理論・視点

ゴミ箱モデルGarbage Can Model

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

目標や技術が曖昧な組織では、問題・解決策・参加者が、「ゴミ箱」にたとえられる選択機会(決定の場)に別々に流れ込み、その組み合わせがたまたま行動を可能にしたときに決定が起こる。決定は合理的な手順どおりには進まず、中身だけでなくタイミングにも大きく左右されるとするモデル。

目次
説明したい問い目標も手段も曖昧な組織では、意思決定はどのように行われるのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

大学や行政組織のように、目標がはっきりせず、何をすれば成果が出るか分からず、参加者も入れ替わる組織(組織化された無秩序)では、どのように物事が決まるのか。

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主張とメカニズム

Cohen, March & Olsen (1972) は、意思決定を、組織の中の比較的独立した四つの流れが交わって生まれるものとして描いた。「問題」「解決策」「参加者」「選択機会(会議など)」である。選択機会は、参加者が問題や解決策を次々に投げ込むゴミ箱にたとえられる。

解決策は誰かの「製品」であり、問題より先に存在していることもある。原典の言い方では、解決策は問いを積極的に探している答えである。決定は、問題が解決されることで起こるとは限らない。付いていた問題が別の選択機会に移っていった後に決まる(やり過ごし)、問題が付く前に決まる(見過ごし)、といった形も多い。コンピューター・シミュレーションでこうした傾向が示された。

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身近な例

社内で「DXツールを導入したい」部署がすでにあり、別件の会議で業務効率の話が出た途端、その場でツール導入が決まる。問題を分析して解決策を選んだのではなく、たまたま同じ会議に居合わせた結果である。

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主要概念

組織化された無秩序(organized anarchy)
選好(目標)が曖昧、技術が不明確、参加が流動的という三つの性質を持つ組織や意思決定の状況。原典は、どの組織にも部分的・一時的には見られる性質だとする。
選択機会(choice opportunity)
組織が「決定」と呼べる行動を出すことを期待される機会。契約の締結、人の採用・昇進・解雇、支出、責任の割り当てなど。
見過ごし・やり過ごし(oversight / flight)
問題を解決しないまま決定が行われる二つのパターン。見過ごしは、問題が付く前に決定が行われること。やり過ごしは、付いていた問題がすべて離れた後に決定が行われること。
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代表的な展開研究

  • Padgett, J. F. (1980). Managing garbage can hierarchies. Administrative Science Quarterly. DOI ↗Bendor et al. (2001) の整理によれば、原典の後にゴミ箱モデルを作り直した数少ない試みの一つである。参加が流動的という仮定を外し、個人と組織の行動の道具的な性格を強調した。
  • Bendor, J., Moe, T. M., & Shotts, K. W. (2001). Recycling the garbage can: An assessment of the research program. American Political Science Review. DOI ↗シミュレーションの仕様と文章による主張がずれている点を批判的に検討した。
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批判と境界条件

原典の著者自身が、適用範囲を限っている。Cohen, March & Olsen (1972, p. 1) は、組織化された無秩序の三つの性質はどの組織にも部分的・一時的に見られるものであり、その理論はほとんどの組織の活動の一部を説明するが、すべては説明しないと述べる。また、ゴミ箱過程で完全に表せる現実の組織はないとしている(p. 16)。大学への当てはめも多くの仮定に依存しており、別の仮定をおけば別の解釈になると認めている(p. 15)。

Bendor, Moe & Shotts (2001) は、文章で述べた理論とシミュレーションを分けて検討した。文章の理論について、第一に、流れが独立しているという前提は詳しく見ると崩れるという(p. 172)。原典自身が、問題や解決策は参加者によってゴミ箱に投げ込まれると書いており、それなら問題や解決策の流れは参加者の流れから独立ではありえないからである(p. 172)。第二に、組織化された無秩序が三つの性質をすべて持つ必要があるのか、一部でよいのかが、原典の中で揺れている(p. 173)。第三に、構造を所与として扱い、構造がどこから来るのかを問わず、とくに権限・委任・統制を見落としている(pp. 172–173)。

シミュレーションについては、文章の理論と両立しないと結論した(p. 169)。モデルには、文章の理論が中心におく解決策の流れがない(p. 175)。また、問題も人もいない選択機会でも「決定」が下されたことになる(p. 175)。元のプログラムを再実行すると、最も典型的な組織化された無秩序の設定でも、驚くほど秩序だった結果が生まれた(pp. 176, 181)。意思決定者は、いつも一つの群れになって選択機会を移っていったという(p. 181)。やり過ごしや見過ごしが多いという有名な結果も、モデルの仮定に組み込まれた人工物だという(p. 182)。そのうえで Bendor et al. (2001, p. 188) は、解決策と問題が意図より偶然で結びつくという性質を、Simon (1957) の古典的な適応的探索のモデルから導いてみせた。ゴミ箱の考え方は、限定合理性の理論に根ざして立て直すのがよいとする(p. 170)。

これに対し Olsen (2001, p. 191) は、原典の題名は「理論」ではなく「一つのモデル」だと反論した。解決策を明示的にモデル化しなかった単純化は、原典自身が断っていたという(p. 192)。また、シミュレーションの「エネルギー」は、限定合理性の伝統でいう「注意」と密接につながっているとする(p. 192)。参加者と問題がまとまって動く結果は欠陥ではなく、名目上は別々の議題の会議を渡り歩き、同じ人と同じ問題を話し続けてほとんど決まらないという、多くの人が知る経験を再現したものだという(p. 192)。Bendor らの代替モデルについては、安定した参加と安定した権限関係を仮定しており、ゴミ箱の考え方の趣旨に合わないと批判した(p. 193)。

研究上の位置づけ

原典Cohen, M. D., March, J. G., & Olsen, J. P. (1972)
A garbage can model of organizational choice
分類モデル・枠組み
地図の区画組織・意思決定
分析単位組織
理論系譜行動論
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。