Strategic Management Journal. DOI ↗組織学習が短期・近接・成功に偏る「近視眼」を論じた。
  • Gupta, A. K., Smith, K. G., & Shalley, C. E. (2006). The interplay between exploration and exploitation. Academy of Management Journal. DOI ↗二つを一本の軸の両端とみるか、独立した二軸とみるかなど、概念上の論点を整理した。
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批判と境界条件

Gupta, Smith & Shalley (2006) は、March (1991) 以降の研究に残る曖昧さを四つの論点に整理した。第一は定義のぶれである。探索が新しい知識の追求を指すことにはおおむね合意があるが、活用が既存の知識を使うことだけを指すのか、種類の違う学習も含むのかについては合意がない(p. 693)。彼らは、学習の有無ではなく学習の種類や量で両者を区別するほうが March の議論に沿うとしたうえで、個人・チーム・組織のどの単位で見るかによって答えが変わりうるので、分析の単位を明示すべきだと述べた(pp. 694–695)。

第二は、両者を一本の軸の両端とみるか、独立した二つの軸とみるかである。必要な資源が乏しい場合や、一つの領域の中で考える場合には両者は互いに排他的になりやすいが、ゆるやかに結びついた複数の領域にまたがる場合には両立しうるとして、どちらか一方に決めることはできないとした(p. 697)。この前提によって、バランスの効果を確かめる方法(逆U字の関係をみるか、交互作用をみるか)も変わる。

第三に、バランスが必要だという点にはほぼ合意がある一方で、それをどう実現するかははっきりしていない。別々の部門や人が同時に追う両利き(ambidexterity)と、時期を分けて交互に行う断続平衡(punctuated equilibrium)が、主な候補として並んでいる(pp. 693–694, 697)。第四に、彼らは、すべての組織がバランスを取らなければならないという合意を疑い、条件によっては組織がどちらか一方に特化し、バランスは組織の間の取引を通じて社会全体で取られることもありうると論じた(pp. 694, 699)。

研究上の位置づけ

原典March, J. G. (1991)
Exploration and exploitation in organizational learning
分類理論
分析単位個人 · 組織
理論系譜行動論 · 進化論
REFERENCES

出典

  • 原典March, J. G. (1991). Exploration and exploitation in organizational learning. Organization Science. DOI ↗

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。