理論・視点

目標設定理論Goal-Setting Theory

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

人が意識的に目指す目標が行動を直接に方向づけ、難しく具体的な目標は、易しい目標や「ベストを尽くせ」という曖昧な目標よりも高い成果につながる、とする理論。

目次
説明したい問いどのような目標を持つと、人はより高い成果を上げるのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

お金、結果の知らせ、競争といった誘因は、人の仕事ぶりを変えることがある。では、それらはどのような経路で行動に効いているのか。そして、どんな目標が高い成果を生むのか。

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主張とメカニズム

Locke (1968) は、目標と意図という語を「その人が意識的にやろうとしていること」という日常の意味で用い、人の意識的な考えが行動を調整していることを研究の前提に置いた。

原典がまとめた研究結果のうち、成果の水準にかかわるものは二つある。第一に、目標が難しいほど、成果の水準は高くなる。第二に、具体的で難しい目標は、「ベストを尽くせ」という目標よりも高い成果を生む(原典がまとめた8件の研究のうち6件で有意な差があった)。原典はこのほか、課題の選び方については、行動の意図が選択を左右することも示した。さらに、金銭的な報酬、時間制限、結果の知らせといった誘因は、本人の目標や意図と無関係には成果に影響しないことを示す証拠を挙げた。参加、競争、賞賛と叱責についても、同じ見方が成り立つと理論的に論じた。つまり目標は、外からの働きかけと行動をつなぐ仲立ちの役割を果たす。ただし Locke & Latham (2002) は、目標は行動の最も直接的な決め手であることが多いものの、いつもそうとは限らず、誘因の効果が目標を経由していなかった研究もあると述べている。

Locke & Latham (2002) は、35年間の実証研究をもとに、目標が成果に働く仕組みを四つにまとめている。目標は注意と努力を目標に関係する活動へ向け、高い目標は低い目標より大きな努力を引き出し、取り組む時間を本人が決められる場合には難しい目標が努力を長く続けさせる。さらに目標は、課題に役立つ知識ややり方を呼び起こし、見つけさせ、使わせる。効果を左右する条件について、原典はすでに、指示された目標が行動に効くのは、本人がそれを自分の目標として受け入れ、しかもそれを実行できる場合だとし、目標への本人のこだわり(コミットメント)も成果の重要な要因だろうと述べていた。Ordóñez et al. (2009) が引く Locke & Latham (2006) の要約でも、目標の難しさと成果の直線的な関係は、本人が目標にコミットし、必要な能力を持ち、相反する目標を持たない場合に成り立つとされる。Locke & Latham (2002) は、これらに加えて、進み具合についてのフィードバックと課題の複雑さも、目標の効果を左右する要因に挙げている。目標にフィードバックを組み合わせると目標だけの場合より効果が高く、複雑な課題では単純な課題より目標の効果が小さい。

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身近な例

たとえば、営業担当者に「できるだけ頑張って」と言う場合と、「今月は新規顧客を5件獲得しよう」と伝える場合を比べてみよう。この理論に従えば、本人が受け入れていて、しかも少し背伸びが必要な具体的な目標のほうが、行動の向け先がはっきりし、努力も続きやすい。

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主要概念

目標(goal)
人が意識的に達成しようとしていること。
目標の難しさ(goal difficulty)
目標がどれだけ達成しにくいか。原典は、その目標を実際に上回れた試行の割合(達成の確率)で表した。
目標の具体性(goal specificity)
何をどこまで達成すればよいかが明確に定められている度合い。
目標へのコミットメント(goal commitment)
目標を達成しようとする本人の決意の強さ。
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代表的な展開研究

  • Locke, E. A., Shaw, K. N., Saari, L. M., & Latham, G. P. (1981). Goal setting and task performance: 1969–1980. Psychological Bulletin. DOI ↗1969年から1980年までの研究を整理し、難しく具体的な目標の効果と、それが働く仕組みや条件をまとめた。
  • Locke, E. A., & Latham, G. P. (2002). Building a practically useful theory of goal setting and task motivation: A 35-year odyssey. American Psychologist. DOI ↗35年間の実証研究をふり返り、理論の中心的な知見、目標が成果に働く四つの仕組み(方向づけ、努力、粘り強さ、やり方の発見と活用)、効果を左右する要因(コミットメント、フィードバック、課題の複雑さ)、目標と満足の関係、誘因の効果を目標が仲立ちする働きなどをまとめた。
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批判と境界条件

原典自身が、扱った範囲の限界を認めている。Locke (1968, p. 161) が報告した研究は主に単純な課題で、複雑な新しい技能の習得や長期の計画が要らない課題だった。また、人がなぜその目標を持つに至ったかは扱わず、完全な理論ではなく理論の土台にすぎないと述べている(p. 159)。目標へのコミットメントも、成果の重要な要因だろうとしながら、原典の研究では扱っていない(pp. 185-186)。

Ordóñez et al. (2009, p. 6) は、目標設定の利点は誇張され、体系的な害が見過ごされてきたと論じた。挙げた副作用は、目標以外の領域の軽視、リスク選好のゆがみ、非倫理的行動の増加、学習の阻害、組織文化の劣化、内発的動機づけの低下である。Ordóñez et al. (2009, p. 10) の紹介によれば、Schweitzer et al. (2004) では、具体的で難しい目標を持つ参加者のほうが、目標がない参加者より自分の成績を偽って報告しやすかった。複雑な課題については、Locke & Latham (2002) 自身が、Kanfer & Ackerman (1989) の航空管制のシミュレーションで成果目標が学習を妨げた例を挙げている(Ordóñez et al., 2009, p. 11)。Ordóñez らはまた、研究の多くが単純で成果の測り方がはっきりした課題で行われてきたが、害が最も大きいのは、成果が相互に依存し、監視が難しく、不正ができる複雑な現実の場面だと述べた(p. 13)。

これに対し Locke & Latham (2009, p. 17) は、Ordóñez らは研究ではなく逸話を根拠にしていると反論した。挙げられた例の多くは金銭的な誘因と交絡しており、目標を原因とする根拠は乏しいという(p. 18)。また、目標の落とし穴は自分たちが早くから指摘し、対策も示してきたと述べた(p. 20)。さらに、具体的な目標を持つ交渉者のほうが一貫して高い利益を得ていたという交渉研究のメタ分析(Zetik & Stuhlmacher, 2002)や、必要な技能をすでに持つ人に学習目標を与えると成果が下がるという実験(Winters & Latham, 1996)など、反対の結果を示す研究が引かれていないと批判した(pp. 20-21)。

研究上の位置づけ

原典Locke, E. A. (1968)
Toward a theory of task motivation and incentives
分類理論
地図の区画組織行動
分析単位個人 · チーム
理論系譜認知 · 心理学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。