理論・視点

エフェクチュエーションEffectuation

一言で言うと

起業家は、目標を先に決めてから手段を選ぶ(コーゼーション)だけでなく、手元にある手段から出発して、そこから生み出せる結果を選び、つくり出していく(エフェクチュエーション)ことがある、とする理論。

説明したい問い将来が予測できない状況で、起業家はどのように意思決定をして新しい事業や市場をつくり出すのか。
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中核的な問い

経営学の教科書では、まず市場を調べて目標を定め、その目標を達成する最善の手段を選ぶ、という手順が勧められる。しかし、まだ存在しない市場や製品については、調べるべきデータそのものがない。そのような状況で、起業家はどのように判断を下しているのか。

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主張とメカニズム

Sarasvathy (2001) は、二つの意思決定の過程を対比した。コーゼーションは「特定の結果を所与とし、その結果を生み出すための手段のなかから選ぶことに焦点を当てる過程」である。これに対してエフェクチュエーションは「一組の手段を所与とし、その手段で生み出しうる結果のなかから選ぶことに焦点を当てる過程」である。起業家が手にしている手段とは、自分は何者か、何を知っているか、誰を知っているか、の三つである。

原典は、エフェクチュエーションの考え方を、コーゼーションとの対比でいくつかの原則にまとめた。第一に、期待される利益を最大にするのではなく、失ってもよいと思える損失の範囲で行動する。第二に、競合を分析するのではなく、他者と協力関係を結び、その人たちの関与によって事業の形を決めていく。第三に、手持ちの知識を生かすことよりも、途中で起こる思いがけない出来事を活用する。第四に、不確かな将来を予測しようとするのではなく、自分たちで統制できる範囲で将来をつくり出す。将来をつくり出せる限り、予測は必要ない、という考え方である。

原典は、どちらの過程が優れているかを論じたのではない。二つは人の思考のなかで同時に用いられうるものであり、将来が予測しにくく、目標があいまいで、環境が人の行動によって変わりうる状況で、エフェクチュエーションが起こりやすいと論じた。なお、後の研究(Sarasvathy 2008 など)では、これらの考え方が「手中の鳥」「許容可能な損失」「クレイジーキルト」「レモネード」「飛行機のパイロット」といった呼び名で整理されている。これらの呼び名は2001年の原典で用いられたものではない。

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身近な例

たとえば、料理が得意で、地元の農家に知り合いが多い人がいるとしよう。コーゼーションの考え方なら、まず飲食市場を調べ、狙う客層と店の形を決め、資金を集めて出店する。エフェクチュエーションの考え方なら、まず手元の強みで何ができるかを考え、失っても困らない範囲で、週末に知り合いの農家の野菜を使った弁当を少し売ってみる。買いに来た人の声から、その人たちが求める料理教室という別の事業が生まれるかもしれない。はじめに思い描いた目標にこだわらず、関わる人と一緒に事業の形を決めていくのである。

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主要概念

コーゼーション(causation)
目標を先に定め、それを実現するための最適な手段を選ぶ意思決定の過程。
エフェクチュエーション(effectuation)
手元にある手段から出発し、それで生み出せる結果のなかから選び、つくり出していく意思決定の過程。
許容可能な損失(affordable loss)
期待される利益ではなく、失ってもよいと思える損失の大きさを基準に、どこまで行動するかを決める考え方。
偶然の活用(exploitation of contingencies)
想定外の出来事を避けるのではなく、新しい機会として取り込むこと。
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代表的な展開研究

  • Sarasvathy, S. D. (2008). Effectuation: Elements of entrepreneurial expertise. Edward Elgar Publishing. DOI ↗熟練した起業家の研究をもとに、エフェクチュエーションの考え方を一冊にまとめ、原則を後によく知られる呼び名で整理した。
  • Read, S., Song, M., & Smit, W. (2009). A meta-analytic review of effectuation and venture performance. Journal of Business Venturing. DOI ↗エフェクチュエーションの原則に対応する要素と新規事業の成果との関係を、既存の実証研究を統合するメタ分析で検討した。
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批判と境界条件

Arend, Sarooghi & Burkemper (2015) は、エフェクチュエーションを理論として評価する枠組みを当てはめ、その説明や予測の範囲が明確でなく、検証できる形に十分なっていないと批判した。これに対して Read, Sarasvathy, Dew & Wiltbank (2016) は、エフェクチュエーションはまだ発展途上の研究の流れであり、研究者が共同で発展させていくものだと反論した。原典自身も、エフェクチュエーションとコーゼーションのどちらが成果につながるかは状況によるとしており、常に優れた方法だと主張しているわけではない。

研究上の位置づけ

原典Sarasvathy, S. D. (2001)
Causation and effectuation: Toward a theoretical shift from economic inevitability to entrepreneurial contingency
分類Theory
分析単位個人 · 組織
理論系譜認知 · 行動論
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。