理論・視点

PM理論Performance-Maintenance (PM) Theory of Leadership

一言で言うと

リーダーシップには、集団の目標の達成にかかわるP(performance)機能と、集団の社会的な安定を保つM(maintenance)機能があり、両方を示すPM型のリーダーのもとで、部下の生産性と職務態度がもっともよくなりやすいとする理論。

説明したい問いリーダーは、成果を求める働きかけと集団のまとまりを保つ働きかけを、どう組み合わせればよいのか。
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中核的な問い

上司には、成果を求める働きかけと、部下の気持ちに気を配る働きかけがある。Misumi & Peterson (1985) によれば、アメリカの初期の研究は、これに近い二つの機能を一つの次元の両端に置いて対立させるか、別々に測って足し合わせる形で扱うことが多かった。日本で30年続いた研究は、二つの働きかけの組み合わせが部下の業績や職務態度をどう左右するのかを問うた。

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主張とメカニズム

Misumi & Peterson (1985) によれば、リーダーシップには二つの基本的な機能がある。P機能(performance)は集団の目標をつくり、それを達成することにかかわり、M機能(maintenance)は集団の社会的な安定を保つことにかかわる。初期の定式化では、P指向の行動は作業の速さ、正確さ、量、規則の遵守を、M指向の行動は部下の気持ち、快適さ、ストレスの軽減、感謝を強調する。

両方の行動を示すのがPM型、Pだけを強調するのがP型、Mだけを強調するのがM型、どちらもほとんど示さないのがpm型である。現場の研究では、部下が上司のPとMの行動を質問紙で評定し、回答者全体の平均より上か下かで四つの型に分けるのが基本だった。日本の職場の研究の多くでは、生産性でも多くの職務態度でも、PM型が1位、pm型が最下位になった。P型とM型の順位は揺れるが、多くはM型が2位、P型が3位だった。

この理論の特徴は、PとMを別々に足し合わせるのではなく、互いに作用し合うものとして扱う点にある。M機能から切り離されたP指向のリーダーシップは、逆効果になりうる。二つの現場研究では、Pの行動と集団の業績規範との相関は、Mが平均より高い場合(r = .40、.68)のほうが、低い場合(r = .02、.43)より高かった。日本の人々は、支援を示すリーダーからの圧力によりよく応える、というのが彼らの解釈である。

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原典の事例

Misumi & Peterson (1985) によれば、研究は実験室実験と現場研究を組み合わせて進んだ。出発点は、Lewin, Lippitt & White (1939) の民主型・専制型・放任型の研究にならった子どもの集団の実験で、「民主的」「専制的」のような価値を帯びた概念は操作化が難しいという教訓が得られた。そこで、実験助手が成果への圧力と個人的な配慮をそれぞれ与えるか与えないかで、四つの型を実験条件としてつくるようになった。郵便局の訓練生を対象にした実験(Misumi & Shirakashi, 1966)では、生産性といくつかの態度が、直属の上司がPM型のときにもっとも高く、P型、M型の順に続いた(現場研究とはPとMの順が逆)。

1960年に炭鉱会社の協力を得た研究では、8つの作業集団の鉱員215人が監督者を評定した。生産性の高い集団にP型の監督者はおらず、生産性の低い4集団のうち3集団では、第一線と第二線の監督者がどちらもP型と評された。

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身近な例

大学祭の模擬店に、リーダーが二人いたとしよう。Aさんは売上の目標と準備の締め切りを示し、段取りを細かく詰める一方で、疲れているメンバーの話を聞き、雰囲気が悪くなれば間に入る。Bさんは目標と締め切りを伝えるだけで、メンバーの気持ちには関心を示さない。PM理論は、Aさんのように成果への働きかけと集団への気配りを両方示すリーダーのもとで、成果もメンバーの満足も高くなりやすいと予測する。Bさんのような圧力だけの働きかけは、反発を招きやすい。

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主要概念

P機能(performance function)
集団の目標をつくり、それを達成することにかかわるリーダーシップの機能。成果への圧力や計画にかかわる行動に表れる。
M機能(maintenance function)
集団の社会的な安定を保つことにかかわるリーダーシップの機能。部下への支援、信頼、公平な扱いなどの行動に表れる。
PM型・P型・M型・pm型
PとMをそれぞれ強く示すかどうかで分けた、リーダーシップの四つの型。大文字はその機能が高いことを示す。現場研究では、部下の評定が平均より上か下かで分ける。
リーダーシップの代替物(substitutes for leadership)
部下の能力や経験、規則の形式化など、リーダーシップの効果を小さくしたり、リーダーの役割を肩代わりしたりする個人・課業・組織の特徴。Kerr & Jermier (1978) の概念で、Misumi & Peterson (1985) が紹介している。
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代表的な展開研究

  • Misumi, J., & Peterson, M. F. (1985). The Performance-Maintenance (PM) theory of leadership: Review of a Japanese research program. Administrative Science Quarterly. DOI ↗日本で30年にわたって行われた実験室実験と現場研究を英語で整理し、日本の職場ではPM型が一般にもっとも効果的だという知見と、日本の外への一般化の制約を論じた。
  • Smith, P. B., Misumi, J., Tayeb, M., Peterson, M. F., & Bond, M. (1989). On the generality of leadership style measures across cultures. Journal of Occupational Psychology. DOI ↗英・米・日・香港の工場で、PとMの因子構造は共通だが、それを表す具体的な行動は国によって異なることを示した。
  • Smith, P. B., Peterson, M. F., Misumi, J., & Bond, M. H. (1992). A cross-cultural test of the Japanese PM leadership theory. Applied Psychology: An International Review. DOI ↗監督者によるチームの業績評定を使って4か国で理論を検証し、作業の質では支持されたが、生産性とグループの協力では支持されなかったと報告した。
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批判と境界条件

Misumi & Peterson (1985) 自身も、すべての現場研究で、相互作用のモデルが足し合わせのモデルより多くの分散を説明したわけではないと認めている。彼らは、信頼性や妥当性の制約、準間隔尺度といった測定の限界が二つのモデルの差を見えにくくしているとし、これは理論ではなく現場での測定の問題だとした。実験研究の多くも、相互作用と足し合わせの効果をはっきり区別できる設計ではなかった。ただし、それを区別するように設計した実験では交互作用が示されている。また、西洋の信頼できる研究は状況によって答えが変わるという結論を出しているのに、日本の現場研究の多くは状況によらない結論を出しており、日本の外にも当てはまるかは不確かだと述べる。日本で状況によらない結果が出やすい理由として、彼らは Kerr & Jermier (1978) の「リーダーシップの代替物」の考え方を借り、部下の能力や経験、規則の形式化など、リーダーシップの効果を小さくする個人や組織の特徴が、日本ではアメリカより働きにくいとみた(課業の特徴には差がないとした)。実験からは、不安の強い部下にはM型が、質より速さが求められる臨時の集団や達成動機の低いメンバーにはP型が向く場面もあると示唆されている。

Smith et al. (1989) は、英国、米国、日本、香港の電子機器組立工場の1,177人の回答を分析した。一般的なPとMの質問項目の因子構造は4か国で似ていたが、PやMと結びつく具体的な行動は国によって大きく異なった。たとえば英国では、課題について話すことが配慮の表れになりうる。日本の工場で高Mの上司にもっとも特徴的な行動の一つは、部下の個人的な悩みを、本人と向き合ってではなく、本人のいないところでほかの人と話すことだった。著者らは、リーダーのスタイルには文化を超えた次元がある一方、それを効果的に実行する技能は文化によって異なると結論づけた。ただし標本は電子機器の工場に限られる。

Smith et al. (1992) によれば、Misumi の研究でもっともよく使われた結果の指標は部下が答える態度で、西洋の研究者は、スタイルの評定も同じ部下から得る以上、両者は独立していないと疑ってきた。そこで彼らは、4か国5工場の84人の監督者にチームの業績を評定させた。作業の質については、Mと計画(Pの一部)の効果と、PとMの交互作用が見られ、理論は条件つきで支持された。しかし生産性とグループの協力では支持されなかった。圧力と協力との関係は国で逆になり、英米では圧力の低い上司のもとで協力が高く、日本では逆の傾向だった。ただし、監督者とチームの対応づけに疑いのあった香港のデータを除くと、協力にもMと計画の効果が現れ、支持は強まった。著者らは、文化を超えた理論にするには、PM尺度より文化に左右されにくい測定が必要だとしている。

研究上の位置づけ

原典Misumi, J. (1984)
The behavioral science of leadership (2nd ed.)
分類Theory
分析単位二者関係 · チーム
理論系譜心理学 · 行動論
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。