理論・視点

折衷パラダイム(OLIパラダイム)Eclectic Paradigm (OLI Framework)

一言で言うと

企業が海外直接投資によって国外で生産を行うかどうか、どこで、どの形で行うかは、企業が持つ所有の優位(O)、国の立地の優位(L)、取引を市場に任せず社内で行う内部化の優位(I)の組み合わせで決まる、とする理論。

説明したい問い企業はなぜ、輸出やライセンス供与ではなく、海外に自ら拠点を持って生産するのか。
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中核的な問い

外国市場で製品を売る方法は一つではない。国内でつくって輸出してもよいし、現地企業に技術を貸して生産してもらう(ライセンス供与)こともできる。それなのに、なぜ一部の企業は、わざわざ海外に工場や子会社をつくって自ら生産するのか。そして、それはどの国で、どの産業で起こりやすいのか。

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主張とメカニズム

Dunning (1988) は、折衷パラダイムの主張を、「国際生産(海外直接投資によって資金を得た生産活動)の範囲、形態、パターンは、企業の所有特殊的優位、国の立地の魅力、そして企業が市場取引を内部化することの利点、の三つの組み合わせによって決まる」とまとめ直した。この論文は、1970年代後半から示してきた枠組みを整理し直し(restatement)、拡張を試みたものである。「折衷」という名前は、産業組織論、立地論、内部化理論など、複数の経済理論を組み合わせていることに由来する。

所有の優位(O)とは、ある企業が外国の企業に対して持つ強みである。Dunning (1988) はこれを二つに分けた。一つは、技術や商標のような独自の資産を持つことから生じる資産の優位である。もう一つは、複数の国にまたがる拠点を一つの企業のもとで統治することで、取引の費用を下げられることから生じる取引の優位である。立地の優位(L)とは、ある国で生産することの魅力であり、資源、労働、市場の大きさ、政策などから生じる。内部化の優位(I)とは、所有の優位を他社に売ったり貸したりせず、自社の中で使うほうが得になることである。技術を他社に使わせると、模倣されたり品質を保てなかったりするおそれがあるためだ。

この枠組みに従えば、所有の優位だけがあればライセンス供与、所有と内部化の優位があっても海外の立地に魅力がなければ輸出、三つがそろったときに海外直接投資が選ばれやすい、と考えることができる。どの優位がどの程度重要かは、国、産業、企業の特性によって異なるとされる。

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身近な例

たとえば、独自の精密加工技術を持つ部品メーカーが、ある新興国への進出を考えているとしよう。まず、他社にない技術という所有の優位がある。次に、その国には大きな顧客企業が集まり、人件費も比較的低いという立地の優位がある。最後に、技術を現地企業にライセンスすると、技術が流出したり品質が落ちたりするおそれがあるので、自社で管理したい。これが内部化の優位である。三つがそろうので、このメーカーは現地に自社工場を建てるという選択をしやすい。もし現地の立地に魅力がなければ、国内で生産して輸出するほうが合理的になる。

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主要概念

所有特殊的優位(ownership-specific advantages, O)
技術、ブランド、経営ノウハウなど、ある企業が他国の企業に対して持つ固有の強み。
立地特殊的優位(location-specific advantages, L)
資源、労働力、市場、政策などから生じる、特定の国で生産活動を行うことの魅力。
内部化の優位(internalization advantages, I)
自社の強みを市場で他社に売ったり貸したりするより、自社の中で使うほうが得になること。
海外直接投資(foreign direct investment)
企業が外国に子会社や工場を設けるなど、経営への支配を伴う形で海外に投資すること。
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代表的な展開研究

  • Dunning, J. H. (2000). The eclectic paradigm as an envelope for economic and business theories of MNE activity. International Business Review. DOI ↗折衷パラダイムを、多国籍企業の活動を説明する複数の経済・経営理論を包み込む「封筒」として位置づけ直した。
  • Dunning, J. H. (2001). The eclectic (OLI) paradigm of international production: Past, present and future. International Journal of the Economics of Business. DOI ↗パラダイムの成り立ちと変遷を振り返り、今後の拡張の方向を論じた。
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批判と境界条件

著者自身が、この枠組みは多国籍企業の活動を予測する単一の理論ではなく、さまざまな理論を位置づけるための枠組み(パラダイム)だと位置づけている(Dunning, 2000)。そのため、具体的にどの条件でどの選択が起こるかを一つに定めにくい。また、Itaki (1991) は、所有の優位は立地や内部化の優位と切り離して測ることが難しく、三つの優位が互いに独立していないと批判した。

研究上の位置づけ

原典Dunning, J. H. (1988)
The eclectic paradigm of international production: A restatement and some possible extensions
分類Theoretical framework
分析単位組織
理論系譜経済学
REFERENCES

出典

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