理論・視点

フォルトラインDemographic Faultlines

一言で言うと

集団の多様性の影響は、属性ごとのばらつきの大きさだけでは決まらない。複数の属性(年齢、性別、職種など)の違いが同じ境目でそろうと、集団を下位集団に分ける仮想的な分割線(フォルトライン)が生まれ、それが集団内の対立や分裂を生みやすくする、とする理論。

説明したい問い同じ程度に多様な集団でも、あるものはまとまり、あるものは内部で二つに割れてしまうのはなぜか。

この理論で考えられる身近な疑問

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中核的な問い

多様性の研究は長く、年齢のばらつき、性別のばらつき、というように属性を一つずつ取り上げて、その影響を調べてきた。しかし、四人のチームで「若い女性二人と年配の男性二人」の場合と、「若い男性と年配の女性、若い女性と年配の男性」の場合とでは、属性ごとのばらつきは同じでも、チームの雰囲気は大きく違いそうである。違いを生むのは何なのか。

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主張とメカニズム

「フォルトラインとは、一つまたは複数の属性にもとづいて、集団を下位集団に分けうる仮想的な分割線である」。Lau & Murnighan (1998) は、地殻の断層になぞらえてこう定義した。断層がふだんは動かなくても力が加わると地震を起こすように、フォルトラインも常に集団を割るわけではなく、条件がそろうと集団を分裂させる。

原典の中心的な考えは、多様性の効果を属性ごとに見るのではなく、属性の組み合わせ、つまり集団の構成全体で見るべきだというものである。複数の属性の違いが同じ境目でそろう(整列する)ほど、また、分かれた下位集団の内部がよく似ているほど、フォルトラインは強くなる。先の例でいえば、「若い女性二人と年配の男性二人」は、年齢と性別の境目がそろっているので強いフォルトラインをもつ。反対に、属性が入り組んでいる集団では、はっきりした分割線は生まれにくい。このため、一つひとつの属性の多様性が中程度の集団で、かえって強いフォルトラインが生じうると論じられた。

フォルトラインは、ふだんは表に出ない潜在的なものである。原典は、取り組む課題やそのときの状況が、分割線にかかわる属性を意識させると、フォルトラインが活性化して下位集団が形成され、集団内の対立が起こりやすくなると論じた。また、集団が発達していく段階によって、フォルトラインの影響の現れ方が変わりうることも示した。

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身近な例

たとえば、ある新規事業のチームが、本社から来た年配の営業担当者三人と、買収した会社から来た若い技術者三人でつくられたとしよう。出身企業、年齢、職種の三つが同じ境目でそろっているので、強いフォルトラインがある。ふだんは仲良く仕事をしていても、予算の配分を決める会議で営業と開発のどちらを優先するかが議題になると、分割線が一気に表に出て、「本社組」と「買収組」に分かれて対立するかもしれない。

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主要概念

フォルトライン(faultline)
一つまたは複数の属性にもとづいて、集団を下位集団に分けうる仮想的な分割線。
フォルトラインの強さ(faultline strength)
複数の属性の違いがどれだけ同じ境目にそろい、その結果できる下位集団の内部がどれだけ似ているかの程度。
下位集団(subgroup)
集団の内部で、共通の属性によってまとまった一部のメンバー。
活性化(activation)
潜在的なフォルトラインが、課題や状況をきっかけに意識され、実際に集団を分ける働きをもつようになること。
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代表的な展開研究

  • Lau, D. C., & Murnighan, J. K. (2005). Interactions within groups and subgroups: The effects of demographic faultlines. Academy of Management Journal. DOI ↗原典の著者自身が、学生の集団を用いて、フォルトラインの強さが下位集団の内外のやりとりや、集団の対立、満足などにどう影響するかを実証的に検討した。
  • Thatcher, S. M. B., & Patel, P. C. (2011). Demographic faultlines: A meta-analysis of the literature. Journal of Applied Psychology. DOI ↗フォルトラインに関する多数の実証研究をメタ分析で統合し、チームの過程や成果との関係、および関係を左右する条件を検討した。
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批判と境界条件

原典は理論的な論文で、示された命題は実証的に検証されたものではない。原典自身が強調するように、フォルトラインは潜在的なものであり、強いフォルトラインがあっても集団が分裂するとは限らない。Jehn & Bezrukova (2010) は、この点を受けて、構成から計算される潜在的なフォルトラインと、メンバーが実際に分裂を意識している活性化したフォルトラインとを区別し、後者が下位集団の連合や対立に結びつくことを示した。構成だけから集団の分裂を予測することには限界がある。

研究上の位置づけ

原典Lau, D. C., & Murnighan, J. K. (1998)
Demographic diversity and faultlines: The compositional dynamics of organizational groups
分類Theory
分析単位チーム
理論系譜心理学 · 社会学
REFERENCES

出典

本ページは学習用の要約です。正確な引用や議論には原典を確認してください。