理論・視点

意味形成(センスメイキング)Sensemaking

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

人は、予想外の出来事に出会うと、手がかりを拾い、もっともらしい筋書きをつくり、それに基づいて動く。組織とは、この意味づけと行動が絶えず繰り返される過程だとする視点。

目次
説明したい問い人々は、曖昧で予想外の状況にどのように意味を与え、行動につなげるのか。

この理論で考えられる身近な疑問

01

中核的な問い

「ここで何が起きているのか」「では、どうすればよいのか」。センスメイキング研究は、この二つの問いに人々がどう答えていくかを扱う。意思決定を「選択肢から選ぶこと」と捉えるより前に、そもそも状況をどう理解するかに焦点を当てる。

02

主張とメカニズム

Weick (1995) は、意味形成の特徴として、アイデンティティに根ざすこと、振り返りによって行われること、環境を自ら形づくること(イナクトメント)、社会的であること、進行中であること、手がかりに依拠すること、正確さよりもっともらしさを重視すること、の7つを挙げた(Maitlis & Christianson, 2014 の引用による)。

Weick, Sutcliffe & Obstfeld (2005) によれば、意味形成とは、目の前の状況を言葉で理解できるものに変え、行動への足がかりにすることである。人は手がかりを拾い、振り返りながらもっともらしい意味をつくる。正確に状況を捉えていなくても、もっともらしい筋書きがあれば人は動くことができる。行動は新しい情報や対話の機会を生み、それによって筋書きが書き直されていく。そして、組織が先にあって意味形成が起こるのではなく、組織は意味形成を通じて立ち現れる。意味形成と組織は互いを形づくっている、と彼らは述べる。

03

身近な例

新しい上司が会議で発言を遮ったとき、部下たちは「厳しい人だ」「急いでいるだけだ」など様々に解釈し、その解釈に沿って振る舞いを変える。振る舞いが変わると上司の反応も変わり、最初の解釈が「確かめられた」ように感じられる。職場の空気は、このような意味づけの積み重ねからできている。

04

主要概念

イナクトメント(enactment)
人が行動することで、自分が向き合う環境そのものを部分的につくり出すこと。
手がかり(cues)
意味づけの出発点となる、状況の中から選び取られた断片的な情報。
センスギビング(sensegiving)
他者の意味形成に影響を与えようとする働きかけ。リーダーによる方向づけなどを指す。
05

代表的な展開研究

  • Gioia, D. A., & Chittipeddi, K. (1991). Sensemaking and sensegiving in strategic change initiation. Strategic Management Journal. DOI ↗他者の意味形成に働きかけ、望ましい組織の現実の捉え方へ導こうとする過程をセンスギビングと名づけた(Maitlis & Christianson, 2014 による)。
  • Weick, K. E., Sutcliffe, K. M., & Obstfeld, D. (2005). Organizing and the process of sensemaking. Organization Science. DOI ↗看護師の事例をもとに、意味形成を、流れの中から手がかりに気づいて切り出し、名前をつけ、振り返り、推測し、行動と対話を通じて組織化していく過程として整理し直した。
  • Maitlis, S., & Christianson, M. (2014). Sensemaking in organizations: Taking stock and moving forward. Academy of Management Annals. DOI ↗研究の蓄積をレビューし、定義や論点を整理している。
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批判と境界条件

Weick, Sutcliffe & Obstfeld (2005) は、意味形成が正確さではなく「もっともらしさ」によって進むという考えが、管理者の認識の正確さが成果を決めるとみる戦略論や意思決定論の前提と対立することを認めている。そのうえで、管理者の認識はもともと不正確なことが多く、行動を通じて新しい情報が得られ、解釈が更新されていけばよいと応じた(pp. 415–416)。

同じ論文で著者ら自身が、いくつかの弱点も挙げている。意味形成の議論は権力や政治に無頓着に見えること、人々が意味を「つくる」側面を誇張しているおそれがあり、制度や社会化によって解釈が方向づけられる側面を軽く扱ってきたこと、実証研究がまだ少ないことである(pp. 417–418)。

Maitlis & Christianson (2014) のレビューによれば、その後、競合する解釈のうちどれが正統とされるかという政治的な過程の研究は増えたが、権力への注意が足りないという批判はなお続いている(p. 98)。また、研究が広がるにつれて定義が分かれ、意味形成を個人の認知とみるか人々の相互作用とみるか、過去を振り返るものに限るか未来に向けたものも含むかで、見解が一致していない(pp. 58, 94)。方法の面では、単一事例の研究が多く、文脈をまたいで比較し、理論が当てはまる条件を特定しにくいと指摘している(pp. 106–107)。

研究上の位置づけ

原典Weick, K. E. (1995)
Sensemaking in Organizations
分類理論的視点
地図の区画組織・意思決定
分析単位個人 · チーム · 組織
理論系譜認知 · プロセス
REFERENCES

出典

  • 原典Weick, K. E. (1995). Sensemaking in Organizations. SAGE Publications.

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。