強い紐帯と弱い紐帯Strong ties / Weak ties
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弱いつながりと強いつながりのどちらが役に立つのか、という論点。答えは、求めるものが新しい情報か、複雑な知識か、信頼や支援か、によって変わることが分かってきている。
目次
論点の出発点
Granovetter (1973) は、弱い紐帯が異なる集団の間を橋渡しするため、新しい情報を遠くまで運ぶと論じた。この主張は広く受け入れられた一方で、「では強い紐帯はどんなときに役立つのか」という問いを生んだ。
弱い紐帯を重視する立場
弱い紐帯は、自分とは異なる世界にいる相手とのつながりであることが多く、重複しない新しい情報をもたらす。Granovetter (1973) の転職の議論がその典型である。Rajkumar et al. (2022) は、LinkedIn の推薦アルゴリズムの設定を利用者に無作為に割り当てた大規模な実験を用いて、紐帯の強さを共通の知人の数で測ると中程度に弱い紐帯が、やりとりの量で測るともっとも弱い紐帯が、転職にもっとも役立ったことを示した。ただし、デジタル化の進んだ業界では弱い紐帯が転職を増やした一方、デジタル化の遅れた業界では強い紐帯が転職を増やしていた。
強い紐帯を重視する立場
強い紐帯は、信頼にもとづき、手間のかかる支援や細かな情報のやりとりを可能にする。Uzzi (1997) は、ニューヨークのアパレル産業(婦人向け高級ドレス部門)の23社を民族誌的に調べ、当事者が「親しい関係」「特別な関係」と呼ぶ埋め込まれた関係が信頼、きめ細かな情報の移転、共同での問題解決という三つの要素からなることを示した。ただし、その良い効果はある水準までで、関係が埋め込まれすぎると、外からのショックに弱くなったり、外の情報から切り離されたりするという逆説も指摘している。Bian (1997) は、中国の就職では、情報よりも影響力が重要な場面で強い紐帯が役立つことを示した。
両者を統合する議論
その後の研究では、「どちらが強いか」ではなく「何を求めるときにどちらが役立つか」が問われるようになった。Hansen (1999) は、弱い紐帯は有用な知識を探すことには役立つが、複雑な知識を移転するには強い紐帯のほうが適していることを示した。Levin & Cross (2004) は、強い紐帯が有用な知識の受け取りにつながるのは能力と善意にもとづく信頼を通じてであり、この信頼を統制すると、弱い紐帯のほうが有用な知識をもたらすことを示した。Aral & Van Alstyne (2011) は、構造的に多様なネットワークは新しい情報をもたらすが、相手とのやりとりの量(帯域)は小さくなるというトレードオフを論じ、人材紹介会社の電子メールのデータから、条件によっては橋渡しの紐帯がかえって新しい情報をもたらさないことを示した。
未解決の問い
紐帯の強さの効果を、ネットワークの構造(ブリッジかどうか)の効果とどう切り分けるか。紐帯の強さを、接触頻度、親密さ、信頼など、どの指標で測るか。求める資源の種類(情報、知識、影響力、支援)や、制度や文化の違いによって、結論はどう変わるか。観察データが中心の研究で、因果関係をどう特定するか。
代表的な展開研究
- Granovetter, M. S. (1973). The strength of weak ties. American Journal of Sociology. DOI ↗弱い紐帯が異なる集団の間の橋渡しになると論じた、この論点の出発点。
- Uzzi, B. (1997). Social structure and competition in interfirm networks: The paradox of embeddedness. Administrative Science Quarterly. DOI ↗埋め込まれた関係(当事者の言う「親しい関係」)の利点と、埋め込まれすぎの弊害(埋め込みの逆説)を示した。
- Hansen, M. T. (1999). The search-transfer problem: The role of weak ties in sharing knowledge across organization subunits. Administrative Science Quarterly. DOI ↗知識の探索には弱い紐帯、複雑な知識の移転には強い紐帯が適していることを示した。
- Levin, D. Z., & Cross, R. (2004). The strength of weak ties you can trust: The mediating role of trust in effective knowledge transfer. Management Science. DOI ↗3社の調査で、強い紐帯が有用な知識の受け取りにつながるのは能力と善意への信頼を通じてであり、信頼を統制すると弱い紐帯の利点が現れることを示した。
- Aral, S., & Van Alstyne, M. (2011). The diversity-bandwidth trade-off. American Journal of Sociology. DOI ↗ネットワークの構造的な多様性と、相手とのやりとりの量(帯域)の間のトレードオフを論じ、人材紹介会社の電子メールのデータで検証した。
- Rajkumar, K., Saint-Jacques, G., Bojinov, I., Brynjolfsson, E., & Aral, S. (2022). A causal test of the strength of weak ties. Science. DOI ↗大規模な実験で、共通の知人の数で測ると中程度に弱い紐帯が、やりとりの量で測るともっとも弱い紐帯が、転職にもっとも役立つことを示した。
研究上の位置づけ
出典
- Granovetter (1973), American Journal of Sociology ↗
- Uzzi (1997), Administrative Science Quarterly ↗
- Bian (1997), American Sociological Review ↗
- Hansen (1999), Administrative Science Quarterly ↗
- Levin & Cross (2004), Management Science ↗
- Aral & Van Alstyne (2011), American Journal of Sociology ↗
- Rajkumar et al. (2022), Science ↗
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