理論・視点

組織文化Organizational Culture

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

組織文化とは、集団が問題に対処する中で身につけ、妥当と認められて、正しい見方・考え方として新しいメンバーに教えられていく基本的前提の型である。目に見える人工物、表明された価値観、無意識の基本的前提の三層からなる、とする理論。

目次
説明したい問い組織の「らしさ」はどのように形成され、人々の行動をどう方向づけるのか。

この理論で考えられる身近な疑問

01

中核的な問い

同じような制度を持つ会社でも、働き方や意思決定の雰囲気は大きく違う。その違いの正体は何で、どこから生まれ、変えることはできるのか。

02

主張とメカニズム

Schein (1990) は、文化が現れる水準を三つの層に分けた。いちばん表面にあるのが、オフィスの配置、服装の決まり、互いの呼び方、物語や神話などの人工物である。その下に、理念や行動指針として語られる価値観がある。最も深い層に、意識されないほど当然視された基本的前提(人間観、時間観、真理の決め方など)がある。Schein はまた、当然視された基本的前提は、集中的な観察や質問、意欲のあるメンバーによる踏み込んだ自己分析を通じてはじめて読み解けると論じている。

Schein (1990) によれば、文化が生まれる仕組みの一つは、創業者や初期のリーダーの考え方である。その考え方を実践すると、うまくいくものといかないものがあり、集団はうまくいった部分を学んで共有された前提にしていく。表面の人工物は目に見えても、その意味は深い前提を理解しないと読み解けない。Sørensen (2002) の整理によれば、Schein (1992) は、文化は集団が対処し学んできた過程の「残りかす」であり、初期の歴史で共有された経験に強く影響され、いったん確立して当然視された基本的前提は変えにくいと論じている。

03

身近な例

「フラットで自由な会社」を掲げるオフィスにカフェがあり、服装も自由でも、会議では誰も上司に反対しないことがある。人工物や表明された価値観と、実際に共有されている前提(上の意見には従う)がずれている例である。

04

主要概念

人工物(artifacts)
建物、服装、言葉遣い、儀式など、目に見える文化の表れ。
信奉された価値観(espoused values)
組織が公式に掲げる理念や方針。
基本的前提(basic assumptions)
当然視され、意識すらされない信念。Schein (1990) は文化をこの前提の型として定義し、知覚、思考、感情、行動を方向づけるものとした。
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代表的な展開研究

  • O'Reilly, C. A., Chatman, J., & Caldwell, D. F. (1991). People and organizational culture: A profile comparison approach to assessing person-organization fit. Academy of Management Journal. DOI ↗54の価値の記述からなる組織文化プロファイル(OCP)を開発し、個人が望む文化と組織の文化との適合を測った。適合は、1年後の職務満足と組織コミットメント、2年後までの実際の離職(定着)を予測した。
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批判と境界条件

Smircich (1983, p. 346) は、企業文化をめぐる議論が、トップが戦略に合わせて文化を形づくれることについて楽観的で、救世主的ですらあると指摘した。多くの文献は組織に一つの文化があるかのように語り、複数の下位文化や対抗文化が状況の意味づけを競い合っている可能性を見落としているという。Martin & Siehl (1983, pp. 52–53) も、当時の研究の多くが経営トップの視点に立ち、文化を組織をまとめる一枚岩のものとみなし、直接の働きかけで管理できると仮定していると批判した。彼らによれば、組織文化は入れ子になり、ときに対立する複数の下位文化からなり、管理者にできるのはせいぜい文化の軌道を少し変えることかもしれない (p. 53)。

Martin & Siehl (1983, pp. 53–54) は、下位文化を、支配的文化の中核的価値をより熱心に守る「強化型」、別の価値を併せ持つ「直交型」、中核的価値に正面から挑む「対抗文化」の三つに分けた。GM で DeLorean が率いた事業部を例に、対抗文化が支配的文化の価値を笑いものにし、別の価値を掲げる様子を描いている (p. 63)。そのうえで、管理者一人で文化をつくったり「管理」したりはできないかもしれないが、価値に沿った制度の運用や物語づくりなどの手法は、文化の軌道に目に見える影響を与えうると述べる (p. 63)。ただし資料は主に2冊の本で、上級幹部の行動に焦点があり、部下がそれをどう受け止めたかは扱っていないと著者自身が認めている (p. 56)。

強い文化が変化への適応を妨げるという論点について、Willmott (1993, p. 543) は、中核的価値の強い文化が硬直した教義となって状況の変化への対応を妨げる、という Soeters (1986) の批判を紹介している。Sørensen (2002, pp. 70, 72) は、この問題を業績の安定性の面から、さまざまな業界の大企業のデータで検証した。比較的安定した環境では、強い文化をもつ企業ほど業績のばらつきが小さかったが、業界の変動が大きくなるほどその利点は薄れた (pp. 85–86)。一方、変動が大きい環境ほど強い文化の平均業績への効果が下がる、という仮説は支持されなかった (p. 86)。Sørensen は、文化の強さが同業他社の役員による外部からの評価であること、一時点の測定であること、安定した高業績が強い文化を生むという逆の因果を排除できないことを、限界や別の解釈の余地として挙げている (pp. 78, 86–87)。

Willmott (1993, p. 517) は、強い文化をつくろうとする「企業文化主義」を倫理の面から批判した。自律を広げるという名目で、社員が何を考え感じるべきかにまで管理の範囲を広げ (p. 522)、競合する価値を検討する余地を奪う単一文化を促すという (pp. 534, 540)。他方で、こうした施策は価値の内面化にはつながりにくく、計算ずくの表面的な服従や冷笑にとどまりやすいとも述べる (pp. 536–537, 541)。Willmott は、自らの論調が論争的で、企業文化主義の全体主義的な傾向を誇張するおそれがあることも認めている (p. 535)。

研究上の位置づけ

原典Schein, E. H. (1985)
Organizational Culture and Leadership
分類概念
地図の区画組織・意思決定
分析単位チーム · 組織
理論系譜社会学 · 認知
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。