理論・視点

リーダーシップのコンティンジェンシー・モデルContingency Model of Leadership Effectiveness

原典と照合済み本文の根拠にした文献は出典に記載(照合の手順)

一言で言うと

メンバーが協力して一つの課業に取り組む集団の業績は、リーダーのスタイル(LPC得点で測る)と、状況がリーダーにどれだけの勢力と影響力を与えるか(状況の好意性)との組み合わせによって左右され、状況によって高い業績を上げるリーダーのスタイルが異なるとする理論。

目次
説明したい問い同じリーダーが、ある集団では成果を上げ、別の集団では成果を上げられないのはなぜなのか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

人間関係を大切にするリーダーと、仕事の達成を何より重んじるリーダーでは、どちらが優れているのか。Rice (1978) によれば、Fiedler の初期の研究では、リーダーが同僚をどう見ているかと集団の業績との相関は、ある条件では正、別の条件では負であった。リーダーの効果が状況によって変わるのだとすれば、どのようなリーダーが、どのような状況で成果を上げるのか。

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主張とメカニズム

Fiedler (1971b) によれば、リーダーのスタイルと集団の業績の関係を左右するのは状況の好意性(situational favorableness)である。好意性とは、状況そのものが、集団の行動に対する潜在的な勢力と影響力をリーダーにどれだけ与えるかの度合いである。好意性の測り方はいくつかあるが、モデルの当初の研究は、三つの要素にもとづく方法を示した。第一はリーダーとメンバーの関係(メンバーがリーダーを受け入れ、信頼しているか)で、最も重要とされる。ほかの二つは、課業の構造(課業がはっきり示され構造化されているか、それともあいまいで漠然としているか)と、地位勢力(採用や解雇、昇進や異動、昇給や減給などを行える、地位に備わった権限)である。三つの要素の高低を組み合わせると、状況は最も有利なものから最も不利なものまで八つに分けられる。

モデルでは、リーダーのスタイルを LPC(least preferred co-worker、最も一緒に働きにくい同僚)得点で測る。Rice (1978) によれば、Fiedler のいうスタイルとは、リーダーの目に見える行動ではなく、その根にある欲求や動機を指す。リーダーは、これまで一緒に働いた中で最もうまく仕事ができなかった相手を一人思い浮かべ、その人を「感じがよい—感じが悪い」のような対になった形容詞で評価する。その相手さえ比較的好意的に評価する人が高LPC、非常に否定的に評価する人が低LPCである。Fiedler (1971b) は、高LPCの人を人間関係志向、低LPCの人を課業志向と呼んできたが、この呼び名はいくぶん誤解を招くと述べている。呼び名に合う行動がみられるのは、リーダーにとって不利な状況(ストレスが強く、リーダーがほとんど統制できない状況)に限られるからである。Rice (1978) は多くの研究を整理し、低LPCの人はおもに課業志向、高LPCの人はおもに人間関係志向だという Fiedler の主張は、全体としてデータに支持されると結論づけた。Rice (1978) の解釈では、高LPCの人は低LPCの人に比べて人間関係の成功を相対的に重んじ、低LPCの人は課業の成功を相対的に重んじる。ただし、リーダーの行動がいつもその向きになるわけではない。

Fiedler (1971b) によれば、モデルの中心的な予測は、状況が非常に有利なときと非常に不利なときには低LPCのリーダーが、好意性が中程度のときには高LPCのリーダーが、より効果的だというものである。ここでいうリーダーの効果は、集団が主な課業をどれだけうまく遂行したかで測られる。Strube & Garcia (1981) によれば、Fiedler は、リーダーのスタイルを比較的安定した性格特性とみなしていた。ただし Rice (1978) によれば、LPC 得点は、とくに変化の少ない環境では比較的安定しているが、軍隊の訓練や管理者研修のように変化を促す環境では、その安定性が大きく下がることがある。

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身近な例

たとえば、あるサークルで二人の先輩が、それぞれ別の企画のまとめ役になったとしよう。一つは、手順の決まった毎年恒例の行事で、メンバーはまとめ役を信頼している。もう一つは、前例のない新しい企画で、メンバーはまとめ役を信頼しているが、何をどう進めればよいかがはっきりしていない。このモデルに従えば、どちらの先輩が向いているかは、本人の能力の高さだけでは決まらない。本人のスタイル(LPC)と、それぞれの企画の状況がリーダーに与える影響力の大きさとの組み合わせで決まる。

04

主要概念

LPC(least preferred coworker)尺度
これまでで最も一緒に働きにくかった相手を、対になった形容詞で評価させる尺度。Fiedler はリーダーのスタイル(行動ではなく、その根にある欲求や動機)の尺度とみなしたが、Rice (1978) は、価値にもとづく態度の尺度とみるほうがよいと論じた。
状況の好意性(situational favorableness)
リーダーが集団をどれだけ統制し、影響を与えられるかからみた、状況の有利さ。当初の研究では、リーダーとメンバーの関係、課業の構造、地位勢力の三つで測られた。
リーダーとメンバーの関係(leader-member relations)
リーダーと他のメンバーとの感情的な関係の質。メンバーがリーダーを受け入れ、尊重しているか、それとも不信を抱き、拒んでいるか。
課業の構造(task structure)
集団の課業が、はっきり示され構造化されているか、それともあいまいで漠然としているかの程度。
地位勢力(position power)
リーダーの地位に備わった、賞罰を与える権限(採用や解雇、昇進や異動、昇給や減給など)の強さ。
05

代表的な展開研究

  • Strube, M. J., & Garcia, J. E. (1981). A meta-analytic investigation of Fiedler's contingency model of leadership effectiveness. Psychological Bulletin. DOI ↗モデルを検証した145の仮説検定をメタ分析で統合し、モデルは集団の業績の予測できわめて頑健だと結論づけた。
  • Peters, L. H., Hartke, D. D., & Pohlmann, J. T. (1985). Fiedler's contingency theory of leadership: An application of the meta-analysis procedures of Schmidt and Hunter. Psychological Bulletin. DOI ↗相関のばらつきのうち標本誤差で説明できる部分を見積もる別の手法でメタ分析を行い、実験室研究では状況 II を除いて支持されたが、現場研究で支持されたのは八つの状況のうち四つだけだったことを示した。
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批判と境界条件

Strube & Garcia (1981, p. 308) の整理によれば、Fiedler (1971b, 1978) のレビューは、予測どおりの向きの相関の数を二項検定で調べ、モデルが支持されたとした。この方法への最大の批判は、二項検定が相関の符号しか見ず、大きさを見ない点に向けられた(p. 309)。Ashour (1973) は、有意な相関が一つもなくても、小さな相関を集めれば効果があるように見えてしまうと指摘した(同 p. 309)。実際、Fiedler (1978) のレビューにある LPC と集団の業績の相関47個のうち、有意だったのは6個だけであった(同 p. 309)。Peters, Hartke, & Pohlmann (1985, p. 275) は、ほとんどの研究が小さな標本で行われ、有意な結果がそもそも出にくかったと指摘している。

これに対し Strube & Garcia (1981, p. 307) は、145の仮説検定をメタ分析で統合し、モデルは集団の業績の予測できわめて頑健だと結論づけた。Fiedler の共同研究者による研究は、独立の研究者による研究よりやや支持的だったが、その差は有意ではなかった(p. 317)。どちらの研究者群の研究でも、モデルは支持された(p. 317)。ただし、Fiedler (1971b) のもとで判定者が状況の区分に分類し直した31の検定だけでは、支持は有意に達しなかった(p. 316)。Strube & Garcia 自身も、統計的に有意であることは実践上の重要さを必ずしも意味しないと断っている(p. 318)。

Peters, Hartke, & Pohlmann (1985, p. 274) は、研究ごとの相関のばらつきのうち、標本の小ささによる偶然のぶれ(標本誤差)で説明できる部分を見積もった。理論のもとになった研究については、理論はデータから十分に導かれていたと結論づけた(p. 279)。しかし検証のための研究では、実験室研究は状況 II を除いて理論を支持したが、現場研究で支持されたのは八つの状況のうち四つだけであった(p. 274)。状況 II では、予測とは逆に正の相関(.21)が見られた(p. 282)。Strube & Garcia (1981, p. 316) は、状況 II で支持が得られないのは、実験の場でこの条件を作り出すのが難しいためかもしれないと述べていた。Peters らはこの説明を受け入れず、少なくとも実験室で作られる状況 II については、理論は不正確だと結論づけた(p. 282)。

Peters らも、理論を支持する証拠がかなりあるという点では Strube & Garcia (1981) に同意している(p. 283)。そのうえで、理論は最終的に現場で役立たなければならないので、現場研究で支持が得られることが決定的に重要だとした(p. 282)。そして、支持的な証拠に安住すれば、今の形の理論が不完全であることを示すデータを見誤ると論じた(p. 283)。

研究上の位置づけ

原典Fiedler, F. E. (1967)
A theory of leadership effectiveness
分類理論
分析単位個人 · チーム
理論系譜心理学 · 行動論
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。