Transactive Memoryトランザクティブ・メモリー(交換記憶)
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一言で言うと集団では、全員がすべてを覚えるのではなく、「誰が何を知っているか」を互いに把握し、記憶を分担している。この分担の仕組みが集団の知的な働きを支えるとする理論。
Transactive memory: A contemporary analysis of the group mind
中核的な問い
一人の人間が覚えられることには限りがある。それでも、長く一緒にいる夫婦やチームは、個人よりも多くのことを覚えているように振る舞える。集団としての記憶は、どのような仕組みで成り立っているのか。
主張とメカニズム
Wegner (1987) は、親しい関係にある人々の間で、記憶が分担される仕組みをトランザクティブ・メモリーと名づけた。各人は自分の頭の中の記憶に加え、「この分野はあの人が詳しい」という、他者の知識についての知識を持つ。
新しい情報が入ると、それに詳しい人が覚える役を担う。必要なときには、詳しい人に尋ねて情報を引き出す。こうして各人が得意分野を深めつつ、集団全体では個人を超える量の知識を扱えるようになる。この仕組みは、メンバーが互いの専門を正しく把握し、信頼して頼れるときにうまく働く。
身近な例
ゼミの共同発表で、統計に強い人は分析、文章が得意な人は原稿、話がうまい人は発表を担う。質問が来たとき、他のメンバーは「それは○○さんが答えます」とすぐ振ることができる。メンバーが毎回入れ替わると、この「誰に聞けばよいか」の地図を作り直す必要がある。
主要概念
- トランザクティブ・メモリー・システム(transactive memory system)
- メンバー個人の記憶と、誰が何を知っているかについての共有された知識とが組み合わさった、集団の記憶の仕組み。
- 専門性(specialization)
- メンバーがそれぞれ異なる領域の知識を深めている程度。
- 信憑性(credibility)
- 他のメンバーの知識が正確で頼れると信じている程度。
- 調整(coordination)
- メンバーが知識を滞りなく組み合わせて作業できる程度。
代表的な展開研究
- Liang, D. W., Moreland, R., & Argote, L. (1995). Group versus individual training and group performance: The mediating role of transactive memory. Personality and Social Psychology Bulletin. DOI ↗メンバーが一緒に訓練を受けると交換記憶が育ち、それが集団の成果を高めることを実験で示した。
- Lewis, K. (2003). Measuring transactive memory systems in the field: Scale development and validation. Journal of Applied Psychology. DOI ↗専門性・信憑性・調整の三要素で交換記憶を測る尺度を開発し、職場のチーム研究を広げた。
批判と境界条件
メンバーの入れ替わりが激しい集団や、互いの専門を知る機会の少ない集団では成り立ちにくい。また、特定の人に知識が集中するため、その人が抜けると集団の記憶が大きく損なわれる。「誰が詳しいか」の認識が誤っていると、かえって誤った情報に頼ることになる点も境界条件として指摘される。
出典
- 原典Wegner, D. M. (1987). Transactive memory: A contemporary analysis of the group mind. Theories of Group Behavior. DOI ↗
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