リレーショナル・ビューRelational View
別名関係性ビュー
原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)
一言で言うと競争優位の源泉は、企業の内部だけでなく、企業と企業の関係の中にもある。関係に特化した投資や知識の共有によって、単独では得られない利益(関係レント)が生まれる、という視点。
目次
中核的な問い
資源ベース理論は、競争優位の源泉を企業が内部に持つ資源に求めた。しかし、多くの企業の強みは、取引先や提携相手との関係に支えられている。企業の境界を越えたところで、優位はどう生まれるのか。
主張とメカニズム
Dyer & Singh (1998) は、協力する企業どうしが共同で生み出す超過利益を「関係レント」と呼んだ。これは、どちらか一方だけでは生み出せない利益である。
関係レントの源泉は四つある。第一に、その関係のためだけに行う投資(関係特殊的資産)。第二に、相手と知識を共有する仕組み。第三に、互いの資源や能力が補い合うこと。第四に、取引にかかるコストを下げたり、価値を生む取り組みを促したりする効果的な統治(契約だけでなく、信頼などの非公式な仕組みも含む)である。こうした関係は、相手を探すのが難しいことや、長い時間をかけて築かれることから、他社に真似されにくい。
身近な例
自動車メーカーと部品メーカーが長年の取引の中で、工場を近くに建て、設計段階から一緒に開発を進める。互いのやり方を深く理解しているため、品質の改善や新製品の開発が速くなる。この強みはどちらか一社だけの力ではなく、両社の関係から生まれている。
主要概念
- 関係レント(relational rent)
- 協力関係にある企業が共同で生み出し、単独では得られない超過利益。
- 関係特殊的資産(relation-specific assets)
- 特定の取引相手との関係のために行われ、他に転用しにくい投資。
- 知識共有ルーティン(knowledge-sharing routines)
- 企業間で知識を移転し、組み合わせるための定型化された仕組み。
- 補完的資源(complementary resources)
- 組み合わせることで、単独よりも大きな価値を生む互いの資源。
代表的な展開研究
- Lavie, D. (2006). The competitive advantage of interconnected firms: An extension of the resource-based view. Academy of Management Review. DOI ↗提携相手の資源から得られる価値を資源ベース理論に組み込み、その価値の配分を論じた。
- Dyer, J. H., Singh, H., & Hesterly, W. S. (2018). The relational view revisited: A dynamic perspective on value creation and value capture. Strategic Management Journal. DOI ↗提携における価値の創造と獲得を、提携のライフサイクルを通じて変化する動的な過程として捉え直した。
批判と境界条件
リレーショナル・ビューが示される前の研究として、Uzzi (1997) は、企業間の埋め込まれた関係がもたらす利点と、その限界を示した。ニューヨークの婦人服業界の23社での現地調査から、埋め込まれた関係は、信頼、きめ細かな情報の移転、共同での問題解決という三つの要素からなるとした(「埋め込まれた紐帯の特徴と機能」の節)。こうした関係は時間の節約や複雑な変化への適応などをもたらすが、その効果はある水準までだという(要旨)。それを超えると、外からのショックに弱くなったり、ネットワークの外にある情報から切り離されたりして、かえって経済的な成果を損ないうる(要旨)。
Uzzi が「埋め込みのパラドックス」と呼んだのは、現在の環境にうまく合わせる同じ過程が、逆に組織の適応する力を弱めうることである(「埋め込みのパラドックス」の節)。彼は、埋め込みが負債に変わる条件を三つ挙げた(同節)。第一は、ネットワークの中心にいる企業が予期せず退出することである。特定の相手に合わせて技能を磨いた企業は、その相手が廃業したり海外に移ったりすると、取引先を分散させていた場合より失敗の危険が高くなる(同節)。第二は、市場を「合理化」する制度的な変化によって、関係に基づく取引が断ち切られることである(同節)。第三は、ネットワーク内のすべての企業が埋め込まれた関係で結ばれる過剰な埋め込みである。新しい情報が入りにくくなるうえ、義理や友情が経済的な必要を上回り、強い企業が弱い企業を支え続けることもある(同節)。また、埋め込まれた関係で強い信頼が裏切られると、報復や終わりのない争いが生じうるという(同節)。
そのうえで Uzzi は、最も望ましいのは、埋め込まれた関係と市場的な(アームズ・レングスの)関係を組み合わせたネットワークだとした(同節)。埋め込まれた関係がネットワークを豊かにし、市場的な関係がネットワークを市場の要求や新しい可能性から完全に孤立させないようにするからである(同節)。ただし、これらの命題の裏づけは一つの業界の観察による部分的なもので、検証と精緻化は今後の課題だとしている(「考察」の節)。小規模な企業どうしが個人的なつながりで結ばれたこの業界は、とくに埋め込みが生じやすい場であり、大企業には当てはまらない可能性もあるという(「考察」の節)。
Dyer & Singh (1998) 自身も、関係による優位の弱点に触れている。彼らは、信頼のような非公式な歯止めが特殊な投資を守り、複雑な取引を支えるうえで最も効果的で費用も低いとする Uzzi (1997) などの見方を引いた (p. 669)。そのうえで、この歯止めには二つの弱点があると認めた (p. 671)。築くのに長い時間がかかることと、信頼が危険の感じ方を下げる一方で、つけこまれる機会も与える「信頼のパラドックス」である (p. 671)。また、相手とともに資源や能力が進化すると、それぞれが資源を自由に動かしにくくなり、柔軟性を失うおそれがあるという (p. 673)。さらに、うまくいかない提携が多いことから、関係レントの実現を妨げる要因を詳しく調べることを今後の課題とした (p. 676)。
研究上の位置づけ
The relational view: Cooperative strategy and sources of interorganizational competitive advantage
出典
- 原典Dyer, J. H., & Singh, H. (1998). The relational view: Cooperative strategy and sources of interorganizational competitive advantage. Academy of Management Review. DOI ↗
- Uzzi (1997). Social structure and competition in interfirm networks: The paradox of embeddedness. Administrative Science Quarterly. ↗
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